あなたの夢は?#蔦葉海蘭
🍰
小さい頃の夢は「ケーキ屋さんになること」だった。
理由は単純明快でいつでもお腹いっぱい好きなケーキが食べられるだろうと思っていたから。
でも現実は必ずハッピーエンドになる子どものアニメとは違った。
ぬくぬく育ったゆとり世代。
中学生になり進路希望の用紙が配られる。
…どこへ行けば良いんだろう?
勉強しなさい、と強く言う親ではなかったけれど友人に誘われたので塾には通うことにした。
私はいつも他人と自分の意見が混ざってしまい本当の気持ちがあやふやだった。
心から好きな服はどれなのか
どんなものが場所が人が心地良いのか
よく分かっていなかった。
きっぱりと決まっていたのは大学に行くつもりはないこと。早く一人前になりたかった。
なんとなくこっち、という道を選び仕事漬けの日々を終え子どもが生まれた。
とても幸せなのに時折知らなければよかったと思うくらいくるしくなることもある。
どうかしたの?
問いかけに言葉はぎゅうぎゅうに詰まって出てこなかった。何度伝えてもとどかない。いつからかラリーは一方通行。
過去を反芻しては陽だまりの記憶を、
もう戻らない時間を再生する。
不毛なのに。そして沈黙。
なぜこんなに…
言葉に縛られてるのかしら?
〰
身体の中に溜まった黒い何かは
いつか消えるのだろうか?
本当はわかってる。それらも含めて私であり消えることはきっとない。
生きていれば悲しいことも嬉しいこともとめどなくやってきて私の中に降りつもっていく。
すれ違い私の前から去っていった人たち。誰かに優しくできる人ほど悲しみを幾度となく経験しているのだ。
波打ち際で長い長い時間をかけて削られ洗われて丸くなる石のように。
今の夢は?と聞かれてもはっきり言葉にできないけれど
子どもたちにとって安心して帰ってこられる場所でいたい。
娘は大きくなったらケーキ屋を経営し私に沢山ふるまいさらに雇ってくれるという。
思いがけずもらった母の日の花束のような。
ある泣きそうな冬の日の朝に差し出されたりんごたちのような。
胸の奥がどわんと震える。
夢を聞かせてくれてありがとう。とてもとても嬉しかった。
夢を諦めないで欲しいなんて矛盾しているけれど。
こんな世界でもどうか笑顔で歩いていけますように、と願ってしまうから…心は
やっかいだ。
🌱
先日引っ越した古い家の庭先に
ひっそりと咲いていた植物。
思いがけず同居することになった
その小さな生命に支えられている。
傷ついてもなお枝を伸ばし地面を這いずり雨粒を受け、そっと花を咲かせる蔦葉海蘭。
🌿
あなたはどこから来たの?
どこへ行きたいの?
そんなのしらないわ
わたしはこの世界の過程の
一つに過ぎないのだから。
すべては変わっていくのよ。
ほら、ね?
🍂
早朝しか日の当たらない小さな庭で
あなたは空へ手を伸ばしている。
私はどこへ枝をのばしているんだろうね?分からないまま今も何かを探してるんだ。
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