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【一口馬主】2024年度キャロットクラブ出資馬検討メモ

血統、測尺、馬体、厩舎、その他もろもろのファクターで足切りして残ったキャロットの募集ラインナップのなかから出資候補を5頭にまで絞ってみました(5頭中3頭が非ノーザンファーム生産馬😲)。他によいなと感じたのは、プライストトゥパーフェクション、コントラチェック、ディーパワンサ、メリート、クルミネイト、ミリッサ…などなど。
ここに挙げた馬はどれも常歩がすばらしい(と自分が思った)馬なのですが、社台サンデーの検討メモにも書いたように、馬の歩様というのはそもそも言語化することが非常に難しいものであるし、俺の馬見の核心の部分でもあるので、ウォーキングから得られた印象に関しては多少ボカして書いているところがあります。あらかじめご了承ください。


9 ラドラーダの23 牡 1/10
父サートゥルナーリア×母父シンボリクリスエス
154.0 179.0 21.0 490 25万円 田中博康

父サートゥルナーリアはリオンディーズと3/4同血の間柄なので、半兄と同じく「Northern Dancer濃度のなるべく低い繁殖牝馬」と組み合わせるとよいのではないかと推測しています(重賞でも好走した賞金上位2頭はいずれもND2本クロス持ちですが…)。本馬はレディブロンド→ラドラーダと2代続けてNDのクロスが発生しない牝馬との配合ということで、サートゥルナーリアとの相性はよさそう。父母と母父の組み合わせからはエピファネイアが出たし、キンカメとラドラーダの組み合わせからはダービー馬の半兄レイデオロが出ました。血統的にはほぼパーフェクト。
馬体を見てみると、胴長短足で曲飛持ちという極端なアンバランスさが目立ちます。1月の上旬生まれなので、これ以上大きく変わることはないでしょう。完成形は(最大限好意的に解釈して)ピッチ走法の瞬発力タイプなのでしょうが、この部分は明らかなウィークポイントだと考えています。とはいえ、薄い皮膚を通して伝わる筋肉の質感や飛節の使い方、および全体的な歩様の印象にはレイデオロの募集時を彷彿とさせるものがありました。というか、個人的にはレイデオロより好きですね。


50 オリエンタルステップの23 牡 2/19
父Ghaiyyath×母父Tamayuz
159.0 180.0 21.9 482 12.5万円 林徹

父GhaiyyathはドイツG1バーデン大賞の14馬身差圧勝をはじめ、芝の中距離路線で活躍。その父Dubawiはヨーロッパの大種牡馬で、わが国にもけっこうな数の産駒が入ってきたものの、大きな成功をおさめることはできませんでした。血統表を一瞥してまず目につくのは、お母さんが持つNayef≒Wijdanの3/4きょうだいクロスでしょうか。両馬の母Height of Fashionはバゴの父Nashwanの母でもあるし、さらにその母Highclereはディープインパクトやブラックタイドの3代母でもあるので、このクロス自体はプラスに働きそうです。さらに本馬の代では、AllegrettaとSadler's Wells≒NureyevとMr. Prospectorが共通するGalileo≒Tamayuzのクロスが発生しています。この他にも、Shareef Dancer≒ダンシングブレーヴ≒Bluebird≒Al Ishq≒ラストタイクーンといった同タイプのND系多重クロスや、血統表を4分割したすべてのラインにミスプロが入るなど、全体的に相似配合気味の血統になっている。「ちょっと重ためのサトノクラウン」みたいな感じでしょうか。
するてえと俄然気になってくるのが日本の馬場への適性ですけども、個人的にはちょっと厳しいのではないかと思っています。脚さばきは案の定というか鈍重かつパワフルで、いかにも欧州の芝向きという感じがするし、後肢の動きからもいまいちバネを感じない。しかしながら、それらのマイナス面を補って余りあるのが馬体の素晴らしさでしょう。くだくだ述べませんが、今年のキャロット募集馬の中では文句なしにナンバーワンなのでは。


58 サークリングIIの23 牡 3/23
父キズナ×母父Galileo
153.0 177.0 20.8 444 14万円 斉藤崇史

GalileoやデインヒルやMr. ProspectorやMill ReefやAbernantなどなど、お母さんのサークリングIIはカタログの解説にもあるように、代々重ね合わされてきた種牡馬の選択が非常にすばらしく、血統表を見ているだけでもため息がこぼれてしまう。しかしながら、産駒の成績を見る限り繁殖牝馬として成功しているとはとても言いがたい…。自身は現役時代に2400mの世代重賞ノーブレスSで3着した馬ですが、ことによると子供には欧州の芝向きのパワフルさやスタミナを伝えてしまうタイプの牝馬なのかもしれません。キズナ産駒を深掘りした記事にも書きましたが、この種牡馬は短距離やパワータイプに偏った繁殖牝馬と組み合わせることでもって数多くの大物を輩出しています。1000mのG1ナンソープSの勝ち馬を母に持つ今年の皐月賞馬ジャスティンミラノはその典型例と言ってよいでしょう。本馬はデインヒルやミスプロのスピード、およびBuckpasserのクロスやBold Reasonのパワーが前面に出てくれば楽しめそうなのですが、成功パターンとは微妙に違うため、血統的にはなかなか推しづらい馬ではあります。
それじゃあなんでこんな馬を取り上げたんだ、という話になってくるわけですけども、ひとたび馬体を見てしまえば印象が一変するはずです。少し脚が短めで重心が低いものの、クビ付き、胸の深さ・狭さ、腹袋の力強さ、腰の高さ、トモのつくり、などなど基本的な馬の形には非の打ち所がない。ウォーキング動画を見ても、四肢を目一杯に投げ出してゆったりと歩くのだけれど、その一方で体の軸はほとんどブレない。そしてそこには(今のところ)Galileo的な重さのようなものはかけらも見当たりません。むろん、キズナ特有のキレなさや母系の呪縛から完全に逃げ切ることはできないでしょうが…。


80 ティールグリーンの23 牡 2/11
父リアルスティール×母父Scat Daddy
159.5 177.0 21.2 472 10万円 高野友和

母父Scat Daddyと母母父Regal Classicの間で19年ズレて、母母父Regal Classicと3代母父Marshua's Dancerの間で17年ズレる。おまけに母父のScat DaddyはヨハネスブルグとMr. Prospectorの間で29年ズレています。後者のほうはGun Runner産駒でいうところのEcho Zuluのパターンですね。といっても、本noteをご存知ない方には何のこっちゃわからないと思います。詳しくはリアルスティール産駒とGun Runner産駒の成功パターンについて解説した記事を読んでみてください。そこで使った用語に当てはめるなら、本馬ティールグリーンの23は「世代ズレ」の条件は満たしているのだけれど、「世代ねじれ」のほうは満たしておらない。そのあたりが不満ではあります。さらにもうひとつ、リアルスティール産駒には、母系を欧州・日本的な血統で固めると芝馬に転び、母系をアメリカンな血統で固めるとダート馬に転ぶ、という顕著な特徴があります。前者はレーベンスティールとオールパルフェ、後者はフォーエバーヤングとチカッパですね。したがって、母系をオールアメリカンで固めた本馬は現状ダートに出る確率が高いものと思われます。
上でリンクした記事の中にはフォーエバーヤングの1歳時の写真を載せているのですが、どちらかというと祖父ディープインパクトを彷彿とさせる薄作りの馬体で、あそこから一流のダート馬になることを予想できた人はあまりいなかったのではないかと思います。これは「ダートの一流馬は必ずしもダート馬っぽくなくていい」という俺の持論を裏付けるものでもあります。ようするに、若い時分には十分な馬体のフレームと伸びしろさえあればいいのであって、必ずしもムキムキしている必要はない。再三言っているように、筋肉なんてものは育成段階に入ってからいくらでもつけられるわけですからね。
さて本馬はというと、前腕部に若干の筋肉がついてしまっているものの、雄大なフレームと未発達の筋肉を擁したすばらしい馬体をしています。前さばきはちょい硬めですけども、肩がきちんと出せているのでOK。薄い皮膚から透けて見えるトモの筋肉の質感がすごく好みですし、全体的にハイレベルな歩き方をする馬です。ただし、将来的にダート馬になっていくことを考えると、クッション性の高すぎるサスペンション部分はけっこう致命的かもしれません。


82 スウィートショットの23 牡 3/4
父アドマイヤマーズ×母父Trappe Shot
152.5 173.0 20.3 434 11万円 清水久詞

血統表には見慣れない名前の種牡馬が並びますが、母の父Trappe ShotはTapitの直仔で、近親にはゼンノロブロイの母父としておなじみのマイニングがいます。母の母父BuddhaはUnbridled's Song×Storm Catの超良血馬で、ファミリーラインをさかのぼっていくとDamascusの母Blade of Timeにたどり着く。面白いのが本馬の母スウィートショットにPrivate AccountとGilded Time経由で都合2本のDamascusが入ること。Blade of Timeの3本クロスになるわけですね。でもって、いま名前を挙げた馬たちのことごとくが「母系に潜って力を発揮する血」であることもポイントです。
ちなみにこのスウィートショットという繁殖牝馬には、初年度から3年連続でダイワメジャー系の種牡馬が種付けされています(ダイワメジャー→ダイワメジャー→アドマイヤマーズ)。この選択はおそらく「ダイワメジャーとのカップリングがベストだから」という、生産者の確固たる信念に基づいて行われたものだと推測されます。現にダイワメジャーとUnbridled's SongとStorm Catの組み合わせ(Buddhaと同じ)からはカレンブラックヒルが出ているし、アメリカンな血統との組み合わせからも数多くの上級馬が出ている。ただし、個人的にこの繁殖牝馬との配合で真価を発揮するのはダイワメジャーではなく、その息子のアドマイヤマーズのほうだと思っているんですね。というのも、アドマイヤマーズは母父のMediceanに若干のアメリカ血統が入るものの、おおむね欧州的な要素が強く、アメリカン方面のラインをほとんど未使用のまま残しているからです。おまけにダイワメジャー産駒の賞金上位馬の多くもアメリカ血統と欧州血統をバランスよくミックスしています(セリフォスやレシステンシア)。もちろん現段階では単なる仮説にすぎないわけですけども。
血統の字面のわりに馬体が小さいのは気になるし、肩の出もちょい硬めで、しなやかに柔らかく歩くようなタイプではないのですが、それ以外の部分は文句のつけようがない。とりわけ好みなのが強靭なトモを基点とした後躯の動きです。小気味よくたわみつつも軸が一切ブレない背中や、地面を力強く捉えて後ろに蹴り出し、そのまま前肢を追いかけてピュッと戻っていく飛節の使い方やなんかは出色といってよいでしょう。

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