日常 (にはしたくない)
目が覚めたら目の前に知らない男がいた
男の腕は私の首を支えている
ドラマでよくあるシチュエーションについに私は出くわした
ひょっとして、と思い体を確認したがちゃんと服は着ていた
理性は保っていたようだ
きのうの私を褒めてやりたい
面倒なことはなにより嫌いなので、さっさと部屋から出ることにした
知らない道を歩き、知らない駅に着いた
とりあえず知っている行き先の電車に乗った
平日昼間の電車は人がまばらできのうを思い出すのにうってつけの環境だった
きのうは1人で飲みたい気分になり、適当に見つけた居酒屋のカウンターで飲んでいた
しばらくすると私より少し年上のサラリーマンが話しかけてきた
最初は薄い返事をしていたが、あまりにしつこく話しかけてくるので、途中で諦めて話し相手になってあげることにした
そこからどうせならたくさん飲んで奢ってもらおうと思い、しこたま酒を流し込んだ
そして男の家に移動し気づけば眠りについていた、というところだろう
知らない駅から30分ほどで家に着いた
生まれてこの方ずっと東京に住んでいるのに、未だに知らない街がたくさんあるのは不思議なものだ
トイレで一息つき、ふと耳を触ると付けていたはずのピアスがなかった
きっと寝る時に邪魔だから外したのだろう
知らない男の家に泊まった代償がピアスだったのだから、いいほうであろう
ごめんね、ピアス
でもあのピアスのために男の家には戻りたくはないの
すると男からLINEが届いた
記憶から消えたきのうの私は一生会いたくもない男に連絡先を教えてしまっていたのか
急に気分が悪くなって真っ赤なゲロを吐いた