ピンク・リバティ「煙を抱く」
四国の海、民宿、工場の風景が舞台の上にあった。
箱しかないのに、全部が見えた。
なんだか、恩田陸の「月の裏側」のような暗い空気感。
抜け殻になった人が新たに形成されるような。
その地域だけにしかない風習。
感情がいっぱいいっぱいになると、全部が抜けて新しい人に生まれ変わる感じ。
だから喧嘩をしていた奥さんからも、旦那さんの顔の記憶がそっくりそのまま消えてしまったのではないかと。
いらなくなった感情やメーターが振り切った感情は、ごみ処理場でごうごうと焼かれる。
そういう町なのだと思う。
その町の出身者は、いつかその時が来たら記憶をなくして戻ってくるのだろうな。
「いる?いらない?」と尋ねていたごみ処理場の女の子は少し不気味で、夏の幽霊のようだった。
耳の奥に残る波の音、目の裏側には夕暮れ時の工場。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?