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今は片付けのプロの私が10年以上前に初めて「ごみ屋敷」を体験した時の話

ーー閲覧注意ーー
本件には表現に衝撃で嫌な思いをする方もいるかも知れないので汚い部屋の表現を見たくない方は閲覧しないでください。

私が始めて「ごみ屋敷」に足を踏み入れたのは、15年ほど前になる。
ごみを片づける営業として、その部屋を訪問した。

詳しい事は書けないが、ご依頼主は不動産屋さんで、数ヶ月の家賃滞納の末、夜逃げをした若い女性の一人暮らしのお宅との話だった。

私は今ほど「ごみ屋敷」に慣れていなかったので、かなりインパクトの強い案件だった。

部屋はワンルーム、玄関を開けると床にはごみが散乱していて、腐ったような、カビが生えたような異臭がした。
玄関のすぐ左がキッチンのシンク、右手にドアが二つあって、お風呂とトイレだとわかる。

電気が止められているので、廊下は薄暗く、とはいっても2m程度の先に、部屋が見える。もちろんその先が居住空間になるのだが、室内にはモノが波打っているような状態なのがわかる。

居室の部屋はカーテンを閉めているが、うっすらと窓からの灯りで室内の様子がなんとなくわかるが、それ以上、窓まではたどり着けない。足を踏み入れる事ができない。

波打っているごみと言うのはごみ屋敷でよくある光景なのだが、ごみを捨てないので、衣類も購入した袋も使い終わったごみもそこら辺に置き続けるのでなだらかな層になった形で、その後の私が何度も目にする事になる。

 今ではごみ屋敷を見ても、タイプ別がわかったり、床が見える、膝丈、腰丈、肩より上、などの表現ができるが、その頃は室内が波打ったようなモノの堆積が放置されているのが確認できたに過ぎなかった。

 手前のトイレのドアを開けると、トイレはもちろん掃除をしていないので、とにかく汚い。トイレを使う気も起きないほど汚い。
そのトイレ内には埃も汚れも溜まっているが、何より驚いたのが使い終わった生理用品を広げたまま積み重ねていたのだ。

正直、ギョッとした。「え?なんで?・・」そして男性に見せるのが恥ずかしいと思った。同じ女性として私が恥ずかしいと思った。

ごみ屋敷の見積もりで、室内に長く居ようとは思わない。
部屋から外に出て、深呼吸はしたと思う。
その後、担当の方との話は進み、作業日を迎えた。

作業当日は車両の手配を行い、作業スタッフを集め作業に入った。

私は何より
「あんなトイレは男性に見せられない、あそこだけは女性の私が片付けないと・・・」
そう思ってスタッフを外で待たせておいた。

とはいっても、男性スタッフは慣れているのか、私の作業が遅いと思ったのか、「俺たちやるから、大丈夫ですよ」と声をかけてくれた。

私はトイレの作業を半分も終わらないうちに、男性が入ってきてドンドン作業が進んでいく事になった。

私は内心ビクビクしながら作業していたのだろうか、
「なんでこんな事になっちゃったんだろう、」
「どんな気持ちでここで暮らしていたんだろう」
「親御さんは巣立った子供のこんな様子を、どう思うだろう」
と、考えても仕方ない事を考えてしまっていたのかも知れない。

作業は淡々と進んだ。
室内からは、包装容器、衣類、期限切れ食材、食べかけ、やりかけ、脱ぎっぱなし、起きっぱなし、手入れをされずに散らかした層を掘り起こすような作業をした。
ごみ袋も出てくる。
片付ける気はあるけど、買ってきても片づけない。
今ではよくある「ごみ屋敷あるある」だ。

片付けが進んでいくと、部屋の左側にはベッド、ベッドの上の荷物とその前の床がごみで同じ高さになっている状態な事がわかった。

正面には棚があって、棚の前にはごみに埋もれてブラウン管のテレビが出てきた事を覚えている。

窓までたどり着いたら、カーテンを開け、窓を開け、空気の入れ替えをした。澱んでいた空気が埃が舞うけれども、少し息が出来るようになった記憶がある。

その後、片付けはなんとか無事に終わったのだったが、
ごみや荷物を退けた後に、部屋にあったベッドは「お姫様ベッド」だったのだ。ヘッドレストの部分が金属のおしゃれなベッド。値段が高いかどうかはわからないが、きっとこの部屋で一人暮らしを始める時は、素敵な暮らしを夢見ていたんじゃないかと想像できた。

それを片付けずに、物を散乱させ、家賃を滞納し、「夜逃げ」と言う選択をするまで、どんな思いでこの暗い部屋で過ごしたんだろう?
そう思うと、なんだかいたたまれない気持ちになった。


夜逃げした後も、どこかでまた片付けない生活を送っているんだろうか?
晴れた日の片付けで、そんな事を思ったのだった。

片付けが出来ていれば、そんな結果になる事もなかったのではないか?
ちゃんと片付けできる人になろう。
子ども達も、ちゃんと片づける大人になって欲しい。

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