アッヴィ(ABBV)の最新決算。主要の免疫領域やニューロサイエンス分野で好調を維持!【4-6月/Q2,2024】
7月25日、アッヴィ(AbbVie Inc. ABBV)は2024年4-6月,第2四半期決算を発表。今四半期の業績は予想を上回り、特に免疫学、オンコロジー、ニューロサイエンス分野での成長が顕著でした。このnoteでは最新の決算データとアッヴィの戦略について詳しく解説します。
アボットから分社
アッヴィが分社化される前のアボット・ラボラトリーズ(ABT)は、長い歴史を持つ著名な医薬品企業。2011年10月に、アボット・ラボラトリーズは、会社を2つに分割する計画を発表。エスタブリッシュ医薬品事業はアボット・ラボラトリーズに残し、研究開発型医薬品事業(新薬事業)部門を新会社として分離、誕生したのが
アッヴィです。
52年連続増配
アッヴィは、アボット・ラボラトリーズと同様に『52年連続増配』としています。
直近配当実績:1.55ドル(6月)
年間配当金:1.55×4=6.2ドル
株価:185.16ドル(7/26終値)
配当利回り目安:6.2÷185.16×100=3.35%
*手数料、税金等は考慮に入れていません。配当利回りは購入時の株価によって変わります。
第2四半期の主な業績は?
売上高:144億6,200万ドル(前年同期比+4.3%増)
営業利益:39億9800万ドル(同▼11.4%)
営業利益率:27.6%(前年同期32.5%)
*GAAP基準の希薄化後EPS:0.77ドル(前年同期1.14ドル)
**調整後の希薄化後EPS:2.65ドル(買収したIPR&Dおよびマイルストーン費用による1株当たり0.52ドルの不利な影響を含む,前年同期2.91ドル)
*GAAP-一般に認められた会計原則に基づく財務報告。
**希薄化EPSは全ての潜在株式(転換社債やストックオプションなど)を考慮に入れた1株当たり利益を表しますが、調整後の希薄化後EPSはさらに特定の一時的な要因や非経常的な項目を除外して計算されます。
アッヴィ(AbbVie Inc.)は、グローバルなバイオ医薬品企業。特に免疫学、腫瘍学、美容学、神経科学、眼科医療などの領域において優れた製品を提供しています。以下は、各分野の今四半期売上高と主要製品です。
免疫学 (Immunology)分野-69.7億ドル
アッヴィの免疫学領域は、同社の売上の大部分を占める重要な分野です。
ヒュミラ (Humira): 関節リウマチ、クローン病、乾癬などの治療に使用される抗TNFα抗体薬です。2023年初頭に特許が切れたため、売上に影響が出ていますが、依然として重要な製品です。
スキリージ (Skyrizi): 中等症から重症の乾癬および潰瘍性大腸炎の治療に使用されるIL-23阻害薬です。特許切れの影響を受けたヒュミラの売上減少を補う役割を果たしています。
リンヴォック (Rinvoq): 関節リウマチやアトピー性皮膚炎の治療に使用されるJAK阻害薬です。2024年に特許が切れる予定ですが、現在も重要な収益源です。
腫瘍学 (しゅようがく,Oncology)分野-16.3億ドル
アッヴィの腫瘍学領域では、以下の製品が注目されています:
イムブルビカ (Imbruvica): 慢性リンパ性白血病やマントル細胞リンパ腫の治療に使用されるBTK阻害薬です。薬価交渉制度の影響で今後の売上に不安があるものの、依然として重要な製品です。
ベネクレクスタ (Venclexta/Venclyxto): 慢性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病の治療に使用されるBCL-2阻害薬です。
エラヘア (Elahere): 卵巣がんの治療に使用される抗体薬物複合体(ADC)です。イミュノジェンの買収により取得されました。
美容学 (Aesthetics)分野-13.9億ドル
美容医療分野でも強力な製品ラインを持っています。
ボトックス (Botox): しわの治療や美容目的で広く使用されるボツリヌス毒素製剤です。
ジュビダーム (Juvederm): 皮膚のフィラーとして使用されるヒアルロン酸製剤です。
神経科学 (Neuroscience)分野-21.6億ドル
神経科学領域では、以下の製品がメインです。
ブレイラール (Vraylar): 双極性障害や統合失調症の治療に使用される抗精神病薬です。
ウブレルビ (Ubrelvy): 片頭痛の急性治療に使用されるCGRP受容体拮抗薬です。
クルプタ (Qulipta): 片頭痛の予防に使用されるCGRP受容体拮抗薬です[2]。
眼科医療 (Eye Care)-5.3億ドル
眼科医療分野では、以下の製品が提供されています。
レストアシス (Restasis): ドライアイの治療に使用される免疫抑制剤です[2]。
ルクスターナ (Luxturna): 遺伝性網膜疾患の治療に使用される遺伝子治療薬です。
その他の主要製品-9.6億ドル
アッヴィは他にも多くの重要な製品を提供しています:
マヴィレット (Mavyret): C型肝炎の治療に使用される抗ウイルス薬です[3]。
デュオドーパ (Duodopa): パーキンソン病の治療に使用される薬剤です[3]。
アッヴィはこれらの製品を通じて、さまざまな疾患領域で患者の生活の質を向上させることを目指しています。
2024年の見通しは?
アッヴィは、2024年通期の調整後希薄化後EPSガイダンスを10.61~10.81ドルから10.71~10.91ドルに引き上げました。これには、今四半期までに発生した買収IPR&D(=In-Process Research and Development。企業が他社から取得した、まだ開発中の研究開発プロジェクトに関連する費用)およびマイルストーン費用(特定の開発段階や成果に達した際に支払われる)に関連する1株当たり0.60ドルの不利な影響が含まれます。
CEOの交代
アッヴィは、7月1日付でロバート・A・マイケル氏が最高経営責任者(CEO)に就任し、リチャード・A・ゴンザレス氏は取締役会執行会長に就任。
パイプラインとは、研究開発段階にある医薬品や再生医療等製品の候補品のことを指します。基礎研究、非臨床試験、臨床試験、承認申請など、様々な開発段階にある新薬候補が含まれます。アッヴィは自社以外にも、他社との契約や買収を通じて、多くのパイプラインを持っています。
アッヴィの現在のパイプライン
Skyrizi(リサンキズマブ)の承認
FDAがSkyriziを中等症から重症の潰瘍性大腸炎の成人患者に承認。
欧州医薬品庁(EMA)のCHMPも承認を推奨。
これらの承認は、INSPIRE試験とCOMMAND試験の結果に基づく。
リンボックの承認申請
アッヴィは巨細胞性動脈炎(GCA)患者向けにリンボックのFDAおよびEMAへの承認申請を行った。
承認申請はSELECT-GCA試験の結果に基づく。
Digestive Disease Weekでの発表
(Digestive Disease Week® "DDW"は、消化器病学、肝臓学、内視鏡学、消化器外科学の分野における世界最大規模の学会)アッヴィは2024年のDigestive Disease Weekで15件の演題を発表。
Skyriziとステラーラの比較試験やSkyriziの有効性・安全性に関するデータを発表。
ランドス・バイオファーマ社の買収
アッヴィはランドス・バイオファーマ社の買収を完了。
ABBV-113(NX-13)がアッヴィのパイプラインに加わり、新たな治療アプローチを提供。
FutureGen Biopharmaceutical社との契約
アッヴィとFutureGen Biopharmaceutical社は次世代抗TL1A抗体FG-M701の開発に関する契約を締結。
FG-M701はIBD治療薬としてより高い有効性を目指す。
セルシウス・セラピューティクス社の買収
アッヴィはセルシウス・セラピューティクス社を買収。
主要開発品CEL383は抗TREM1抗体で、IBD治療薬として臨床第1相試験を完了。
エプキンリーの承認
エプキンリーが再発性・難治性濾胞性リンパ腫の治療薬としてFDAに承認。
EMAのCHMPも肯定的見解を採択。
Elahereの試験結果
Elahereが卵巣がん患者を対象にした第2相試験で良好な結果を発表。
客観的奏効率は51.9%、奏効期間は中央値8.25カ月。
ABBV-383のCERVINO試験開始
アッヴィは多発性骨髄腫患者を対象にABBV-383の第3相CERVINO試験を開始。
試験は有効性、安全性、忍容性を評価する。
パイプラインは新薬開発への取り組みを包括的に表す概念であり、製薬企業の研究開発活動の中核を成しています。
About アッヴィ
設立:2012年
上場:2013年
セクター:ヘルスケア(Health Care)
ティッカー・シンボル:ABBV
業務内容: バイオ製薬大手、医薬品の創薬、開発、製造、販売
年間売上高:543億ドル(約8.1兆円/2023年12月通期)
株式時価総額:3,270億ドル(約50.7兆円,7/26)
ライバル企業:アムジェン(AMGN),イーライ・リリー(LLY)
日本での同業種:アステラ製薬(4503),第一三共(4568)
まとめ
アッヴィは豊富なパイプラインと強力な研究開発力を背景に、今後も成長が期待される製薬企業と言えるのではないでしょうか。特にがん治療薬の開発に注力しており、この分野での breakthrough(画期的な進展)が会社の将来を大きく左右する可能性があります。
日本市場での展開強化や主力製品の特許切れへの対応など、課題への取り組みも指摘されていますが、新しいCEOのリーダーシップの下、引き続き、世界的なバイオ医薬品企業としての存在を高めていくものと思われます。
今回の決算をQ&Aでおさらい・・
よくある質問(Q&A)
Q: アッヴィの第2四半期決算の主な成果は何ですか?
A: 純収入は144億6,200万ドルで4.3%増加し、調整後の希薄化後EPSは2.65ドルでした。免疫学、オンコロジー、ニューロサイエンス分野での成長が顕著です。
Q: アッヴィの免疫学ポートフォリオの収益はどうですか?
A: ヒュミラの収益は28億1,400万ドル、Skyriziは27億2,700万ドル、Rinvoqは14億3,000万ドルとなりました。
Q: アッヴィのオンコロジー領域の成長はどのように進んでいますか?
A: グローバル売上高は16億3,400万ドルで、報告ベースで10.5%増、営業ベースで12.2%増加しました。
Q: アッヴィのニューロサイエンス事業の動向について教えてください。
A: ニューロサイエンス事業の売上高は21億6,200万ドルで、報告ベースで14.7%増、営業ベースで15.2%増加しました。
Q: アッヴィのエステティック事業の成果はどうですか?
A: グローバル売上高は13億9,000万ドルで、報告ベースで0.5%増、営業ベースで2.8%増加しました。
アッヴィの1-3月決算と創業の歴史など詳細はこちら↓
*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが、当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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