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占星術が教えてくれるもの


刺激は突然やってくる
いつだってそう

意識的ではないにしろ遠ざけてたものが身近にやってきたのには
何か意味があるんだろうって思う

占星術

アレックスに出逢わなければ
きっと一生縁がなかったもの
彼が占星術をやっているのを知ったとき
こういう時が来るのは予想できたはず


いや
たぶん
こうなるって知ってたんだわたしきっと
どこかで

でもあまりにも急すぎるし突然過ぎる
アレックスと出逢ってからだって
まだひと月も経ってない



「え、あ、、、今はまだやってません」

今はまだ!

「そうなの なぜかやっている気がしたの
もしやるなら、きっといい占星術師になる気がするわ
わたしの感 結構当たるのよ」

「ありがとうございます」


女性はそう言い残して
ゆっくりと歩いて外へ出ていった

わたしは何て言ったらいいのかわからなかった
思い出したようにアレックスをみると微笑んでる
でも何も言ってこない


彼は何も強制してこない
いつも我慢強く待っている

たとえわたしが何の反応もしないようなことでもプッシュしたり探ったりもしない
それが占星術のことじゃなくても

凄いと思う

待つのは相当つらい
自分が望んでいることを待っている時は特に

占星術がわたしの中でどんどん膨らんできてる
興味を持ったってアレックスに言ったらきっと凄く喜ぶだろうな

アレックスに喜んでもらえるのは嬉しい
でも喜んでもらうために興味を持ってないものに手を出すのは違う気がする


本当に興味がないの?

わからない
それすらもわからなくなってきた

でもわたしはきっと占星術にたずさわることになる
渦にのまれていくみたいに自分の意思とは関係なく物事が進んでいく
それがわかる
こう言うのをみんなは「運命」って言ってるのかも知れない

結局その日
アレックスには何も言わずにわたしは帰った


家で1人でいるとあの女性の言葉が頭の中で繰り返される

あの時 咄嗟に
今はまだ
っていう言葉がつい出てしまった
それをどう受け止める?

自問自答を繰り返すたびに占星術が大きな存在になっていく

占いのことなんて全然知らないのに
なんでこんなに気になるんだろう


わたしは潮風にあたりたくなって海へいった

ものすごく暑かった昼間の気温は下がらず夜になっても暑いままで
風も落ち着いてしまったから
肌に空気がまとわりつくようなベタつく夜だった

それでも海は開けているからいくらか心地良く
空高くにいた月はまんまるに近かった


満月?
少しだけまだ満ちてないみたい

どさっと砂浜に座りそのまま大の字に寝転がって
月に向かってつぶやいた


どうしよう
どうしたらいいの?

占星術を覚えて何か役にたつの?
わたしの役にたつの?


じっと月を見つめていた

波の音だけが響いてくる


向こうのほう
赤く点滅したものが通り過ぎていった

飛行機だ

こんな夜遅くに飛行機に乗ってどこかへ行く人がいるんだ

行くのかな 帰るのかな
どちらにしたって何か行動を起こした人が乗る乗り物


わたしは?


胸がうずく
身動き取れない時に感じるもどかしさと
決めることの出来ない自分の不甲斐なさを
同時に感じながらもう一度月を見つめた


お願い
何か言って

わたしの背中を押して
どっちでもいいから


ムーンストーンをぎゅっと握りしめた

引いていくさらさらとした波の音が一瞬消え
次の瞬間大きな波が大きな音を立てて崩れた

その時
白い光を放っていた月が一瞬黄色くなった気がした
気のせいかも知れないけど

わたしは目を閉じて
一度大きく深呼吸をしてから
ゆっくりまた目をあけた



月の子
ムーンチャイルド
こころに従いなさい
恐れててもいいから
あなたにはあなたを守ってくれる存在がいる


ぱぁっと言葉が浮かんだ

その言葉を自分で繰り返し繰り返し
頭の中で呟くと涙が出そうになった


だよね
そうだよね

今まではこころを閉じ込めてきたんだ
これからは、、

役に立つとか立たないとか
そういうので決めたくない


わたしは起き上がって裸足になり
足を水にひたした



次の日の午後Moonchildへ行くと
アレックスは何事もなかったような風だった
わたしだけがいろいろ気にし過ぎなのかも

いつものように石たちを愛でて身体をこの場所に慣らし終えたあと
テラスのテーブルに座ってアレックスを待った

アレックスが来る前にオニキスがやってきた
珍しくすぐに寝転ばずにわたしの目をじっと見つめてにゃあと言ったけど
口だけ開けて声には出てなかった
それが可愛くてつい笑ってしまった

笑ったのをみて満足したのか 喉を少し鳴らすと丸まって寝始めた
わたしは優しくそっと背中を撫でた
気持ちよさそうだ

アレックスがやってきた
オニキスの向こう側に座ると彼もオニキスの背中を撫でた


「すっかり仲良しだね」

「アレックス? 星占いってなんのためにやるの?」

「何のため? 何のためだろうね」
と言って彼は笑った


「茶化さないで教えて
きっと何か聞きたいことがあったらその答えを教えてくれるんだろうけど、、、」

「答えは教えてくれないよ」

「え?」

「答えは自分で出さなきゃいけない
勘違いしてる人はたくさんいる
だから依存してしまうのだけど」

「じゃあ何のために?」

「知りたいことの洞察を得るため」


洞察?


「それを得て自分で判断して決めて行動する
答えだと勘違いしてそれをもとに生きていったら
それはもう自分の人生じゃない

人は自分の人生を生きなきゃいけない
僕は僕の人生をアンバーはアンバーの人生を

占星術は洞察を与えてくれる
そしてそれはいろんな気づきと成長に繋がり
強さになり 支えになる」


気づき
成長
強さ
支え

どれもわたしが今必要としてるもの

このどれも
何か他のものから得ることがだって出来ると思う

でもわたしが今
理由はわからないけどわたしの何かをつかんで離さないのは
占星術だ

隣にいるアレックスの方に身体を向けて彼の顔をみた
久しぶりに近くでちゃんとみる碧色の綺麗な瞳

胸のムーンストーンに手を当てながらこう言った


「アレックス、わたし星占い、、占星術のこともっと知りたい」



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