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ニューモント(NEM)最新決算:世界最大級の金鉱業会社が示す新たな挑戦!【7-9月/Q3,2024】


ニューモント・コーポレーション(NEM)は、主に米国、オーストラリア、ペルーなどで、鉱山の買収、探査、開発を含む鉱山事業を展開するとともに、金や銅の生産および販売を手掛ける、世界トップクラスの金鉱会社です。10月23日に発表された7-9月期(第3四半期)決算は、1株利益、売上高、EBITDAなど予想を下回る結果となってしまいました。このnoteでは最新決算をもとに、同社の最新動向と成長戦略を掘り下げ、金鉱会社の秘密に迫って見ようと思います。


金鉱会社を見る上でのポイント

あまり馴染みのない業種と感じる方もいると思われます。金という限りのある資源を開発する金鉱会社の特色を抑える上でのポイントは・・

財務指標
売上高: 金価格の変動と生産量の増減が反映
フリーキャッシュフロー: 事業の収益性と資金創出力を示す。
純利益と1株当たり利益 (EPS): 収益性の指標として重要。

埋蔵量と生産見通し
推定埋蔵量: 将来の生産能力を示す指標。
今後の生産見通し: 経営陣の予測を確認

戦略的施策
非中核資産の売却計画: 資金調達や事業再編の動きを把握。
設備投資計画: 将来の生産能力拡大につながる投資を確認。

株主還元
配当政策: 配当金の推移や自社株買いの計画を確認する。

外部環境の影響
金価格の動向: 世界経済や地政学的リスクが与える影響を考慮する。
為替変動: 海外で事業を展開する場合、為替の影響を確認する。

これらを知ることで、金鉱会社のイメージがさらに深まると思います。

7-9月(第3四半期)業績は?

概要

  • 売上高:46億500万ドル(予想47億ドル)

  • EBITDA【Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization)=利払前・税引前・減価償却前利益】(調整後):
    19億6,700万ドル(予想23億ドル)
    ニューモントのような鉱山会社では、EBITDAは特に重要な指標として扱われます。これは、鉱山業が多額の初期投資と継続的な設備投資を必要とする産業で減価償却費を除外したEBITDAが事業の実質的な収益力をより適切に反映すると考えられているためです。

  • EPS-1株利益(調整後):0.81ドル(予想0.85ドル)

  • フリーキャッシュフロー: 7億6,000万ドル(予想8億3,000万ドル)

    <金鉱業界で広く使われる指標等>

  • 金生産量: 210万オンス(金地金換算)
    帰属金生産量:167万オンス
    金生産(総金相当)量が全体的な生産規模を示し、帰属金生産量はニューモントの実質的な生産能力と経済的利益をより正確に反映する指標です。

  • 1オンスあたり金維持コスト<AISC=All-In Sustaining Cost>:
    1,611ドル
    AISCは、金鉱会社が金1オンスを生産・維持するために必要な総コストを示す指標。金鉱業界で広く使用されており、企業の収益性と効率性を評価する上で重要な役割を果たしています。同社は2024年第4四半期において、AISCを1オンスあたり1,475ドルに低下させることを目標としています。

ニューモントは、主要鉱山を中心としたポートフォリオから安定した収益を生み出しつつ、非中核資産の売却による現金化を進め、2024年の年初来で5億2,700万ドルの現金を確保することに成功しています。

非中核事業戦略

資産売却

ニューモントは、第3四半期に2件の大型資産売却契約を発表。

  1. ガーナのアキーム鉱山: 最大10億ドルで売却

  2. テルファー鉱山とヘイビロン・プロジェクト(西オーストラリア): 70%の権益を最大4億7500万ドルで売却

これらの取引は、ニューモントの非中核事業の整理を加速し、総額20億ドル以上の売却益を見込んでいます。これにより得られた資金は、負債削減や自社株買い戻し、株主還元に充てられます。

買収

ニューモントは、2024年にNewcrest Miningの買収を完了し、年間5億ドルのシナジー効果を実現すると予測。この買収により、同社の*Tier 1鉱山ポートフォリオがさらに強化され、長期的な成長の基盤が整いました。

*Tier 1鉱山ポートフォリオとは、鉱山業界で最高品質かつ最も収益性の高い鉱山資産のグループのこと。

また、ガーナやオーストラリアでの資産売却により、収益構造の改善が進む一方、負債の削減と持続可能な株主還元プログラムが強化されています。

株主還元

ニューモントは、株主還元を最優先事項と位置付けています。第3四半期には次の施策を実施しました。

  • 自社株買い戻し: 平均価格53.16ドルで940万株、総額5億ドル分を買い戻し。2024年年初来では、合計7億5000万ドル分を買い戻しました。

  • 配当金: 第3四半期は1株当たり0.25ドルの配当金を宣言。

  • 追加自社株買い戻しプログラム: 取締役会は、20億ドルの追加買い戻しを承認

株主への総還元額は7億8600万ドルに達しており、ニューモントの財務の安定性と収益性が株主に大きな利益をもたらしていることが分かります。

生産とコスト管理

ニューモントは2024年の生産目標(約700万オンス前後)を達成するため、次のような取り組みを行っています。

  • 第4四半期の金生産目標: 180万オンス

  • All-In Sustaining Cost(AISC上記に解説): 1オンスあたり1,475ドル

また、新たな金地金製品の展開を進め、透明性の高い供給体制を築いています。米国最大の卸売業者との提携を通じ、消費者にニューモントの金地金への直接アクセスを提供しています。

About ニューモント

  • 設立:1921年

  • 上場:1925年

  • ティッカー・シンボル:NEM

  • セクター:素材(Materials)

  • 株式時価総額:325億ドル(約5兆円,11/15時点)

  • 年間売上高:118億ドル(約1.7兆円,2023年)

  • ライバル企業:バリック・ゴールド(GOLD) 

  • 日本での同業種:住友金属鉱山(5713)

  • 従業員数:14,600人

投資金額目安:

40.93ドル(11/15終値)×154円×1株=〜
*手数料は入れていません。為替(ドル・円)、株価は変化します。

まとめ

ニューモントは、世界トップクラスの金鉱業会社としての地位をさらに強固なものにしようとしています。今四半期の業績は、強固なポートフォリオ、効率的な資産運営、積極的な株主還元の姿勢を示すものでしたが、今後も非中核資産の売却や新しい金地金製品の展開を通じて、投資家にとって魅力的な企業であり続けることが期待されています。


よくある質問 Q&A

Q1: ニューモントの株主還元政策はどう評価されていますか?
ニューモントは自社株買い戻しと安定した配当金を通じ、株主への還元を重視しています。特に2024年第3四半期には、7億8,600万ドルの総還元額を実現しており、株主から高い評価を受けています。

Q2: ニューモントは他の鉱業会社と比べて何が優れていますか?
ニューモントは世界最大規模の金生産企業であり、*Tier 1鉱山を中心とした高品質な資産ポートフォリオを持っています。また、持続可能な開発と透明性に注力している点も競争優位性といえます。

Q3: 非中核資産の売却は会社の利益にどのように寄与しますか?
非中核資産の売却により、ニューモントは現金収入を増加させ、負債削減や株主還元プログラムの資金源としています。この戦略は、収益性の向上と長期的な安定に寄与します。

4-6月期の決算はこちら

*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。


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