兄さん、私は
なんか色々考えて、考えすぎて結局、私は兄とかとは違うんだって思ってしまった。
なんというか、結局私は兄みたいに優秀で秀才なわけではない。
スイミングスクールも私は序盤で無理になってやめたけど、兄はバタフライまで進んでいった。
この時から、もう違いは始まっていたように思う。
私は頭も元々良くないので、兄とは進学先も天と地ほどの差があったし
兄は堕落して挫折したって、結局エリート街道を地で行くような人だ。
私と頭の構造がまるで違う、兄妹だと言ってもまるで違う。
私は、なんかこう、いつもちょっと違う
考え方も、好きなことも、ちょっと違ってた
それに、人間とも兄は上手くやってた、私とは違って器用な人だからだ
兄は、私のことをいつも面白い、と言ってくれたから、私のことをよく分かってくれているんだと思っていた
優秀な兄に認められるのは嬉しかった
人が私を認め、面白がるのは難しいと知っているからだ
だけど、結局のところ兄は私のことを知らない
兄さん、私はね、多分なんかまるっきり違うんだよ
私は自由に生きて、ヘラヘラ笑って死ぬことだけを望んでる
優秀な兄からすれば、思いもしない愚かな発想だよ
私は自己表現を形に残すことだけが大義で、生に縋ることに意味を見出さないような愚者なのだ
金を稼ぐことが嫌いなのだ
分かっている、こんなのは甘えや逃げに見えるということは
それにしても、私にとっては人生は暇つぶしに他ならないし
きっと私は両親や親族、社会が望むような結果を何も残さない人間だ
私はこの世界で、誇り高く純潔に愚直でありたいと願いながら
手を汚さなくては生きていけない矛盾の中で
兄さん、私は
貴方にとってごく当然のような考え方を受け入れるのがとても難しい
私は兄ことをいつも正しいと信じているけれど
私がいつも間違うことも知っているけれど
私は貴方のようにはなれなさそうだということが、日に日に分かるようになってきた
兄は私を誤解している
というか、皆が私を誤解している
綺麗事だとしても、私にとっての正義を守り続けられなければ、それは生に縋るような情けない行為だと私の中ではもう揺らがない決定事項になってしまっている
だから多分、私はそういう残酷な決断や割り切りをすることが出来ない不器用な人間なのだ
そういう人間だから、多分何も結果を出せないと思う
理屈や脳みそで論理立てて物事を考える時、
兄さんの考え方に納得し、共感することが出来る
そしてそれが正しい攻略法で頭のいい人間の考え方だと理解出来る
だけど真似事をしようとすると
私の正義が深く傷ついていく
価値観がぐちゃぐちゃに捻り潰されていく
私らしさが薄まって塵になっていく
兄さん、私はどうすればいいのかな
私は貴方の期待に応えたかったな
だけど私はちょっと違っているから
無理かもしれないね
馬鹿に見えるかもしれないね
ひょっとしたら子供みたいに見えるかもしれない
でも私はいくつもの死にたい夜を超えてきたよ
それこそ必至に
出来ないことや苦手なことを無理やりやって
それで強くなれると信じていたから
でも実際は、ただ弱っていったよ
ある人は、私を根性のない奴だと言うだろう
でも私は好きなことならいくらでも頑張れるんだ本当に
正しさのためなら死ねるんだ本当に
だけど金や目標や世間の目のためじゃ死ねない
そこの違いなんだってことが、今日ハッキリと分かったよ
私、兄のことがとても好きなので
兄と私は違うということを信じたくはなかったけど
でも実際は全然違った、価値基準が
というか同じふうに考えようとすることがとても苦しいってことに気がついてしまった
私は意識高い系にはなれないんだな
考えが合わなくたって、私は兄のことが好きだ
それだけ