1時間SF脚本『ガラスノカラス』
あらすじ
人類の大半が姿を消して幾世。
戦争で生じたガラスの砂でできた砂漠「痺」に、改造人間「鴉」の阿・伊・宇が暮らしていた。
改造により長命となった彼らだが老いは避けられず、阿より二世代近く上の伊・宇には老いが見え始めていた。
見た目は青年の阿は、3つある星間航行船「駝」の定期点検のための宇宙飛行を終え、痺に戻ろうと駝内を移動中、改造前に同じ元孤児の少女であった江の姿を、ある部屋で見てしまう。
江は阿同様に鴉となり、共に長く暮らしていたが、かつてあった4つ目の駝の宇宙飛行中の爆発に巻き込まれたはずだった。
彼女は記憶物質「含」の小さな塊と共に現れたが、その意味を阿は理解していなかった。
幻影のように江は姿を消してしまう。
駝を出ると、痺特有の静電気を帯びた嵐「静電嵐」が吹き荒れ始める。
静電嵐の中を進み、伊・宇と共に暮らすガラス製の住居「柵」に戻ろうとする阿は、大量の静電気を受けて倒れる人造人間・園の姿を目撃し、柵へ連れ帰る。
姿形に違いはあるが、園の顔は江と瓜二つであった。
回復し、柵に留まる園の存在と、江を巡る記憶が混じり合う中、阿はもう一度あの部屋へ向かう。
再度姿を現す江は、含に残された記録の断片を阿に見せる。
含や改造人間「鴉」、駝、園を巡る歴史の一部を目撃し、阿は人類の滅びの一場面に立ち合い、自らもその一端に関わっていることを知ってしまう。
ふらふらの状態で柵へ戻り、寝込んでしまうが、覚醒するかのように夜中目覚める阿と、園から生じる4人の分身。
園の分身たちと阿は、残された3つの駝で宇宙へ向かう。
駝・鴉は元々テラフォーミングを目的に開発された。
しかし完成を前に、戦争等で文明は崩壊。
かろうじて残った人類に最早生きるすべはなかった。
呪わしき人類及び人類の証し全てを滅し、光となって全宇宙へ放たれよう。
駝の爆発と共に宇宙へ散ったモノたちの一方、滅びを良しとしなかった者たちは、テラフォーミング技術の根幹であった、あらゆるモノを生成する器官「呂」を持つ存在・園を生み出した。
阿・伊・宇・江と4つの駝は、園を含む、滅びを拒絶した者たちに死を与えるために残された。
それを知らされずにいた阿と江だが、江は含を見つけ、人類と自らの呪われた運命を知ってしまったのだ。
園の目的は、残された駝の破壊と、駝に残る情報を、その爆発を通して収集すること。
爆発の寸前、残された情報による姿である江に阿は救われ、救出に来た宇と共に爆発直前の駝から脱出。
柵で眠る園は、情報を元にあらゆるモノの生成を始める。
江がいなくなって以来、心神喪失状態だった伊は、眠る園の傍に寄ると、園を食わんとするかのように裂けた口を大きく開く。
登場人物表
阿 (12)(?)改造人間「鴉」・元孤児
伊 (?)改造人間「鴉」
宇 (?)改造人間「鴉」
江 (13)(?)改造人間「鴉」・元孤児
園 (?)あらゆるモノを生成する器官「呂」
を持つ人造人間
隻 (?)氷河で発見される人間のミイラ
酉 (?)氷河で発見される鳥類のミイラ
核 (?)月の一部「炉」内の人間の姿をし
た存在
園A・B・C・D・E 園の分身
コピー伊 園Dが生み出した伊のコピー体
コピー宇 園Cが生み出した宇のコピー体
コピー江 園Eが生み出した江のコピー体
鴉A・B・C・D・E
担当者A・B・C
被験者A・B・C・D・E・F・G・H・I
○(夢)海・壇A・陥
スティーヴ・ライヒの「振り子の音楽」のように、時間経過と共に徐々に大きく、間隔が短く、ハウリングが複数重なり合っていくような音が流れ始める。
霧が晴れゆく中、高さは底面の辺の長さより低い斜四角柱状の島「壇A」の緩やかなゲレンデのように斜めった、赤黒い上の底面「陥」で、頭を高い側に向けた仰向けの状態でゆっくりと目覚める、白の長袖・長ズボン姿の阿(12)。
底無しの滝のような形状の、深いほど黒く暗く、アメーバのような歪みのある穴「穽」が蜂の巣のように数多伺える陥で、眠そうに上半身を起こす阿を、低い側から見る。
顔以外の全身を、真珠のような輝きを放つ粒でできた葡萄の房のような膨らみを形作る皮のような器官「呂」に包まれた、20代の女性に見える人造人間・園(?)の姿が、日の光がさす低い側の霧の中にかすかに伺える。
呂と一体化した真珠色の前髪と、艶消しの白磁のような質感の色白な肌と、玉虫色に照る唇と、青い白目と赤い虹彩の目もかすかに伺える。
ハウリングが絶えると共に、園の姿を消すように周辺の穽から横一列に壁のように、中心程白く、周縁は虹色に輝く火柱が噴火するように吹き出す。
阿、火柱に照らされ、熱さもありおもわず身構える。
火の勢いは弱まるが、野焼きのように高い側へ上り、ガスコンロのように数多の穽に次々と点火していく。
穽に点火する度に虹色の炎が一時的に生物の形に変形し、単細胞や古生物から始まり、高い側の現生生物に至るまでの生命史を再現する。
1つの穽で1つの生物の形が現れ、白い炎によって燃え上がるように消滅していく。
阿、呆気にとられていたが我に返り、慌てて高い側へ裸足で走り出す。
阿、炎の壁に追われ、時々バランスを崩したり滑ったりしつつも、穽をひたすら跳び越えていく。
阿、動物群に追われるように炎に飲み込まれかけるが、高い側の端から跳び出すように飛び降りる。
○同・上空
霧の中を落下していく阿、虹色の光で形作られた、空中を泳ぐように浮遊する水生生物群を通り抜け、静寂な海に落水。
水生生物群は高度と水深が対応関係にあり、絶滅種も現生種も混在している。
○同・中
阿、落水による泡の中から現れ、あらゆる生物の数多の大小様々な骨に覆われた海底の手前で勢いが止まり、脱力したまま浮上していく。
○同・海面
壇Aと正三角形を描くように配置された、高さは底面の辺の長さより低い斜四角柱状の島「壇B・C」が霧の中から姿を現し始めると共に、海面から頭を出し、壇B・Cを見る阿。
壇A・B・Cの側面は照りのない黒一色で、のっぺりとした印象で形状がわかりづらい。
○同・浜
阿、壇Aの岸に積もった骨でできた浜にあがり、海に向かって腰を下ろす。
霧からほぼ姿を現す壇B・Cと阿の後ろ姿。
阿、背後からかすかに聞こえるハウリングと生ぬるい風に気づき、壇A側へ振り返る。
阿、わかりづらいが光の具合で伺える、浜から壇A内の洞窟のような空間「距」に通じる、壇Aの壁にある高さ2m程の正三角形の穴に近づく。
近づく程にハウリングの音が大きくなると共に、ハウリングの波に同期して生ぬるい風が吹いてくる。
阿、穴から距に入る。
距は入口から下がっていくような構造で、その奥を伺うことができない。
阿、暗い足元を伺いながら恐る恐る下がっていくと、距の天井に頭をぶつけ、足を滑らせ、落下するように、スライダーのように滑り落ちていく。
○同・壇A・距・中
入口から先は螺旋状で、高速で螺旋を描き滑る阿。
阿、映画館のような巨大な空間に滑り出て、丸太のように転がり、勢いを止める。
奥の壁には、正三角柱状の空間のある逆三角形の穴「填」があり、填の奥にも、逆三角形を合同な正三角形に4分割した内の中央にあたる位置に、プロジェクターのように入口側へ光を放つ穴「映」が伺える。
映からは赤・緑・青・紫を基本とする虹色の光が放たれ、映側を先端とした円錐状のクリスマスツリーのような光の塊「華」を形成し、投光方向を軸に、映側から見て反時計回りにゆっくりと回転しつつ、ハウリングの波の大きさと光の明るさが同期している。
色つきの光が系統樹を形成し、白光が各種の姿を形作っている。
阿、華を見上げながら奥へ進むと、映の下からの物音に気付き、立ち止まる。
阿と同様に白の上下と裸足姿で、短髪の江(13)、床に置かれた、底面を下にした胴体程の大きさの、高さは底面の辺の長さより低い正三角柱状で、内部に神経回路あるいは宇宙の大規模構造のようなスポンジ状の繋がりを形作る、赤・緑・青・紫を基本とする白濁した虹色の光を放つ多数の「格」群が伺える、背後が見えるくらい透明度の高い塩の結晶のような結晶「晶」を、アール状に繋がった床から壁へ置いたまま押して、映の手前の填へ嵌めようとする。
江、晶を押し、ギィーッと金属質な擦れる高音を放ちつつ床から壁へ差し掛かるも、重さに耐えられず足が滑る。
江に迫る晶の角、駆け寄る阿に右手で覆われ、勢いを抑えられる。
阿を見る江は園の顔と瓜二つ。
× × ×
(フラッシュ)
霧の中、火柱に包まれて見えなくなる、阿を見つめる園の顔。
× × ×
阿、その顔に驚きつつ、江と共に晶を填へ息を合わせて押していく。
その息はハウリングと同期している。
阿と江、時々滑ったりバランスが揺らいだりするも、逆三角形の下側に引っ掛け、そのまま晶を嵌める。
ハウリングと同期して地震のように壇全体が振動し始める中、映からの光を受け脳神経のように活性化する格の光。
華、映側から内部に液体を流し込まれるかのように若干膨らみつつ、色付きの光は映側から蝕まれて枯れていくように白化し、白光は玉虫色に照りつつ放射状に虹色の輝きを放つ。
壇の振動が極限に達すると同時に、内部からの圧力に耐えきれず白光と共に破裂する華。
○同・上空
地鳴りのような轟音と共に、壇Aの周囲に積もった骨群をバキバキとバラバラに粉砕しながら、沈没する船のように海中へ沈み始める。
しぶきと残滓のような霧の中、壇A全体が海中へ没していく。
壇A・B・C全体が完全に海中へ沈むまで俯瞰。
○同・含
海中から現れた、いわゆるふわふわドームのような大きさと印象を受ける、目玉焼きのように膨らんだ形状の、銀色の金属光沢を放つ記憶物質「含」の頂上の手前で、頭を頂上側に向けてうつぶせの状態で目覚め、上半身を起こし、含の頂上部を見る阿。
頂上部は目の角膜のように透明で、その下にはタペタム(輝板)のような緑がかった輝きを放つ膜が伺える。
透明度の高い頂上部越しに、頭を頂上側に向けてうつぶせのまま動かない江と、壇B・Cのあった位置に同じ目玉焼き状の含が海上に伺える。
阿、江のもとへ向かおうとするが、流動音と振動を感じ、頂上部の下の膜を見る。
内部からの圧力でドーム状に膨らむも、耐えられずに破裂し、ダマスカス鋼をおもわせるマーブル模様の、黒いインクのように液化した壇が混ざった液状の含が膜から溢れ出す。
○同・上空
油のように海面を覆っていく、壇A・B・Cと同じ位置の3つの目玉焼き状の含から湧き出る液化した壇の混ざったマーブル模様の液状の含を俯瞰。
含を追っていくと、数多のチューブワームのチューブを束状にまとめ、柱状節理のように角ばらせたような形をした、高層ビルのような高さの灰色の島「理」が水平線上に伺える。
(夢終わり)
○宇宙・駝A・瘤・中(夜明け前)
磁力で宇宙ゴミを付着させる機能を持つ漆黒の外装「甲」に覆われた、カプセル剤に似た細長い筒状で、両端が半球状の星間航行船「駝A」の端かつ先頭であるガラスの半球状のドームの空間「瘤」の中心となる空中で静止する、エネルギー源であり、ガラスに覆われた光球「焦」の放つ、水面のようにゆらめくぼんやりと白濁した緑色の光に照らされながら目覚める、銀髪に、御影石のようにつるつるとした黒一色の肌が伺える、改造人間「鴉」の、20代の青年に見える阿(?)の黒い虹彩と、瞳孔から緑色の光を放つ目。
甲に覆われた天頂側を見ると、宇宙ゴミが甲に衝突する甲高い金属音の中、*(アスタリスク)を90度横倒ししたように甲に3本線が走り、開花するように甲が外側に開き、満天の星空が姿を現す。
メインタイトル「ガラスノカラス」
阿、軸を中心に反時計回りにゆっくりと駝Aが回転する中、無重力による中立姿勢で浮遊しながら焦を中心に公転し、星空とメインタイトルを背景に通過。
ミトコンドリアのマトリックスをおもわせる、首から下腹部へ直角に蛇行するように走る、緑色の光を帯びた、背後が透けて伺える晶と、雷文を描きながら直角に蛇行しつつ晶内を走る、晶より白濁した格が伺える。
白濁した煙状の緑色の光を放つ、左右2つ計4つの腕輪と左右1つ計2つの足輪を「環」と呼称。
○同(夜明け)
駝A、東の地平線から日の光が見え始めると、瘤を覆っていた甲を閉ざしつつ地球に降下していく。
甲の表面は大気圏突入時の熱で溶けた鉄錆色の宇宙ゴミに覆われている。
阿、煙が対流する白色矮星のように白濁した緑色の光を放つ真珠に似た焦を背に、閉じゆく甲の隙間から外を眺める。
○痺(夜明け前)
珊瑚砂や星砂のような、バラバラな骨のような形で、透明なガラス様の砂「牙」に覆われた、レンソイスをおもわせる、雲海のような純白の砂漠「痺」で立ち止まり、遠くに海が伺える東側の空から大気圏を降下する駝Aを望む、園の後ろ姿。
目に駝Aを映す園、かすかに口角を上げる。
○同・港・軌・駝A・坑・中(朝)
駝の出発地「港」にある係留施設「軌」上の空中で、瘤を天に向けて静止する駝Aの瘤から、*状に仕切りが開き、軸線上を後尾へ筒状に通じる空洞「坑」へ、両腕から離れて頭上と足下から挟み阿を浮かせつつ後尾へ降下させていく、自在に大きさや太さ、形を変えることができる、浮遊する2つの環。
降下する阿、坑の周囲をパノプティコンのように取り囲む、真っ黒な内装の閉じられた部屋「窟」の1つの丸窓から、瘤と坑の仕切りが閉じる音と同時に砂漠のような強い外光が顔にさすと共に、ハウリングが聞こえ始め、眩しそうにしつつ目を向ける。
○(幻影)同上(朝)
甲側の丸窓の下の影から現れて外光に照らされつつ、輪切りの大きな一枚板の机に1つある木目の上に置かれた、黒いインクをガムに練り込み固めたようなマーブル模様と形をした、銀色の金属光沢を放つ含の手に収まる大きさの塊に阿を見つめたまま近づき、含の自身の側を右人差し指で押して阿側の底を浮かせ、含から流れるハウリングが大きくなると共に力を抜いてコトンと音をたてさせる、瞳孔・晶・格・環から紫色の光を放つ、長髪の20代の女性に見える鴉・江(?)を坑側の丸窓越しに見る。
江が含に触れている間はノイズが混じる。
(幻影終わり)
○同上(朝)
含からのハウリングがかすかに聞こえる。
坑側の丸窓の先を見つめる、環の白濁した緑色の光に照らされる阿の顔に外光はさしていない。
闇の中、木製の机や椅子、机上の含も環の光にかすかに照らされているが、甲側に丸窓は元々存在しない。
降下し始める阿と環を映す含と、後尾の開く音。
○痺(朝)
阿、牙に埋もれ、鉄錆色に朽ちかけた海洋プラットフォームのような軌の上空で静止する駝Aの、*状に分かれ外へ開く後尾から西へ、下に凸の放物線を描きながら降下。
軌の南西部に駝A、南東部に駝B、北東部に駝Cが束のようにL字状に停泊。
西から東へ強風と共に、大量の静電気を発生させつつ痺を飲み込みながら阿に近づく牙群の白濁した嵐「静電嵐」。
阿、着陸し、自身を覆うように環の1つを底面のない空洞の円錐状に変形。
静電嵐、巨大さに比してかなりの速度で阿を飲み込む。
阿、静電気を帯びた牙が当たると、甲高いガラスのような音をたてつつそのエネルギーを緑色の光へ変換させる環に包まれて西へ歩んでいると、静電嵐の先に何かを見つけ立ち止まる。
○同・環・中(朝)
大量の静電気を受けて玉虫色に光る呂に包まれて東へかろうじて歩むも、前へ倒れる園を、複数の緑色の光がじんわりと広がっては消えていく、白濁した環越しに見る。
○同(朝)
反射的に拳と共に前へ突き出される阿の右腕から飛び出す2つの環、阿を包む環を通り抜け、静電嵐をもろともせず空中を直進し、各々底面のない空洞の円錐状に変形しつつ園を浮上させ、算盤珠のような、頂点を天地に向けた双円錐に合体して包む。
静電嵐が去り始めて覗く青空。
○同・柵・中間・中
西側から近づく阿と環に包まれて浮遊したまま横たわる園を、銀化した円形切子碗を4つ伏せたようなガラス製の住居「柵」の一部屋・中間を横一列に覆う、円形切子に合わせて施された花火のようなステンドグラスの、柵を構成する二重構造のガラスの内側と外側の間に満ちている水も伺える、南西側の1つの右上の透明な部分越しに見る。
透明な円形の中心部から放射状に、右上の線が欠けたX字状の黒い部分と、上から反時計回りに青・空・緑・黄・赤へ階層的に変色する、紫の欠けた色相環のような部分と、右上の90度の円弧状に透明な部分で構成されたステンドグラスの柄は全て同じ。
○同・柵前
中間の西・北・東に接続された、中間と同形で一回り小さい西間・北間・東間が伺える、中間の南側が外側へ観音扉のように開く。
○同・柵・中間・中
中間に横並びで入る、東側から阿と環に包まれた園と、中央の床には透明な円形切子碗のような大きな鍋が置かれ、手前には蓋が魚の頭をかたどった銀化したガラス製の胡瓶のような形の水瓶、奥の北側の床には南を向いて立膝で座る、東側から、60代の女性に見える鴉・伊(?)と、60代の男性に見える鴉・宇(?)。
床は銀化したガラス繊維の布「導」に覆われ、中間と各部屋を繋ぐ短い通路にはひものれんのように導が垂れ、伊は逆立たせた髪も覆うヘアバンドのように、左腕のない宇は、右目と口以外の両肩から上と右腕を、包帯のように導で覆っている。
伊は赤色、宇は青色の光を帯びた晶・格・環。
伊と宇の晶・格は根のように周囲の黒い肉に侵食しており、根上がりのように肌を盛り上げ、ひびを入れている。
伊と宇の目はかすかに白濁しており、宇は阿と園を見ているが、伊は気づかないのか若干下を見たまま動かない。
阿、園を包む双円錐状の2つの環が輪状に戻り、軸を90度倒し、車輪のように左右から挟んで、頭を北に向けた園を仰向けに床に下ろして腕に戻ると共に、左手で水瓶を持って園の東側に座り、右腕で園の上半身を起こす。
園、目を覚ますも、疲労のために意識が朦朧としたまま、目を重そうに開く。
× × ×
(フラッシュ)
阿を見つめる窟内の江の顔。
× × ×
阿、園の江と同じ顔をじっと見てしまうが、思い出したように水瓶を園の口へ持っていく。
ゆっくりと開かれる園の口内には、喉はなく、オパールのような歯列と、舌状の呂が伺え、蓋の開いた水瓶が近づくと、カメレオンの舌のように舌状の呂が飛び出して水瓶の口を覆い、蠕動運動と共に水を飲み干す。
硝子体内を漂う煙のような紫色の光が瞳孔から伺える伊の目。
○同(夕)
阿、痺に沈む夕日を背に、浮遊するボウル状の環と共に、痺の南西方向へつづく弧状の海岸沿いにひろがる、冷え固まったガラスに覆われた丘陵地帯「澗」から柵へ戻る。
○同・柵・中間・中(日没)
目覚める園、中間へ入り中央の鍋へ向かう阿を目で追う。
環、ボウルの中に入っていた水と、極薄のガラスに覆われたタヌキモのような水草と、体がガラスで構築された透明に近い魚や蟹や海老の群れを、輪状に戻りつつ鍋に入れ、広がりつつ鍋の外を通り、鍋を浮上させつつ、鍋の真下の中空で静止。
鍋の中を側面越しに見ると、実際の数以上の魚がこちらを見ているように見える。
緑色の光が急激に強くなる環。
園、起床し、あっという間に沸騰する鍋を見つめる。
○同上(夜)
銀色の月の光の下、白地彩画四葉文鉢のような皿に盛られた、茹でられた魚や蟹や海老や水草。
鍋を囲み各々に盛られた皿から手掴みで食べる阿・伊・宇を南東側から見る。
雷文状の格が伺える晶でできた歯と、舌と喉がない代わりに、首から下腹部へ走る晶の、格の断面が露出した平面が伺える口で、ガラスを割るバリバリとした音をたてて魚を噛み砕くと、バラバラの魚が消化管のように格内に流れ込み、晶内を格の入れ子構造のように流れる赤色の電流に魚を変換する伊の格。
阿、バリバリと噛み砕きつつ、園の様子を伺う。
園の両肩あたりの呂の真珠状の膨らみ、両腕に変形。
園、左手で皿を持ち、右手で魚の尾を摘み、上から飲み込むように持ち上げて口を開け、カメレオンのように舌で魚を包み込み、タヌキモのように瞬間的に吸い込む。
阿、園を見たまま蟹をバリバリと噛み砕く。
呂の真珠状の膨らみの1つに流し込まれた魚、虹色の煙と化し呂の内側に沈着していく。
含から流れるかすかなハウリングと共に、痺を歩く人の群れのギシギシとした甲高い足音。
○(夢)痺
灼熱のために揺らぐ阿(12)の視界の中、全身をマントのように白布で包んだ人々と共に行進するも足下をとられて倒れ、目を上げると、阿の前を歩いていたが阿に色白な右手を差し伸べる、改造前の人間の姿がはっきりと見える江(13)が園に変貌。
(夢終わり)
○同・柵・東間・中(夜)
中間の東にある東間の北側の導製のマットに、頭を西に向けて横たわる阿(?)、目覚める。
東にある駝A・B・Cが停泊する港が壁越しに伺える中、起床し、中間へ向かう阿を、西側から見る。
○同・同・中間・中(夜)
阿、導のひものれんを抜け、南の出口へ向かいつつ西間に目を向ける。
西間ののれん越しに伺える、頭は西に、南向きの中立姿勢で横たわる園の呂の真珠色の輝き。
○同・澗(夜)
港と柵と、澗の縁の丘を登ってくる阿を西から見る。
銀色の月光に照らされる丘陵、透明度の高い水の溜まった丘陵の凹み、凹みへ下りていく阿の後ろ姿を東側から見る。
水中には水草と、ウミホタルのようなプランクトンによる青白い光が伺える。
北東岸を下りる阿を南西岸から見る。
魚や蟹や海老や水草やプランクトンが伺える岸に浸される阿の両足。
阿、斜面に寝て、両手を後頭部にまわし、目を閉じる。
○(記録)同
含から流れるかすかなハウリングと波音の中、雲と、遠いためにはっきりとは見えないが、個々でシャボン玉状の呂に包まれて浮遊し、活動停止状態で虹色の煙へと消化されていく鴉群が伺える上空から降り、飽和する数多の白光の柱。
(記録終わり)
○同・澗(夜)
目を開ける阿と、阿の両腕を押さえつける園の呂の両手。
円錐状の銀色の月を背に阿に覆いかぶさり、阿の両目を真っすぐに見つめる園の瞳孔から放たれる緑色の光。
○同・同・水中(夜)
プランクトン、魚に食われて青白い光を放つ。
プランクトン、蟹に食われて青白い光を放つ。
プランクトン、海老に食われて青白い光を放つ。
プランクトン、タヌキモのように水草に吸い込まれ、青白い光を放つ。
○同(朝)
阿、徐々に晴れゆく朝霧の中、澗からボウル状の環と共に柵へ戻る途中、何かを見つけて立ち止まる。
○同・柵前(朝)
霧が薄くなって見えてくる、柵の前に立ち、ただ南の空をじーっと見つめる伊と、伊に環と共に近づく阿。
硝子体内を漂う煙のような紫色の光が瞳孔から伺える伊の傍に立つ阿、伊と阿から少し離れて立ち止まり、南の空を見上げる園へ目を向け、自らも南の空を見上げる。
○(回想)同・柵・東間・中(夜)
含からの強いハウリングが聞こえる中、宇宙で爆発した駝Dから放たれた、南の空からの超新星爆発のような紫色の光と、もやのように広がる紫色のオーロラと、南岸の痺を覆う静電気を、静電気を防ぐ柵の天井越しに見る、見上げた阿の顔。
(回想終わり)
○同・柵前(朝)
朝霧がほぼ晴れ、雲の浮かぶ青空と海を背景に、阿に気づかないままの伊を柵内に連れていく阿と、後を追う園。
○同・柵・中間・中
真南の太陽を天井越しに中間の南側から見上げる。
鍋を中心に、鍋に足を向けてX字状に昼寝する、北西から時計回りに宇・伊・阿・園を、南側から俯瞰。
阿、目を開け、園を確認し、外出。
○同
阿、頭上と足下を2つの環で挟み、下に凸の放物線を描きながら駝Aへ浮上。
○同・港・軌・駝A・坑・中
阿、坑内を上昇すると、後尾が閉じる音と同時に流れ始める含からのハウリングと共に、窟の1つの丸窓から、目を閉じた顔に外光がさし、覚悟を決めて目を開ける。
○(幻影)同上
椅子に座った状態でだるそうに左肘を机上に置いて頬杖つく江(?)、阿に気づき、含に手を伸ばす。
江、まるで卓上ベルを押すように、江側を右人差し指で押して阿側の底を浮かせ、力を抜き、コトーンと伸びるように音を響かせる。
(幻影終わり)
○(記録)宇宙
含のハウリングが響き続ける中、表側の月の赤道付近からアメーバが成長するように広がり、全体を覆っていく液状の含。
液状の含、月を包むと、突如内側に沈み込み始め、サザエの貝殻を更にトゲトゲにしたような形状に月を変形させる。
○海・上空
含のハウリング、リセットされてから響き始める。
ドローンのように降下し、雲の中から抜けると見えてくる、海面に広がる壇混じりのマーブル模様の液状の含。
海面に広がり続ける含の端を見つけ追うと、理に迫っていくのが伺える。
理の外壁には、煙のような光が内部に伺える磨りガラスのような縦長な菱形の窓が多数あり、各々別の色が伺え、全窓で赤・緑・青・紫を基本とする虹色を構成している。
理を岸から取り囲むと、アメーバの仮足のように変形し、貼りつきながら這い上がっていく。
含の重さのために叫びのようなギーッと軋む音が出始めると、突如外側のチューブ状の部分が複数崩壊し、内部に詰まっていた赤・緑・青・紫色を基本とする数多の花が裂け目から現れて崩れ、虹色に混じり合い、急速に枯れ、煙のように粉々に散りながら吹き出し、含に飲み込まれていく。
裂け目の中にも入り込み、連鎖的に崩壊する理をほとんど包み込みかけると、壇A・B・Cの描く正三角形の中心にあたる位置から落雷のような音と共に放電が始まり、電流と共に、磁力に引かれる磁性スライムのように中心へ急速に引きずり込まれ、吸引されていく含。
中心地点の海底には、底面を上に覗かせる正四面体の巨大な晶が埋まっており、晶内に晶の底面に頂点が接する正四面体状の格があり、格内に電流で球状に圧縮され抑え込まれた液状の含が伺える。
含の広がった範囲では、吸収され含化したために海水はなく、海底には削られた跡が伺えるが、周囲から海水が流入し、中心地点を含め覆っていく。
○実験室・中
含のハウリング、リセットされてから響き始める。
サングラスのような反射のある黒いガスマスクに、白い防護服で全身を包み、真っ暗な観察室から実験室を真っすぐに見たまま直立不動の、川の字に並ぶ担当者A・B・Cを、真っ暗な立方体状のホワイトキューブのような実験室から、マジックミラーのような窓越しに見る。
中央の担当者Bの背後の観察室の壁にスクリーンのように白光で大きく映される「1」。
実験室内全体が白光で満たされ、背後の1の光に照らされ、担当者らの姿もうっすら確認できる中、窓とガスマスクに映る、裸足に上下白服姿で立つ人間である被験者A、光を帯びていない、飴粒のような大きさの晶に覆われた格を口に含むと、口から浸透するように放電と共に感電するかのように痙攣しつつ急速に鴉化していくも、晶・格が過度に成長し、肉を黒化しつつ根のように侵食し、晶・格・黒化した肉がバラバラに粉砕しつつ破裂。
いくつか破片が窓に当たるも、担当者らは無反応。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「2」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者B、A同様、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「3」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者C、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「4」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者D、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「5」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者E、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「6」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者F、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「7」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者G、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「8」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者H、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化するも破裂。
実験室が消灯され、観察室の壁に映される「9」。
実験室が点灯されて照らされる、窓とガスマスクに映る被験者I、晶に覆われた格を口に含むと、鴉化し、放電と痙攣がおさまりつつ、全指を天に伸ばし、前に向けた両掌を頭の高さまで、両腕をY字状に挙げた姿勢で静止。
担当者A・B・C、前のめりになりつつ被験者Iに一斉に顔を向ける。
全被験者は20代以上で年齢や性を問わない。
○海・上空
含のハウリング、リセットされてから響き始める。
軌以外は水平線まで何もない海上からロケット級の速度で浮上する、軌上の空中で静止していた、駝の長さの3分の1程の直径の球状の呂が中程に食い込みつつガムのように癒着した駝E・F・G・H。
駝も軌も一切錆がない。
画面右下に表示される、打ち上げと共に0から始まる時間(秒と分)と高度(m)。
○大気圏
浮上しつつ、呂を軸に上から見て時計回りに回転しつつ回転速度を上げ、宇宙に近くなると、呂が瘤側に移動すると共に、呂に瘤を埋めるように全駝が水平かつ十字状に移動。
○宇宙
追跡を止め、回転しつつ進む駱・呂を見送っていると、呂が玉虫色に光りつつ沸騰するように駝を飲み込みながら円盤状に膨張し、周縁から色相環のように赤・緑・青・紫色の光と、中心からそれらが混ざった白光を放ちつつ、天を覆うように大爆発。
○山脈・氷河
含のハウリングはリセットされ、ガイガーカウンターのような、機械的だが似たようなハウリングが聞こえてくる。
雪が降るヒマラヤ山脈のような山脈の深い谷にある氷河を登る、複数の改造人間・鴉を鴉Aの視点から見る。
鴉たち、頂上に向かって右側と左側に各々別れていく。
右側は手前に、左側は奥側に鴉たちが集まっており、右側から左側に向かって隕石が通ったような溶けた跡が伺え、左側は巨大な穴と化しており、湯気が立ち上っている。
鴉A、右側の集まりに向かう。
アイスマンのようなうつぶせの人と、品種としては黒柏鶏か唐丸に似た鶏のような鳥のミイラを、槍投げ用の槍のような、双円錐の槍状の環で氷を溶かしながら発掘する複数の鴉越しに見る。
男性とみられる人のミイラ・隻(?)は、背丈より高く、先端に鳥がとまれそうな水平な部分のあったアールの途中から溶けた跡の始まりと共に失われた状態の、黒檀のように真っ黒な木製の棒状の杖を右手に持ち、古墳時代の高貴な男性の装束に似た、灰色の服と銅色の地金を青銅色の錆が覆う靴、腰帯に赤茶色に錆びた鞘のまっすぐな剣を下げている。
帯には、アイヌ文様に似た形状に、縄目状の縄文のある黒と赤の文様「隈」。
皺が深く刻まれた顔にも、隈取のように黒い隈があるが、焦茶色の日焼けであまり目立たない。
ぼさぼさの白い長髪に、高く大きな鼻の先や耳は所々欠けている。
原子模型状に乳が配置された、銅色の地金を青銅色の錆の覆う鏡が右目を隠し、その鏡を目とする饕餮文と、それを蔦のような丸みのある雷文の溝が囲む青銅の「面」が右側頭部を覆う。
鳥のミイラ・酉(?)の劣化し照りのない黒い羽は所々抜け、肌身は烏骨鶏のように黒く、首の半ばから上は溶けた跡の始まりと共に失われている。
鴉A、ミイラ発掘現場から溶けた跡を辿って穴へ。
溶けた跡を踏みしめながら、巨大な穴に入っていくと、機械的なハウリングが大きくなっていく。
鴉A、穴の奥で鴉たちが取り囲む、サザエ状になった月の棘の一部である、同様に外側は固体の含でできたサザエ状で、雑居ビルのような大きさの物体「炉」へ近づく。
炉、内部から熱を放ち、表面からは蒸気が立ち上る。
鴉Aの右腕から炉に近づくオレンジ色に光る環、直径1.5m程の球状に変形し、炉の外殻から内部へスキャンしていくように、超音波検査のように透視し、内部の状況を魚眼レンズのように、環内の煙状の光でノイズ混じりに映す。
ノイズとハウリングの大きさは同期。
炉内を対流する高温の液状の含が見えてくると、液内を眠りながら漂う裸身で長髪の20代女性に見える核(?)の姿を発見し、様子を伺うと、ゆっくりと目を半ばまで開け、焦点の合わない目がかろうじて伺えるが、突如見開いて鴉Aと目が合うと、環と向き合う炉の表面が内部からの熱で発光し始め、環が輪状に戻った瞬間に、熱で開いた穴から溶岩のような液状の含が鴉Aに向かって高圧により吹き出す。
○痺・上空
含のハウリング、リセットされてから響き始める。
雲から鳥のようにV字の列で現れる、腹側と背側を各1つ計2つの環に挟まれた、鴉化した被験者Iと同じY字状に両手を挙げた姿勢で飛び、左半身を下に向けて降下していく鴉たちの一編隊を真下から見上げる。
晶・格・環の色が各々異なるため、V字編隊はプリズムによる分光のように見える。
数多の鴉のV字編隊群に合流する、降下した一編隊。
横並びに飛行する数多のV字編隊群を見、太陽を見上げると、日の光の中に紛れて、別の鴉群がV字編隊群を狙って高高度から落下するように急降下し、乱戦状態に。
鴉B・C、上空から落下しつつ、地面に衝突する瞬間まで空中で取っ組み合い、各々6つの環を槍状に変形させ、お互いを突き刺そうとするも、ぶつかり合ったり、弾き返したりする。
○同
取っ組み合う鴉群がいくつも落下し、牙が舞う中、更に大量の牙を吹き飛ばしつつ槍状の環を持ち、ぶつけ合う鴉B・C。
鴉B、Cの晶に槍状の環を突き刺す。
鴉C、Bの槍状の環から強制的に過剰なエネルギーを注入され、晶・格が肉を黒化しつつ根のように侵食し、晶・格・黒化した肉がバラバラに粉砕されつつ破裂。
鴉B、間髪をいれずに急降下してくる鴉D・Eと乱闘しつつ急上昇。
○同・上空
高高度へ上昇していく鴉B・D・Eの姿もある、空中戦が続く空域から、地平線近くの上空でちらっと真珠のような輝きが見えたかとおもうと、瞬間移動級の速度でシャボン玉状の呂群が一瞬で全鴉を個々で包み込み、強制的に活動を停止させ、虹色の煙へと消化していく。
高高度から降り飽和する数多の白光の柱。
○宇宙
含のハウリング、リセットされてから響き始める。
火星に似た惑星に回転しつつ接近する、中心の呂と十字状に一体化した駝E・F・G・H。
駝群と呂は分離し、回転する駝群は惑星から距離をとったまま高度を上げ、球状の呂は惑星に向かって降下。
画面右下に表示される、0から始まる時間(秒と分)と呂の惑星からの高度(m)。
呂、大気圏との境辺りで瞬間的に薄く広がり惑星全体をシャボン玉のように覆う。
遠ざかる駝群、瘤を覆う甲を開き、各々赤・緑・青・紫色の焦を輝かせ、瘤同士をぶつけ合わせると、周縁から色相環のように赤・緑・青・紫色の光と、中心からそれらが混ざった白光を放ちつつ、天を覆うように大爆発。
惑星を覆う呂、駝群の光を受け、全体的に玉虫色に光りつつも、急激に銀化し、ひび割れ、剥落し、崩落しつつ光を失う。
○海・海面(夜)
含のハウリング、リセットされてから響き始める。
曇天の海上に浮かんでいると、水平線近くの上空でちらっと真珠のような輝きを見せるシャボン玉状の呂群が現れたかとおもうと、反対方向の高高度から光の柱が呂群に向かってさし、水蒸気爆発のように手前から水平線までの広範囲で瞬間的に蒸発する海水。
手前から水平線の上空にかけて、水蒸気の中をダイヤモンドダストのように舞う、光の柱を受けて銀化し、破裂した呂群の破片。
○同・上空(夜)
全方向の水平線近くの上空に、ランダムで現れるシャボン玉状の呂群に向かって、間髪を入れずに高高度からさす光の柱群。
光の柱によって海水がほぼ蒸発し、水蒸気と呂群の破片に覆われる中、光の柱の起点の真下にあたる海底に現れる、含を封印していた正四面体状の晶・格。
格内のマーブル模様の液状の含、電流に覆われつつ、種から芽が出るように格の頂点から格・晶を突き破り、高さおよそ500mの垂直な円柱を形成。
光の柱と呂群の攻防が続き、熱によって露出した海底は溶岩のように溶けている中、円柱の側面から球状に浮遊しつつ分裂し、葉状に変形していく含群。
円柱状と葉状の含、電流によって繋がりを保ちつつ離れすぎないように距離を維持。
葉状の含群、表面は滑らかで、横長に引き延ばされた菱形を基本形とし、各々歪めたように違った形状で、横から見ると上・中・下層の3列に分かれ、ゆっくりと回転し始める。
上層と下層は、列自体は上から見て時計回りに回転し、個々は先端側から見て反時計回りに回転。
中層は、列自体は上から見て反時計回りに回転し、個々は先端側から見て時計回りに回転。
円柱側から先端への方向は、上層は右肩上がり、中層は水平、下層は右肩下がりに向いている。
電流が強くなると共に回転速度も高まる葉状の含群を、下層から上層へ上昇しつつ見ていくと、円柱内からパラボラ状の上の底面に浮き上がるように現れる球状の含、目のように水平方向に2つ並ぶ、表裏を貫通する穴が開き、電流と共に浮上し始めながら、垂直方向を軸に、灯台のように上から見て時計回りにゆっくりと自転しつつ、内側から徐々に虹色の光を放ち始める。
頭のような球状の含、激しくなる呂群の襲撃と光の柱の攻防の中、目のような穴から、中心は白く周縁は虹色の強い光を放つ。
高速で回転する葉状の含群から全方向へ放たれる電流の衝撃波、水蒸気や呂の破片、雲を地平線近くまで吹き飛ばす。
間を置いて、地平線から流れ込んでくる海水と、目のような穴から白と虹色の光を放ちつつ、電流をほとんど帯びずに高速で回転しつつも速度を緩めていく含を見てから、雲一つない満天の星空を見上げる。
○痺(夜)
リセットされてから響き始める含のハウリングと、近づいてくる人の群れのギシギシとした甲高い足音の中、満天の星空から目を下ろすと、北側の柵から出てくる、50代くらいの見た目の伊・宇と、南側を西から東へ歩む、全身をマントのように白布で包んだ、人々の複数の長い列を足下から見る。
伊の髪は逆立っておらず、宇の左腕も伺え、両者とも導は身につけていない。
伊・宇の視線を感じ、疲れ果てた顔を向けて立ち止まる、最も北側の列を歩く江(13)と阿(12)を、北側から見る。
1つの軌に4つの駝の組み合わせが、東側の海上に碁盤の目のように数多に配置された港と、海岸と軌同士を繋ぐ幾つもの橋へ向かう人々を西側から俯瞰。
港の南端にはそれらと独立して橋が見られない、錆のない駝A・B・C・Dが停泊する錆のない軌が伺える。
○同・港・軌・駝I・坑・中(夜)
輪状の環を挟みつつ、Y字状に両手を挙げた鴉、白布の人々、鴉の順で瘤へ浮上していく様を見上げる。
○同(夜)
4つを1組とした駝群が既に幾つか宇宙へ浮上している港と、港へ向かう人々を西側から見る。
阿は宇に、江は伊に、両肩に手を置かれた状態で横並びに東側の港を見ていると、南側の列の中に1人立ち止まる人の姿が伺え、南側の阿だけが気づき、目を向ける。
人々の中に立つ園の分身・園Aがゆっくりと阿に顔を向けんとし、顔が見える直前、複数組の駝群の花火のような連続的な大爆発によって南の空を覆うように、周縁から色相環のように赤・緑・青・紫色の光と、中心からそれらの混ざった白光が超新星爆発のように放たれ、もやのような緑色のオーロラも広がっていく。
阿、皆が南の空を見上げる中、園Aから目を離せない。
20代に見える江にそっくりだが、白布と髪が光を受けて真珠のような照りを見せ始め、虹彩は赤く、白目は青く変化しながら阿を見つめる園A。
(記録終わり)
○同・港・軌・駝A・坑・中(夕)
まるで頭の中を響き渡るように含のハウリングが続く。
ハウリングによるものか、頭を痛そうに抱え、ふらつきながら必死に降下していく阿(?)を見下ろす。
○同(夕)
疲れ果てた様子の阿、軌の上空で静止する駝Aの後尾から西へ、下に凸の放物線を描きながらもハウリングに合わせてゆらめきながら降下。
○同・柵・中間・中(日没)
伊・宇・園、茹でた魚等を食べる。
宇と園、ハウリングに合わせてよたよたと中間に入り、周囲に目もくれずに東間へ向かう阿を目で追う。
○同・同・東間・中(夜)
聞こえ続ける含のハウリングで寝苦しそうな阿。
× × ×
(フラッシュ)
白光を背に、瞳孔から紫色の光を放ちつつゆっくりと開けられる江の両目。
× × ×
阿、音が止むと共に、瞳孔から緑色の光を放つ目をゆっくりと開ける。
○同・同・西間・中(夜)
眠る園の顔が呂と共に仮面のように剥がれ、顔以外を布状の呂をマントのようにまとった園Aと同じ姿をした園の分身・園B、目を閉じたまま幽体離脱のように起床せんとする。
○同・同・中間・中(夜)
阿、ゾンビのようにのそのそと東間から中間に入ると立ち止まり、西間を見る。
園B、西間から中間へ入ると共に顔を上げ、瞳孔から緑色の光を放つ。
呂の動きから足の動きがわかるが、幽霊のように足はなく、顔以外の体は実体がない。
園Bの背後から、三面六臂の仏像が3体に分離するかのように左右に姿を現す、赤い白目、緑の虹彩、瞳孔から青い光を放つ園Cと、緑の白目、青の虹彩、瞳孔から赤い光を放つ園D。
阿、真顔のまま外へ向かう。
阿についていく園B・C・Dの背後に、彼らについていく、青い白目と赤い虹彩に、瞳孔から光を放っていない園Eの姿が伺える。
○同(夜)
港へ歩む阿と園B・C・D・Eの後ろ姿を俯瞰。
阿、頭上と足下を2つの環で挟み、Y字状に両手を挙げ、下に凸の放物線を描きながら駝Aへ浮上。
園B・C・D・E、幽霊のようにふわっと浮上し、園B・Eは阿の後を追い駝A、園Cは駝B、園Dは駝Cへ向かい、各々*状に分かれ外へ開く後尾から入っていく。
○同・港・軌・駝A・坑・中(夜)
瘤に向かって上昇していく阿と園B・Eを見下ろす。
○(幻影)同上(夜)
窟内で甲側の丸窓の近くに立ち、銀色の円錐状の月を眺める江(?)、上昇する阿と園らの気配に気づき、坑側の丸窓へ振り返る。
○痺・港・軌・駝A・窟・中(夜)
阿と園B、瘤を見上げたまま通過。
園E、襲い掛かるように坑側の丸窓に貼りつき、じっと江を見ると、瞳孔から紫色の光を放つ。
○同・同・同・同・坑・中(夜)
雲がかかるように、園Eにさす銀色の月光が薄くなるように消えゆくと共に、浮上し始める駝A。
(幻影終わり)
○同・上空(夜)
駝A、B、Cの順で浮上し、宇宙へ向かうのを見送る。
○雲上(夜)
駝A・B・C、雲を抜ける。
駝Aの後尾が開くと、浮遊したまま飛び出す園E、自身の呂を錆のない、表面に呂の真珠のような照りが見られるコピー駝Dに変態させていく。
○宇宙(夜)
駝A・B・C・コピーD、大気圏を抜け、一定の距離を保ちつつ、瘤側を中心に向け十字状に並んで回転しつつ宇宙へ。
○同・コピー駝D・瘤・中(夜)
甲が開く中、紫色の光を放つ焦の下、瘤の床に立ち、瞳孔から紫色の光を放つ園E。
○同・駝C・瘤・中(夜)
甲が開く中、赤い光を放つ焦の下、瘤の床に立ち、瞳孔から赤い光を放つ園D。
○同・駝B・瘤・中(夜)
甲が開く中、青い光を放つ焦の下、瘤の床に立ち、瞳孔から青い光を放つ園C。
○同・駝A・瘤・中(夜)
甲が開く中、緑色の光を放つ焦の下、瘤の床に立ち、瞳孔から緑色の光を放つ園B。
焦を前に、Y字状に両手を挙げて空中で静止する阿、晶の外側から内側へ格の入れ子構造のように電流が流れ始めると、下から数多の人々の気配を感じ、下に目を向ける。
○(幻影)同上(夜)
園Bを中心に、隙間なく床に直に座る白布の人々。
阿、外へ目を向ける。
○宇宙(夜)
複数組の錆のない駝群、駝A・B・C・コピーDを追い抜くように地球から離れる。
最も地球から離れ、他の駝からも離れた先頭の4つで1組の駝群、白布の人々の姿が伺える瘤同士を接近させ始めると共に、土星の環のように周囲をY字状に両手を挙げ、晶の外側から内側へ格の入れ子構造のように電流が流れる鴉群に囲まれた焦が赤・緑・青・紫色の光を強く放ちつつ膨らみ始めると、急速に地球及び他の駝から離れ、瘤同士がぶつかったように見えた瞬間、周縁から色相環のように赤・緑・青・紫色の光と、中心からそれらが混ざった白光を放ちつつ、音もなく大爆発。
○同・駝A・瘤・中(夜)
白光に照らされ、見開かれる阿の両目。
(幻影終わり)
○同上(夜)
阿、膨らみつつ強く発光し始める焦に目を向ける。
焦内の煙のような光、鍋の中の魚や蟹や海老や水草に変形し、うごめき始める。
阿、駝Bの瘤に目を向ける。
○宇宙・駝B・瘤・中(夜)
開かれる園Cの口から現れる口内の呂、肌に呂の真珠のような照りを加えられた、瞳孔から青い光を放つコピー宇に変態しつつ口外へ抜け出て、晶の外側から内側へ格の入れ子構造のように電流が流れつつ、Y字状に両手を挙げて焦の前へ浮上。
○同・駝C・瘤・中(夜)
肌に呂のような照りのある、瞳孔から赤い光を放つコピー伊、園Dの口から抜け出て、晶の外側から内側へ電流が流れつつ、Y字状に両手を挙げて焦前へ浮上。
○同・コピー駝D・瘤・中(夜)
肌に呂のような照りのある、瞳孔から紫色の光を放つコピー江、園Eの口から抜け出て、晶の外側から内側へ電流が流れつつ、Y字状に両手を挙げて焦前へ浮上。
焦の白濁した紫色の煙状の光が魚等に変形し始める中、阿に目を向けるコピー江。
紫色の光を放つコピー江の瞳孔へ入り込んでいく。
○(回想)痺(夜)
南の空に広がる爆発した駝Dの超新星爆発のような紫色の残光と、もやのような紫色のオーロラ。
駝Dの爆発によって発生した静電気に覆われる南岸の痺と柵。
爆発の残光から遠ざかっていく宇の環の光が上空に伺える。
○同・柵前(夜)
伊、爆発による静電気を受け、髪を逆立たせたまま立ち尽くし、目に残光を映し、涙を流す。
○同・澗(夜)
岸に打ち上げられたかのように、肩から下がプランクトンによる青白い光が伺える水に浸かった状態で空を見上げている江と、水面に滴が落ちたかのように広がる波紋。
西向きに丘に立ち、恥ずかしそうに微笑みながら振り返る江の後ろ姿を東から見る。
○同
駝A・B・C・Dを背景に、上下を2つの環に挟まれた状態で仰向けに浮遊しつつ、どこか遠くを見ながら寝返りを打つように背骨を軸に回転する江。
○同・柵・中間・中(日没)
江、茹でられた蟹をバリバリと食べていると、見られていることに気づき、笑いをこらえつつ恥ずかしそうに顔を背ける。
欠けていた右上の紫系の色とX字状の黒い部分が伺えるステンドグラスも背景に見える。
○同上(夜)
西間で頭は西に、南向きに横たわりながら、窟にあったものと同じ含を手に見つめる江を、導のひものれん越しに覗き見る。
目を閉じ、間を置いて開くと、江の瞳孔から放たれる紫色の光。
焦のガラスが割れる音。
(回想終わり)
○宇宙・駝A・瘤・中(夜)
焦からぎゅうぎゅう詰めのまま溢れ出し、人間級の大きさに膨らむ魚や蟹や海老や水草の形をした光に、おもわず身構えつつも飲み込まれていく阿の視点から見る。
瘤の上部で渦巻く焦の光が膨張して飲み込まれていく園Bの後ろ姿を、床から見上げる。
○同(夜)
駝A・B・C・コピーD、シャボン玉状の呂に覆われた、渦巻く焦の魚等の形をした光にぎゅうぎゅうに満たされていく瘤同士を、徐々に接近させる。
○同・駝A・瘤・呂・焦・中(夜)
ガラスのドーム同士が接触し、ひびが入り、粉々に砕け、呂同士が一体化する様を、渦巻きながら混ざり合う十字の中心程白い焦の光越しに見る。
○同・呂・焦・中(夜)
阿、渦巻く焦の魚等の形をした光が自身の周囲をかすめるように見えないくらいの速さで通過し、元の瘤以上の広さに光が広がり、目を開けると、その先に何かを見つける。
魚等が通過して姿を現す、外側に根のように生えた、内部に格の走る晶が複数伺えるも、完全に肉等が光を帯びていない晶・格と化した腕だとわかる、虹色の煙を漂わせる宇の左腕を、目を閉じたまま抱きしめ、白光を背に立つ江。
反射的に突き出される阿の両腕から放たれる4つの環、江に近づく程、静電気に覆われると共に細かく激しく振動しつつひび割れ、飛ぶ矢のパラドックスのようにどんどん遅くなり、目前でほぼ静止してしまう。
全身静電気と白光に包まれ、痙攣しつつY字状に両手が勝手に挙がっていく阿の後ろ姿越しに、白光に包まれた江の輪郭が伺える。
阿の環に近い部分は緑色の光を帯びていたが、全体的に青い光を帯び始め、混ざる部分は空色に光り始める宇の左腕と、瞳孔から紫色の光を放ちつつゆっくりと目を開け、阿に気づくと、右手をゆっくりと差し出す江。
槍状に変形しつつ江の右腕から飛び出すと、阿の左頬を擦り、焦の光を包む呂に穴を開け、穴を維持するように輪状に環が変形すると、導で覆われた宇が高速で穴から焦内に侵入。
左頬に傷を埋めるような晶が伺えるが、傷がついたことに気づかない阿、江に向かって微笑を浮かべると、背後の魚等の光の中から、環に包まれた宇の右腕が首根っこにかけられ、強い力で外へ引かれる。
静電気に覆われつつ呂に包まれて煙へと消化されて小さくなっていく、呂に穴を開けた輪状の環、右腕以外を導で包まれた宇に引かれて阿がギリギリで潜り抜けると、穴が閉じると共に消滅。
江、右腕を戻し、光が弱まっていく宇の左腕を抱きしめつつ、瞳孔からの紫色の光が弱まると共に、眠るように微笑を浮かべながら目を閉じ、水面のような強い白光に背中から沈むように姿を消していく。
○同(夜)
宇、阿を導で包む。
宇の右腕を包む、ひび割れに覆われた環、輪状に戻った瞬間に大爆発し、根のように晶・格に蝕まれてほぼ晶・格と化した右腕を粉砕しつつ宇と阿を地球へ吹き飛ばす。
○同・導・中(夜)
阿を見つめる宇の右目の瞳孔から放たれる青い光が弱まっていく。
阿の晶内の電流と、宇を見つめる目の瞳孔から放たれる緑色の光が弱まると、導越しに伺える、後光のように虹色の光を放射状に放ちつつ地球から遠ざかる駝A・B・C・コピーDへ目を向ける。
○同(夜明け)
日光が地球を照らし始める中、地球へ落下していく導に包まれた宇と阿。
遠ざかり、小さくなっていく駝A・B・C・コピーD、超新星爆発のように大爆発。
○痺(夜明け)
天を覆う、後光のように虹色の光を放射状に放つ、周縁に色相環のように赤・緑・青・紫色の光と、中心にそれらの混ざった白光が伺える超新星爆発のような残光と、もやのように広がる緑と紫色のオーロラと、かすかな日の出の光と、静電気に覆われる南岸と柵。
○同・柵・西間・中(夜明け)
頭は西に、南向きの中立姿勢で眠る江、駝の爆発の残光を受け、全身から玉虫色の照り返しを放つ。
まるで星の形成のように、黒煙が中心に収束し、黒煙から周縁に分離されるように凝縮されていく放射状の虹色の光が真珠状の各呂内で透けて見えると共に、それらと共鳴するように数多の含のハウリングが聞こえ始める。
眠る江の横顔にさす伊の影。
床に座り、硝子体内を漂う煙のような紫色と赤色のマーブル模様の光が瞳孔から伺える、江の顔を見下ろす伊の顔。
口裂け女のように口が裂けつつ開かれる、真っ赤に光り輝く歯列が伺える伊の口。
(了)
他作品もご興味ありましたら以下より。
もし脚本制作等ご興味ありましたら、
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