『刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-』感想 山姥切国広とへし切長谷部の苦悩
はじめに
刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-見てきました。
々伝って書いて「どうでん」って読むんですね。読み方わからなくて、でんでんって読んでました。
あらすじ
私はストーリーを知ってから物語を見たいタイプなのであらすじ書きますね。ネタバレ嫌な人は飛ばしてください。
過去小田原への出陣で、兄弟刀をはじめ率いていた部隊を全滅させてしまいそうになった山姥切国広。責任を感じた山姥切国広は近侍を辞退することに。しかし本丸では誰一人山姥切国広が近侍を辞めることについて納得していなかった。山姥切国広の代わりに近侍を命じられたへし切長谷部さえも。
しかし、へし切長谷部は悩みながらも周りの後押しもあり最終的に近侍となることを了承する。
近侍となったへし切長谷部が出陣することになったのは、ちょうど本能寺が焼かれる直前の時期の「備中高松城の戦い」。
へし切長谷部はこの戦いで山姥切国広を立ち直らせようとしていた。
備中高松城では羽柴秀吉と黒田官兵衛が高松城を打ち取ろうとしている最中。刀剣男士達は高松城側の間者ではないかと疑いをかけられてしまう。高松城が陥落するまであと一歩というところで現れる時間遡行軍。時間遡行軍に襲われる羽柴秀吉と黒田官兵衛を刀剣男士達が助けたところ、無事に信頼を勝ち取ることが出来た。
時、同じくして本能寺が焼かれた知らせが入る。
刀剣男士達は黒田官兵衛に見込まれて明智光秀討伐への同行を請われるのであった。
歴史遡行軍の残党の動きも気になった刀剣男士達は光秀討伐への同行を了承し、明智光秀討伐を阻止しようとする歴史遡行軍と戦い、辛くも勝利する。
最終的に山姥切国広は今回の戦いでは立ち直りきらず、へし切長谷部に近侍を続けさせるのも酷ということから三日月宗近が一時的に近侍になり、燃える本能寺への続きを匂わせるエンディングを迎える。
感想
面白かったか面白くなかったかと言うと正直わからないんです。映画館で退屈な思いをした瞬間は一瞬も有りませんでした。でも、面白いって手放しに言って良いのか本当にわからないんです。
元々舞台刀剣乱舞から始まったこの物語、もし今回の々伝が舞台化されるって考えた時に絶賛を受けるか、舞台刀剣乱舞史上最低の評価を受けるかのどちらかだと思うんですよね。
というのも、物語の軸が山姥切国広の中にある挫折と、それをどうにか立ち直らせたいへし切長谷部にあるからなんですよね。
すごく壮大なテーマではなく、心の中の問題というのが物語を小さく見せてしまっているのかなと思います。
しかも山姥切国広は完全には立ち直れないまま燃える本能寺に繋がるというすっきりしきれない終わり方で、これも手放しで面白い!とは言い切れない原因かなと思います。多分、今回の戦いの中で山姥切国広の心の奥底では何かピースが動いてるはずなんですよ。それが見えてこないんです。
昨今の作品は全てをわかりやすく語りすぎると批判されていることがありますが、私はそれが悪いとは思ってなくて、全てを作品で語りきるべきだと思っています。だからといって今回の作品が語りきれてないとは言えなくて、私が今回不足に感じてる部分って本来舞台の稽古や板の上で演じられていくうえで洗練されて最終的にはもっと伝わりやすく観客に最終的にはちゃんと伝わっているものだと思うのですが今回はアニメなので伝わりきらなかったのかなと思いました。もちろんアニメの声優さんが伝わりにくい演技をしているから悪いというわけではありません。完璧な演技をされてたと思います。これは戯曲をアニメにしてる弊害なのかなと思いました。
映画を見ているのに戯曲読んでるのと同じ感覚になるんですよね。まだ何か足りない状態のものを見ているというそういう感覚になりました。
長谷部の立ち直らせたいという気持ちがありながらでも自分で立ち直らきゃ意味がないと思ってそうなところも物語としては盛り上がりに欠ける一因なのかなとも。人間どうしても物語には刺激を求めちゃう生き物です(私だけかもしれませんが)だから、長谷部の自分で立ち直らなきゃ意味がないから俺が出来るのはここまでという線引きがリアルゆえに物足りなく感じました。
山姥切国広を見守るしか出来ず本当は正面から奪い合って勝ち取った近侍になりたかったのに、相手が降りたせいで近侍になってしまった長谷部の苦悩はとてもよく伝わってきて胸が苦しかったです。
最近、漫画ガラスの仮面を無料開放で200話ぐらいまで読んだのですが、今回の長谷部は北島マヤが舞台から降りたせいで紅天女に自動的に選ばれてしまった姫川亜弓だよな、そんなの許せないよなという視線で見てしまいました。
否定的な意見が多かったですが、登場キャラクターも多くアクションも迫力があり大きい画面で見るべき作品だと思います。心の葛藤や成長がじっくり丁寧に描かれているので、人間ドラマが好きな人には非常に面白く感じるかもしれません。ぜひ劇場で確かめてみてください。