映画『ippo』
先日、柄本佑監督の映画『ippo』を観てきました。
とても良かったです。
色々なものを削ぎ落とし過ぎて、触り「心地」がなくなった様なそれではなくて、ちゃんとざらざらした「心地」がある映画。その細かい凹凸が私にとてもフィットしました。手作りのものが手に取った時に心地が良い様に、きっと、色んな人にフィットする作品なのだろうなぁ。
この映画は三つの短編作品から成っており、それぞれ、一つの場所で二人の男が会話するというシンプルな設定。場面や人が大きく動く訳ではない中で、でも感情や(人物や状況の)背景が動いていくのを感じる。視覚的には「静」に近いけれど、その中にたしかな「動」がありました。
シンプルな中に、会話、言葉、空気、表情、佇まい、物、情景、など様々な欠片が配置されていて、それを私なりに拾って並べて繋げていく。いや違うか?こうか?と遊ぶ様な、そんな感覚で観ました。確かにストーリーは映画の中にあるのだけれど、それを観ながら、観てる側も一緒に物語を作っているような感覚。楽しかったです!
目に映るものから、そこに居る人の背景を想像するって、こういうことなのかと、初めて実感しました。(そもそも映画ってそういう風に観るものなのかもしれないけれど…)
私は、一つの場面だけで物語が展開していくような舞台作品が好きなので、この映画を観ていて「舞台みたいで好きだなぁ」とふと思ったのですが、すぐに、いや違う、これは映画だからこんな風に楽しめるんだと気づきました。柄本佑さん、映画好きなんだなぁと改めて思いました。
個人的には三作品目の『フランスにいる』が一番好きでした。作中で、画家が探している答えに対し、私なりの一つの答えが思い浮かんだとき。そのときの心地が、たまらなかったなぁ。
(今思えばその答えが、「静」と「動」の後ろにあるもう一つのなにかだったように思う。)
観て良かった映画でした!