一寸先は闇#8/26
あなたと夢想した旅先のうちいくつに本当に行くことができるのだろう
汗を拭きながら暑いね、暑いねと飽きるほど言って笑ったこの季節をあと何度迎えられるのだろう
いつかあなたが選んだこの香りを棚の奥にしまいこむ日が来るのだろう
いつかあなたが褒めたこのマニキュアを叩き割って泣く日が来るのだろう
いつかあなたと通ったあの道を
あなたと訪ねたあのお店を
あなたが言った言葉を
体温を 感触を
心を
すべてを無かったことにして
知らなかった自分に戻りたいと願う日が
いつかきっと来るのだろう
一生の後悔を背負いながら
その予感が、ずっと背中に貼りついている