空白の大事さ
書道を習っていて一番印象に残っている言葉がある。
墨がない部分を大切にしなさい。
空白の美を大切にしなさい。
完璧主義だった私にとってなんだかひっくり返る言葉だった。
書道は「書く」ものだから黒の部分にだけ集中すればいいと思っていた。
どうやら違うらしい。
墨のない白の部分を大切にすることで作品が全体としてバランスのとれたものになる。
なるほど。
確かに、世の中なんでもそうだなと思う。
現代人は白を塗りつぶそうと必死で働く。
暇なんて恥ずかしい。忙しくて"充実した"生活こそに価値があるんだ。
持てるモノを増やして白を塗りつぶし”豊かさ”を得ようとする。
暇だから時間を“潰す”ためにスマホを見る。
でもバランスがとれずに崩れる。白があるからこそ黒がわかるのに、白がなくなるから目的も夢もそういった"暇な"ときに考えられるものが見えなくなる。
真っ黒になって。
ミヒャエル・エンデの「モモ」を最近読んだけど、そこに出てくるじかんどろぼうも人々から白の部分を奪っていく存在だった。
彼らの色は灰色だった。
じかんどろぼうがいれば彼らから時間を取り返すことができるけど、実際には自分自身の中にじかんどろぼうがインストールされているのだと思う。
空白の時間の大切さ。
コロナ禍で身にしみてわかった。
家にいて時間が多い分、いろいろなことについて調べて興味を持って、自分が好きな抽象的なことについて考える時間も持てた。
それは空白の時間があって、その時間にパッと思いつくものがあるから。
暇があれば動画や音楽、ポッドキャストとか情報を取り入れようと必死になって白を塗りつぶそうとしてるときもあるけどね。
空白があることで、心の余裕があることで、自分を取り戻せる気がする。もちろん黒あっての白だけど。
(白が多すぎると暗くなってしまう話はまた別にしよう)
何もしない時間。
朝ごはん用意したけどまだ食欲がない時間。
立ち止まって見上げる空。
電車でただ窓の外を見る。
たまにはイヤホンを外してみたり?
部屋の角を見つめてみたり、
何も視界に入れないでみたり。
きっとそんな時間が私たちにはもっと必要だと、思う。
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