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AI小説「熟年デビュー」

第一章:まさかのお見合いパーティ  

「お母さん、お願いだから行ってみて!」  
娘の美咲が予約してきたのは、50歳以上限定のお見合いパーティだった。  

「バカバカしいわ。私にそんなこと必要ないの。」  
そう言い返してから、玲子は自分が今どういう状況にいるかを改めて思い出した。熟年離婚から6年。娘も独立し、趣味といえばたまに編み物教室に行くくらい。ほかに何をするかと言えばテレビとスーパー巡り。心のどこかで「このまま終わるのかしら」と不安が揺れていたのは確かだ。  

渋々受け入れた玲子は、60代にして初めての“お見合いパーティー”に参加することとなった。会場のホテルに着くと、煌びやかな飾りとたくさんの白髪交じりの男女の姿に軽く眩暈を覚えた。  

「なんで私がここに…」  

そうぼやいたそのとき、すぐ隣にいた男性が話しかけてきた。  

「こんにちは!今日も株価は安定していましたね!」  
満面の笑みで話し出した彼は、どうやら大の株好きらしい。玲子の返答に関係なく、ひたすら市場動向の話を続ける。「これは失敗だわ」と内心苦笑しながら、玲子は彼の熱弁にうんざりしていた。  

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第二章:第二ラウンド  

株好き男と別れた後の休憩時間、美咲が「どう?いい人いた?」と送ってきたメッセージに「最悪」とだけ返信する玲子。
再び始まった自己紹介ラウンドで、玲子の隣に座ったのは丸眼鏡をかけた70代くらいの男性だった。  

「古畑と言います。趣味は俳句です。」  
玲子は礼儀で微笑んだが、彼もまた独自の世界に没頭するタイプだった。句を詠み上げながら解説を続ける古畑。玲子は愛想笑いに疲れ果てていた。  

そして気づいた。まともな出会いはこの場には存在しないのかもしれない。  

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第三章:不意のアプローチ  

パーティも終盤に差し掛かった頃、玲子が一人でジュースを飲んでいるときだった。  
「お隣、いいですか?」  
聞き覚えのない声。振り向くと、小柄で少し頼りなさそうな男性が立っていた。  

「田村誠一です。」  
見た目は地味だが、田村の口調は穏やかで話しやすい。趣味のガーデニングの話題で盛り上がり、田村の家では毎年バラが咲くという。「本当にそんなに綺麗なら見てみたいわ」と思わず口にした玲子。すると田村が控えめに笑い、「いつか、ぜひ見に来てください」と返した。玲子の心が少しずつ温かくなっていくのを感じた。  

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第四章:新しい一歩  

パーティ終了後、田村とは連絡先を交換した。次の週、彼の誘いでガーデニングフェアに出かけることに。彼の傍らで色とりどりの花を見る玲子の心は、ここ数年では感じたことのないほど穏やかで満ち足りていた。  

数か月後。玲子は田村の庭で咲くバラを眺めながら、小さく息をついた。  

「こんな幸せな時間を過ごせるなんて、思ってもみなかった。」  

田村がコーヒーを運んできて、「今度は一緒に庭作りをしませんか」と提案する。玲子は顔を上げて、しっかりとうなずいた。
63歳。これが新しい恋のはじまりだった。  

(完)

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