GDP成長率:知っておくべき、投資に役立つ重要キーワード17選【米国株編】⑯
GDPは、一国の経済規模や経済活動の総量を示す重要な指標。さらに成長率はその国の現状や大きな経済の流れをつかむ、ヒントを提供してくれます。世界最大の経済規模を持つ、米国を例に詳しく見ていきましょう!
GDPの定義
GDPは"Gross Domestic Product"の略で、日本語では「国内総生産」と訳されます。これは、一定期間(通常1年間)に国内で生産されたすべての商品やサービスの付加価値の合計を表します。
GDPにおける「付加価値の合計」は、以下のように理解できます:
付加価値とは
付加価値とは、生産過程で新たに加えられた価値のことです。具体的には、販売価格から原材料費などの中間投入を差し引いた金額を指します。
付加価値の計算例
例えば、パンの生産過程を考えてみましょう:
農家が小麦を100円で生産し、製粉会社に200円で販売
農家の付加価値: 200円 - 100円 = 100円
製粉会社が小麦粉を作り、パン屋に300円で販売
製粉会社の付加価値: 300円 - 200円 = 100円
パン屋がパンを作り、消費者に400円で販売
パン屋の付加価値: 400円 - 300円 = 100円
この場合、パン1個の生産による付加価値の合計は:
100円 + 100円 + 100円 = 300円となります。
GDPにおける付加価値の合計
GDPは、国内で生産されたすべての商品やサービスについて、上記のような付加価値を合計したものです。これには以下のような項目が含まれます:
企業の利益
従業員の給与
設備投資や減価償却費
税金など
この合計により、国内の経済活動の規模を把握することができます。
三面等価の原則
GDPは「生産」「分配」「支出」の3つの側面から計算でき、理論上はどの方法で計算しても同じ値になります。これを「三面等価の原則」と呼びます。
GDPにおける「付加価値の合計」は、国内のすべての経済活動で生み出された新たな価値を総合的に表す指標となっています。
米国のGDPの規模
2023年の米国の名目GDPは約27.4兆ドル(約3,933兆円)これは世界最大の経済規模で、日本の約6.5倍。*米国経済の巨大さを表しています。
*2位中国 17.7兆ドル/3位 ドイツ4.5兆ドル/4位 日本4.2兆ドル(IMF<国際通貨基金>世界経済見通し2024年4月を参考)
GDPの計算方法
米国のGDPは以下のような要素から構成されています:
個人消費支出(例:アメリカ人が購入する食品、衣服、自動車など)
民間設備投資(例:企業が購入する機械設備や建設する工場など)
政府支出(例:軍事費、公共事業費など)
純輸出(輸出額から輸入額を引いたもの)
これらの要素を合計することで、米国GDPが算出されます。
名目GDPと実質GDP
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があります:
名目GDP: 現在の市場価格で計算されたGDP
実質GDP: 物価変動の影響を除外して計算されたGDP
例えば、ある年に100ドルのリンゴが100個売れ、翌年に150ドルのリンゴが120個売れたとします。名目GDPでは単純に金額を比較するため、1万ドルから1万8000ドルに増加したように見えます。しかし、実質GDPでは物価上昇分を除外するため、実際の生産量の増加(100個から120個)のみを反映します。
GDPの意義と限界
GDPは経済活動の規模を測る重要な指標ですが、必ずしも国民の生活の質や幸福度を直接反映するものではありません。例えば、環境破壊や労働時間の増加によってGDPが上昇しても、それが必ずしも国民の幸福につながるとは限りません。
したがって、GDPは経済活動の全体像を把握するための有用な指標ですが、それだけでなく他の指標も併せて考慮することが、国の真の豊かさを理解する上では必要です。
米国の四半期ごとのGDP成長率
概要
米国では、四半期ごとに実質GDP成長率が発表され、その四半期の経済成長を示す重要な指標となっています。**米国のGDP成長率は、主に米国商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis、BEA)による統計です。米国のGDPに関しては、BEAの発表が公式の統計であり、より詳細で頻繁に更新される一次データとなります。IMFの統計は各国の公式統計を基に作成された二次的なデータと言えます。
発表の流れ
速報値: 四半期終了後約1ヶ月で発表
改定値: 速報値の約1ヶ月後に発表
確定値: 改定値の約1ヶ月後に発表
計算方法
前期比年率で表されます
計算式: (今期のGDP / 前期のGDP)^4 - 1
その四半期の成長率が1年間続いた場合の年間成長率を示します。
主な構成要素
GDP成長率は以下の要素から構成されています:
個人消費
設備投資
住宅投資
在庫投資
政府支出
純輸出(輸出 - 輸入)
最近の動向
4-6月は以下のような内容でした。(マーケット情報サイトより)
-7月25日に発表された米国の4~6月期実質GDP成長率は、*前期比年率で+2.8%となり、8四半期連続でのプラス成長を記録。前期の+1.4%から加速し、市場予想の+2.0%も上回る結果となりました。項目別に見ると、GDPの約7割を占める個人消費が+2.3%と前期の+1.5%から加速し、特に耐久消費財の消費が+4.7%と堅調に推移しました。企業の設備投資も+5.2%と前期の+4.4%を上回りましたが、住宅投資は高金利や価格高騰の影響で-41.4%と大幅な減少を記録。また、純輸出はマイナス幅が拡大し、GDPを0.72ポイント押し下げました。-
注目ポイント
個人消費の動向: 米国経済の主要な牽引力
金利政策の影響: 住宅投資や設備投資への影響
インフレ率との関係: 高インフレが続く中での実質成長率の推移
GDP成長率は、米国経済の健全性を示す重要な指標で、金融市場や政策決定に大きな影響を与えます。ただし、一つの指標だけでなく、雇用統計やインフレ率など他の経済指標と合わせて総合的に経済状況を判断することが重要です。
米国のGDP成長率には、主に以下のような基準や種類があります。
四半期ごとの成長率:
前期比成長率: 直前の四半期と比較した成長率
前期比年率: 四半期の成長率を年率換算したもの
年間成長率:
前年比成長率: 前年同期と比較した成長率
名目GDP成長率と実質GDP成長率:
名目GDP成長率: 物価変動を含んだ成長率
実質GDP成長率: 物価変動の影響を除いた成長率
寄与度別の成長率:
個人消費、設備投資、住宅投資、政府支出、純輸出などの項目ごとの寄与度
速報値と確定値:
速報値: 四半期終了後約1ヶ月で発表される暫定的な数値
確定値: その後の修正を経て確定した数値
米国では、四半期ごとのGDP成長率が重視され、経済政策の効果を測る重要な指標となるため、政策立案者や投資家に注目されています。ただし、GDPには生活の質や環境への影響などが反映されないという限界もあるため、他の指標と併せて総合的に経済状況を判断することが重要とされています。
まとめ
四半期ごとのGDP成長率は、実際の景気循環が通常4~5年のサイクルであるにもかかわらず、激しく変動することがあります。これは統計上の限界であり、実際の経済状況がそれほど変動していなくても、統計上は大きな変動が見られることがあります。ですから、統計を基に経済の「トレンドとしての変化」を読み取り、単なる数値の変動に惑わされないようにすることも大切です。