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マクロ経済と株式市場①ケインズの美人投票

マクロ経済と株式市場は切り離せない関係にあります。GDPやインフレ率、金融政策といった指標は、企業業績や株価に直接影響を及ぼします。経済成長は株価上昇を後押しする一方、景気後退や利上げは下落要因となります。投資家にとって、マクロ経済の動向を理解することは、適切な投資判断を行うための重要な鍵となりますが、このnoteでも少しずつマクロ経済について学んでいきましょう。

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そもそも「マクロ」って

マクロの語源

macro「マクロ」は、ギリシャ語の「makros(μακρός)」に由来し、「大きな」「長い」という意味を持っています。

マクロ経済(Macroeconomics)における意味

マクロ経済では、この「大きな」という意味が、経済全体を俯瞰する視点として使われています。具体的には、

  1. 全体を見る視点

    • 個別の企業や家計ではなく、国全体の経済を見ること

    • 空から森全体を見るようなイメージ

  2. 広い範囲の経済指標

    • GDP

    • インフレ率

    • 失業率

    • 経済成長率

なぜ「マクロ」が重要か

  • 国全体の経済動向を理解できる

  • 政策立案に役立つ

  • 経済の大きな流れを把握できる

つまり、「マクロ」は経済を大きな視点から捉える際に使われる言葉なのです。

マクロ経済学の基礎を築いたケインズ

まずは、ケインズの経歴を簡単に振り返ります。
イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズ(1883〜1946年)はイートン校で優秀な教育を受けた後、ケンブリッジ大学を卒業し、英国財務省のインド局に入省します。その後

  1. 1915年-1919年: 第一次世界大戦中、英国財務省に勤務

  2. 1919年: パリ講和会議に英国財務省代表として参加するも、ドイツへの過酷な賠償に反対して辞職

  3. 1920年代-1930年代: ケンブリッジ大学で教鞭を執りながら、経済学者・著述家として活動

  4. 1936年: *『一般理論』を発表

  5. 第二次世界大戦中: 再び財務省のアドバイザーとして勤務

ケインズの着眼点

1936年、ケインズは画期的な著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』(通称『一般理論』)を発表。この「一般理論」という言葉は、国民経済の研究において、国民所得や貨幣市場、労働市場などを個別に分析するだけでは不十分で、それらを総合的に分析する必要がある、という意味を持っています。

ケインズは両大戦間の経済危機を目の当たりにし、金本位制の問題点や、失業や景気停滞といったマクロ経済の課題に注目しました。彼は、需要と供給が自然に調整されるアダム・スミスを祖とする新古典派の考え、「見えざる手」<市場の自動調整機能>に頼るだけでは十分ではないと主張し、景気を回復軌道(潜在成長力)へ戻すために金融政策や財政政策を積極的に活用すべきだと考えました。

こうしてケインズはそれまでの新古典派経済学に変革をもたらし、「ケインズ革命」と呼ばれる経済学の大転換を起こしました。また、個別市場を分析するミクロ経済学ではなく、国民経済全体を研究対象とする「マクロ経済学」の礎を築きました。

マクロ(macro)とミクロ(micro)

マクロ経済学は経済全体を俯瞰し、GDP、インフレ率、失業率などの総合的指標を扱います。一方、ミクロ経済学は個別の経済主体(企業や家計)の行動を分析し、需要と供給、価格決定メカニズムなどを研究します。マクロ経済学が「森」を見るなら、ミクロ経済学は「木」に注目するといえます。両者は補完的で、経済現象の総合的理解に貢献します。

美人投票ってどんなこと?

美人投票は、金融市場、特に株式市場における投資家の行動を説明するための比喩として、「一般理論」の中でケインズが提唱した考え方です。

仕組み

  1. 100枚の写真の中から最も美しい人を選ぶコンテスト

  2. 投票者は自分が最も美しいと思う人ではなく、他の人々が美しいと思うであろう人に投票する

  3. 最も多くの票を集めた人に投票した人々に賞品が与えられる

金融市場への応用

ケインズは、この美人投票の概念を金融市場、特に株式市場に適用しました。

  • 投資家は、自分が最も価値があると思う企業の株を買うのではなく、他の投資家が価値があると判断するであろう株を買おうとする

  • 株価は企業の実際の価値(ファンダメンタルズ)よりも、市場参加者の集団的な期待や認識によって決まる

重要な洞察

この比喩から得られる重要な洞察は以下の通りになります。

  1. 集団心理の重要性: 市場での成功は他の参加者の行動を予測する能力に依存する

  2. 短期的な変動: 株価は短期的には投資家の思惑や噂に左右されやすい

  3. 実態と乖離: 株価が必ずしも企業の実際の価値を反映しているとは限らない

批判と限界

ケインズの美人投票理論には批判もあります。

  • 長期的には企業の実力が株価に反映されるという反論

  • 「バリュー投資」のような、企業の本質的価値に基づく投資戦略の有効性

まとめ

「美人投票」の概念は株式市場の短期的な動きや投資家心理を理解する上で有用ですが、市場の全ての側面を説明するものではありません。実際の投資では、やはりその企業が本質的な価値を持ち、長期的に業績が成長をしていくかを実感させてくれるかどうかが重要であり、またそれが株式投資の醍醐味であると思います。

経済の流れをマクロな観点で、大きく俯瞰し、その中でお気に入りの企業が発展できる機会を捉えることを想像できる投資家になれれば良いですね。集団心理を考えてしまったり、市場の思惑や噂に流され、実態とはかけ離れた株価にある企業に心が動かされそうになった時の戒めとして、「ケインズの美人投票」を記憶に留めておくように私はしています。😅

*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。



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