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2021年、眠りの中のホテルニューアカオ

2021年、秋。例のウイルスが蔓延する中、熱海にある老舗ホテル「ホテルニューアカオ」が眠りについたというニュースを聞いた。
と、思っていたら最近(2023年7月)になってリニューアルオープンしており、ガチで眠っていただけだったことが発覚した。
発覚記念に、休眠中のホテルを訪れた時のことを振り返ろうと思う。

当時、宿泊業の廃業にともない、バブリーで豪奢な建築で有名なホテルニューアカオはアートスペースとして開放され、この機会にと多くの人が足を運んでいた。
SNSに掲載された数々の館内写真は、役目を終えた建物の哀愁が全面に漂った静かな気配に満ちており、廃墟写真を見るのが好きな私は「好き…」と思った。
合法的に安全な廃墟に入れて写真も撮れる機会なんてめったにないので、私は喜び勇んで熱海に向かったのだった。

ホテル近辺

ホテルは無料で開放されていた。
営業中の新館が受付になっており、従業員の男性一人が窓口に立って見学の流れを案内していた。この案内がけっこうな長さなのに、次々と来る人間たち一人ずつに喋っていたから、男性は酸欠っぽくなっていた。本当に大変そうで申し訳なかったのを覚えている。

ホテルが解放されているのはアート展示イベントの一環だったので、新館にも作品があり、それを見てから階段と廊下を渡って旧館へ移動した。

まず導かれたのはダンスホール。襞のある真っ青なカーテンとマーブルの柱が美しい。

一応ややこしめの順路が設定されているのだが、(エレベーターで押すボタンや部屋番号などが指示されている)パンフレットが全て捌けてしまっていたので、何も分からず勘で歩き回った

階段を上がって、最上部のロビーへ。
どうでもいいが、ここのソファーでパソコンを開いてちょいとコワーキングしているっぽい人がいてごく単純にいけ好かなかった。(記憶力が偏っている)
ホテルの関係者だったらごめんなさい。

エレベーターに乗って、最下部へ。
窓の外に海が押し寄せていて、無性に異様な雰囲気を感じた。
もともと海を見せるための立地なのだろうが、海に呑まれて廃業していくホテルなのだと言われた方が違和感がない。

廊下を抜けると、水を抜かれたプールがあった。

通路を引き返して反対側の順路を進んでいくと、劇場のように広いダイニングルームがある。
ここにはボロボロのラジオから聴こえてきそうな形容し難い雰囲気の楽曲がかかっていて、人がいなければ相当怖い感じに仕上がっていた。

しばらく曲を聴いていると、なんとなく子守唄を聴かされているような感じもしてきた。
この時の私は、建物が見ている夢の中にいたのかもしれない。

上階の客室フロアをうろうろする。
2フロアをぶち抜くスイートルームも見学できた。
今後の人生では縁がありそうにない。

茶室付き!

客室は全てが開かれている訳ではなく、エレベーターが所定のフロアにしか止まらないようになっており、かつ限られた部屋だけ鍵が開いていた。
先述の通り本来は部屋を回る順番がパンフレットに記載されているのだが、私は持っていなかったので、人の流れやネットで収集できる範囲の情報を頼りにさまよった。
中には映像作品が上映されている部屋もあったので、見たりした。

廊下は照明が落とされていて、本当に眠りについているような佇まいだった。
私が行ったのは平日だったので、完全に人気が無くなるタイミングもそこそこあった。一人でいると自分が亡霊か何かになったような気分だった。

そんな感じで満喫した。
再オープンした今では煌煌と灯りが灯されていることだろう。
逆に一時期廃墟風になっていたことの方が珍しい思い出になっていくのだろうか。
今度は醒めているホテルニューアカオにも行ってみたい。

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