【架空文通】富田さんのお手紙に対する返事(あだち充のタッチの南ちゃん、転校、好きだった人)
富田さんへ
疫病蔓延で外出ができず、梅雨で日光に当たれず、うつまっしぐらです。遠出したくても、東京もんは来るな、という風潮ですから、映画「ワールドウォーZ」かここは、と思ったりしています。
八月のお盆休みには、お店も休むことにしたので、近場の鎌倉にでも行こうかと思っています。海辺とかを散歩して、リフレッシュしたいです。
あだち充の漫画『タッチ』のヒロイン南ちゃんのレタセ、ありがとうございます。私が中学三年生の時、大人気の漫画でした。実は、南ちゃんに特別な思い出があるのです。
中三の二学期から転校したのですが、そこのクラスで南ちゃんに性格も外見も似ている女の子がいたのです。初めの一か月は学校に慣れるのが忙しくて、彼女の存在に気が付かなかったのですが、ある日、掃除の時間に私が掃いていた時、ふと、目を上げると、離れたところにいた彼女と目が合ったのです。その時、この人、転校当初から私を観察していた、と直感したのです。
以来、お互い気にするようになり、高校受験で忙しい事を理由に告白する事は無かったのですが、いつも近くにいるようにしていました。顔は可愛いというより、知性を感じさせるものでした。大人になるにつれ、人は顔、体、金、職業、年齢とかで恋愛対象を選びがちになりますが、私に関していえば、あの人が知性で好きになったラストパーソンです。
でも、彼女は亡くなったようです。と言いますのも、大学に入ってから一度再開しただけで、その後は連絡をすることもなく二十年くらい経ったある晩、突然、夢に出てきて、お別れの挨拶をしたからです。場面は、下校の帰り道、途中まで一緒に帰ってくれた彼女が、突然立ち止まって、何の脈絡もなく「ありがとう」って言って、それ以上は一緒に進もうとしなかったんですよね。そこで目が覚めて、思ったのです、「またね」ではなくて、「ありがとう」と言った意味は、死んだという事なんだな、と。
大阪に引っ越す、とのこと。
コロナが終わってから、私が大阪に食い倒れに行くときは、ご案内してくださいね。お手紙で「引っ越す」ではなくて、「旅立つ」って書かれていた点が引っ掛かっています。意味があるんですよね。
映画『ブライダル・ウォーズ』に出てくるアン・ハサウェイのダンスを観てみました。確かに、あれは好きです。ああいう、エネルギー爆発の雰囲気なのも好きな私です。
またね。