盗作

バッハの時代に音楽の創作文化は終焉を迎えた。
誰かがそう云ったらしい。

耳が痛いほど、商店街のスピーカーから繰り返し流される流行歌。
所謂名曲といわれる遺物をたった一曲輩出した過去に縋っている、狸面プロデューサーが雛壇で得意気に騙る邦楽。売り出し中で、乗りに乗っているらしい新人アーティストのデビューシングル。近所の子供が、しきりに口遊んでいる大ヒットアニメソング。
RemixがSNSで大ウケしたそうな往年の洋楽。リズム感だけを意識した、意味不明なリリックの羅列ソング。 

もう胃酸も出ないくらいに、メロディが吐き出されては腐って往く。
そもそも、使い古された耳心地のいいメロをそこそこの声質のヴォーカルを見つけて歌わせて、そこそこの資金力や広告力がある事務所からリリースしている時点である程度のヒットは確約されているようなものだ。
ここまで音楽のマンネリ化が進めば、数十年前であればアーティストの反乱が起こってニュージャンルの一つや二つくらい確立していそうなものだが、今ではそんな熱量も創造性も落ちぶれてしまっている。
なんとも嘆かわしい。  

とまあ偉そうなことを並べてはみたが、
かく言う私も、そんな商業音楽に汚染されたゾンビの一体である。

このようなことを言うと、やれエセ原理主義者だの斜に構えることを美徳とする只のイキリ野郎だのと散々集中砲火を受けるが、現実問題食いっぱぐれてしまうのがオチなのでしようがない。
オルタナ一本で飯を食えるのは極小数なの
だ。

"音楽のきっかけはなんですか?"

雑誌インタビューの度に、しつこいほど訊かれる言葉だ。

そんなもの、承認欲求に決まっているだろう。 
夢は誰だって創れて、幾らでも改造のしようがある。 
それでも"承認欲求"はどれだけ足掻いたとて満たされない。
すかしたバンドマンが「音楽わやっていた父からの影響で。」などと呪文のように唱えているが、あれは建前だ。例外なんてない。
人間としての本能だ。
悪いことでは無い。 

ただな、承認欲求が満たされてももう一つ味わえない快感がある。
なんだか分かるかい?

絶望だよ。

ヘロインに溺れても、どれだけ攻めたセックスをしても放出される快楽物質の量はたかが知れている。
死の一歩手前。
今にも奈落に堕ちる寸前で放埒したい。
そこからあの一番星を眺めながら、ブランデーを嗜むのも最高だ。
そのために、今日も俺は盗む。
人生が滅茶苦茶になろうと知ったこっちゃない。
罵倒されてもいい。

どうだい? 
読者に受けそうなくらいは、毒を吐いたつもりだが。
好きなだけ改竄していい。
それより、早く俺を突き落としてくれよ。
もうこのままじゃ生きていけないんだ。
満たされないんだ。



原案/n-buna 
著/雨霽る















 



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