脚本「海を填んで(うずんで)」
【脚本概要】
原案:葉隠梅太郎
脚本:アメージングだいや
上演された公演:演劇集団あまちゅあでいと第二回公演「ボクらなりの告白」
公演日:2019年5月11日(土)
尺:55~65分
人数:4人
【本文】
開演。
MEOP、FI。
シュン以外の3人、板付き。舞台中央にてそれぞれ気まずそうにしている。
舞台には長机、イスが4脚(その内何脚かには既に役者が座っている)。
ダイキ「…」
アカリ「…」
リサ「…(気まずそうに辺りを見回す)」
気まずい空気が流れている3人。
シュン、少し慌て気味に舞台入り。
シュン「すみません…。」
ダイキ「あ、はい…?」
シュン「あれ…こちら、『マユミ』さんのイベント会場…でお間違いないですよね?」
ダイキ「ああ、はい…そうですね。」
シュン「良かった~。間違えてたらどうしようかと思った。ちょっと遅れてすみません、失礼します。」
シュン、空いているイスに座る。
シュン「…」
ダイキ「…」
リサ「…(はにかんだ様子でシュンにお辞儀する)」
シュン「(リサに)あ、ども…。」
ダイキ「(リサとシュンのやり取りを見て気づいたように)あ…今日はよろしくお願いします。」
アカリ「よろしくお願いします。」
シュン「いやあ、こちらこそ。よろしくっす。俺、シュンって言います。あ、これフライングかな?まあいっか、へへへ。」
リサ「シュンさん。私は…リサです。」
アカリ「アカリです。」
ダイキ「ダイキです。よろしく。」
シュン「うす。なんかお互い、ずっと『よろしく』ばかり言ってますね。」
リサ「確かに。」
ダイキ「まあ、まだ慣れてないのもあるし…お互い緊張してるから。しょうがないですよね。」
シュン「そりゃそうだ。皆さん、こういうイベントに参加するのは初めてですか?」
ダイキ「そうですね、俺は初めて…かな。」
シュン「女子陣は?」
アカリ「私も初めてです。」
リサ「私も。」
ダイキ「シュンさんは何度かあるんですか?」
シュン「…いや、俺も初めてっす!」
ダイキ「…あ、そうなんだ?なんだ、口調的にベテランかと思った。気を遣って損したなあ。」
軽く笑う4人。さっきと比べて空気が軽くなっている。
ダイキ「…それにしても、他の方々遅いっすね。」
アカリ「そうですよね、今日参加される方…20名くらいって言ってましたよね。全然いない…。」
ダイキ「ね。さすがにちょっと心配になるなあ。」
シュン「…そうだ。運営代表のマユミさんはどちらにいるんです?俺まだ挨拶も受け付けもしてないから、他の人が来て混む前に会っておきたいんだけど…。」
リサ「まだ来てないんです。」
シュン「…え?来てない?」
リサ「…はい。」
シュン「え…来てないっていうのは、その…ここに?」
リサ「(頷く)」
シュン「それはほら、あの…例えばどこか…コンビニとかに買い出しに行っててまだ戻ってこないとかではなく…?」
リサ「…はい。そもそも来てないです。…私たちもまだ会えてなくて…。」
シュン「…いやいや、それはさすがにヤバくないっすか?イベントの代表者がいないって…中止レベルのトラブルっすよ。」
ダイキ「まあ…そうなんだけど…。」
シュン「電話とかはしたんすか?ほら、参加申し込みした時に緊急連絡先って事で、電話番号がメールで届いたじゃないっすか。」
アカリ「さっきシュンさんが来る前に何回かかけてみたんですけど、ダメ。出ませんでした。」
シュン「ええ~…なんだそれ…。大丈夫かよ…。」
リサ「やっぱり、電車が人身事故で遅れてるとか…あったんですかね?もしくは何か、事故とか…?」
シュン「いやあ、でも仮にそうだったとしても参加者に連絡はよこすでしょ。」
ダイキ「…その『参加者』も、ほとんど来てないし…なあ。」
リサ「…。」
アカリ、机の上に置かれている手紙に気が付く。
アカリ「あれ…何これ?」
リサ「?」
アカリ「…手紙?さっきはこんなもの無かったのに…?」
ダイキ「…?(アカリから手紙を受け取って)開けてみようか。」
アカリ「…はい。」
ダイキ、手紙の封を切る。
ダイキ「…え。」
シュン「?何だったんですか?」
ダイキ「…マユミさんからだ。」
リサ「え?」
ダイキ、マユミの手紙を音読する。
ダイキ「『ダイキ様、シュン様、アカリ様、リサ様。本日は、恋活イベント・ゼロミーティングにお越しくださり誠にありがとうございます。私、本企画の主催者でございますマユミと申します。皆様とはメール上でしかご挨拶できておらず、失礼をお許しください。』」
シュン「『失礼』って…(苦笑)」
ダイキ「『さて、本日のイベントですが、そちらの森林公園会場では、今お集りいただいている皆様4名で行っていただきます』…ぅぅうう!?」
アカリ「ええ!?」
リサ「ど…どういう事…?」
ダイキ「『今回の恋活イベント・ゼロミーティングは、男女それぞれ10名ずつ・総勢20名の方にご参加いただいております。その20名を、参加申し込みの際にご協力いただいたアンケートを元に相性などをこちらで判断し、4名×5組のグループに分けさせていただきました。最新の統計情報やマーケティング戦略を取り入れた新感覚のマッチング恋活イベントをお楽しみいただければと思います。』」
アカリ「斬新すぎるでしょ…。」
シュン「そういえば確かに、やたら項目の多いアンケートあったなあ…。」
リサ「ああ…ありましたね。『理想の恋人像』やら『過去の恋愛の失敗談』やら…。『絶対に本心でお答えください』って注意書きが少し怖かったの、覚えてます…。」
ダイキ「『参加者の皆様の邪魔をしない為に、本日も私はそちらにはお伺いいたしません。本日のプログラム等は別紙に記載しておりますので、ぜひ皆様一丸となって本企画をお楽しみください。それでは皆様にステキな出会いがございますように。ゼロミーティング企画運営・代表マユミ』…。」
リサ「…。」
シュン「…そりゃ、他の参加者も来ない訳だ。」
ダイキ、封筒からもう一枚便箋を取り出す。
ダイキ「これ…今日のプログラムだ。時間ごとにやる事が書いてある…。」
ダイキ、すぐそばにいたアカリにプログラムを見せる。
アカリ「自己紹介、アイスブレーク、アプローチタイム、フリータイム…。まあ、何て言うか、よく分かんないけど…イメージ通りの内容ですね。」
リサ「な、なんかちょっとまだビックリしてるけど…イベント自体はチャンと存在してるって事ですよね?」
ダイキ「まあ、そう…だね。」
リサ「な、なるほど…。まあ詐欺とかではないみたいで、それは少し安心しましたけど…。」
シュン「…ホントに謎だけど…まあ、そしたらぼちぼちやってみます?プログラムとかあるなら、それに沿ってやれば良いんだろうし。もうお金も振り込んじゃってるから、せっかくなら楽しみたいですしね。」
アカリ「確かに。せっかくならね、楽しまなきゃ損ですよね!」
ダイキ「…まあ、じゃあ…よく分からないけどやってみますか。」
4人、それぞれ机の周りのイスに座る。お互い向き合う形で座る。
アカリ「じゃあ、改めて…」
シュン「自己紹介、しますか。どういう順番で行きます?」
リサ「…あ。」
シュン「ん?」
リサ「プログラムの『進行について』ってところに、『女性から自己紹介をしてください』って…書いてあります。」
ダイキ「細かいなあ、そんなところも指示があるのかあ。」
リサ「他にも色々注意書きありますよ。自己紹介は2分以内とか、嫌いなモノを必ず一つは発表する…とか。」
アカリ「嫌いなモノ?」
リサ「うん。…なんでなのかは分からないけど。」
ダイキ「…それも、いわゆる…『最新の統計情報』…とやらなのかな?」
リサ「どう…なんですかね?」
シュン「まあ、じゃあ女性陣から始めるって事で…。二人の内、じゃんけん勝った方から行きましょっか。」
アカリ「分かりました。」
リサ・アカリ、じゃんけんをする。アカリが勝つ。
アカリ「あ…じゃあ私から、ですかね。」
ダイキ「あ、俺時間計りますよ。」
アカリ「ありがとうございます。」
ダイキ「…(スマホのタイマーを準備して)それじゃ、用意は良いですか?」
アカリ「…え、あ…はい!」
ダイキ「…じゃあ行きますよ。…3、2、1、スタート!」
アカリ「…はい、えっと…名前は、さっきも言ったけどアカリです。あ~…何言えば良いんだろ…ヤバい、ボキャブラリーが…」
シュン「とりあえず…年齢とか趣味…とか?」
アカリ「あ、あのサイトでは20歳って言ってます、とりあえずそれでお願いします。趣味は漫画とかアニメを見る事、かな。後はたまに走ったりもします。体動かすのも好きで、よく変な動きをして友達に笑われます。」
シュン「学生さん?」
アカリ「あ~…そうですね、学生です。なんか色々勉強してます。そっちは得意ではないので、基本バカです。あと…あ、で嫌いなモノですよね。え~なんだろう…あんま嫌いになるって事が日常でないから、パッと思い浮かばないけど…。あ、幽霊とかお化けはヤバいです。そういうホラー系は嫌い…というか絶対見たくないです。あと、遊園地とかでお化け屋敷に行って、怖くもないのに『キャー』とか言って男に縋りつく女が大嫌いです。…今時間どれくらいですか?」
ダイキ「ん、まだもうちょい大丈夫。」
アカリ「あ…ありがとうございます。えっと…あ、あと嫌いなモノは人身事故です。東武東上線は人身事故が多いので、勘弁してほしいです。」
シュン「ははは、それは分かる~!東上線はマジで多い!」
アカリ「えっと、あと…」
リサ「好きな異性のタイプとかは?」
アカリ「あ、タイプ…はよく分からないけど、好きな仕草があって…。なんて言うかこう、男の人が袖をまくった時の血管?が見えたりするの好きです。」
ダイキ「時間、そろそろ危ないっす!」
アカリ「あ、じゃあ…こういう会に参加するのは初めてで緊張してますが、よろしくお願いします!」
アカリ、大きく頭を下げる。他の3人、拍手。
アカリ「ああ~、緊張した~…。」
ダイキ「トップバッターだもんね、お疲れ様。時間ちょうど良かったよ!」
アカリ「あ…ありがとうございます…。」
リサ「次私かあ~…。確かに緊張しますね、こういうの…。」
シュン「頑張れ~。」
リサ「…(話す内容を頭に思い浮かべて)はい、ありがとうございます。それじゃ…時計、お願いします。」
ダイキ「…じゃあ、行きま~す!3、2、1…スタート!」
リサ「よろしくお願いいたします、リサです。年は20歳で、趣味はカラオケに行く事です。歌うのは結構好きで、1人でもカラオケ行っちゃいます。歌のジャンルは…割となんでも好きだけど、自分で歌う時はボカロをよく選びます。」
ダイキ「ボカロ…って言うと…」
シュン「初音ミク…とかじゃないっすか?俺もあまり詳しくないけど…。」
リサ「そうですそうです、そんな感じです!他にも色々なキャラクターがいて、楽曲となるとまたさらにたくさんの種類があるんです。調べると本当に面白いですよ、オススメです!」
リサ、ハッと我に返る。
リサ「あ…すみません。ちょっと話が逸れちゃいましたね…。えっと、嫌いなモノ…苦手だったらすぐに挙げられますが、嫌いとなると…難しいですね。んー…食べ物だと、ブロッコリーと納豆がダメです。納豆はあの食感がダメで、味は平気なんですけどね。納豆味のうまい棒とかはむしろ好きだし。」
アカリ「面白いですね。」
リサ「へへ、はい。…あ、食べ物以外だと人の好みとか考えを否定してくる人は嫌いです。自分の気持ちを押し付けてくる人というか、そういう人とは仲良くなりたくないなって思います。私も結構自分の意見をはっきり伝えるタイプなので、タイプ的に合わないのかもしれないです。」
シュン「好きな異性のタイプとかは?」
リサ「え…っと、ちょっと…分からないです…。実は中学・高校と女子校で過ごしてきまして、今まで男の方と付き合ったことが無いんです…。だからこう、イマイチピンと来ないというか…すみません、ふわふわしていて。」
ダイキ「…あ、お話し中ごめんなさい、もうすぐ時間です!」
リサ「分かりました、ありがとうございます。それでは、不慣れですが改めてよろしくお願いいたします!」
リサ、ペコリと頭を下げる。他の3人、拍手をする。
リサ「っ、はあ~。なんとかなって良かった~…。」
アカリ「分かります、終わった後の解放感ものすごいですよね。」
リサ「はい、ホントに。その気持ちも分かります。」
シュン「良いなあ、俺も早くそっち側に行きたい。今めちゃめちゃ緊張してる…。」
アカリ「男性方も、じゃんけんで勝った方から行きますか?」
シュン「あ、ダイキさん…先やります?」
ダイキ「いやいやあ、シュンさんから、どうぞどうぞ。」
シュン「あ、じゃ遠慮なく。」
ダイキ「なんですかそれ、先にやりたいんじゃないですか。」
シュン「へへ、そういう事っす。だって嫌でしょ、一番最後なんか。絶対余計な緊張しちゃいますもん。」
ダイキ「ああ、そういう事か、確かに!確信犯じゃないですか!」
シュン「もう遅いっす、『どうぞ』って言ったのはダイキさんなので。お言葉に甘えま~す。」
ダイキ「はいはい、どうぞどうぞ!」
アカリ・リサ、ダイキとシュンのやり取りをコロコロ笑いながら見ている。
シュン、立ち上がって自己紹介の準備。
シュン「…じゃあすみません、俺も始めさせていただきます。」
ダイキ「…はい、いきます。用意…スタート!」
シュン「はい、え~…名前はシュンです。今年21歳の代で、大学生やってます。学生団体の幹部とかスタートアップの企業へのインターンとか、まあ色々やってます。」
リサ「スタート…アップ…?」
シュン「スタートアップってのは簡単に言うと、新しいビジネスモデルを開発する企業で、市場を開拓する段階にあるものの事…かな。一般的には、創業2~3年目の企業の事を言うんだけど。」
リサ「??」
アカリ「…『簡単に』って言っても、結局難しくてよく分からないです~!」
シュン「ははは、ごめんごめん。まあとにかく、色々やってるやつってのが分かってもらえればと思います。趣味はたまに仲間内でやるバスケとか、たまにクラブ行ったりとか。でもそんな、特に遊び人とかじゃないですよ。高1から彼女がいなくて、寂しさでたまったエネルギーをイベントとか仕事とかにぶつけてるだけで。だから、俺も好きなタイプ…とかって全然無くて。普通に気が合う人と出会えたらなと思って、今回ここに参加しました。」
シュン、照れた様子。
シュン「あ、あと嫌いなモノか。俺は昔からトマトがダメで。でもケチャップは好きだから、俺もリサさんの気持ちは分かるんすよ。たぶん食感がダメってタイプ。あとは大抵なんでも好き嫌い無く食えるかなあ。…時間、どれくらいですか?」
ダイキ「あと30秒くらいはあるよ。」
シュン「あ、あざす!あー…映画とかも好きで、やっぱりジブリは神だと思ってます。中でも『耳をすませば』と『千と千尋の神隠し』は何周もしたくらいハマりました。王道だけど。…まあこんな感じの俺ですけど、よろしくお願いします!!」
シュン、照れた感じで挨拶。他の3人、拍手をする。
シュン、イスに座る。
シュン「ふい~お疲れっす!時計あざっす!」
ダイキ「いえいえ。」
リサ「でもシュンさん凄いですね、色々やられていて…。お忙しそう。」
シュン「まあ、確かに忙しいけど。でも毎日何か新しい事とかに挑戦してるから、ワクワクが止まらないっすよ。へへ。」
リサ「へえ~!」
シュン「…と、そしたらラストはダイキさんっすね。俺時間見ます。」
ダイキ「…今の後、やりづれえ~…」
シュン「ええ?」
ダイキ「いや、なんすかシュンさん…めっちゃ凄い方じゃないですか。うわあ、俺恥ずかしいなあ…」
シュン「全然凄くないっすから、普通っすよ。そんなしょぼくれないでくださいよ。」
ダイキ「…はあ~あ…もう仕方ない、なるようになれだ!」
ダイキ、立ち上がる。
ダイキ「じゃあシュンさん、時計お願いします。」
シュン「はい。あ、もう大丈夫っすか?」
ダイキ「大丈夫大丈夫。パパッと終わらせよう。」
シュン「なんでですか(笑)。…じゃあ、行きますよ。用意…はい!」
ダイキ「…はい、どうも…ダイキです。年齢は21歳、一応学生…です。休学してるけど、一応大学生です。えっと…好きな食べ物はギョーザ、趣味は読書とか散歩とか音楽聞いたりとか…です。嫌いなモノは…。…嫌いなモノ…?…なんだろう…昔は給食に出てくるかに玉が大嫌いだったけど、今は特に嫌いなものは無いです。う~ん、あと何言えば良いんだろ…。」
アカリ「ダイキさんは、なんで休学してるんですか?」
ダイキ「あ、…ちょっと恥ずかしいんですけど、なんか…夢追い人的な感じです。実は俺、昔から旅人みたいなのに憧れを持っていまして。大学入って勉強してるうちにその夢が自分の中で膨らんでいってしまって休学しちゃいました。主にヒッチハイクとかでいろんな所に行って、いろんな方にお会いして、感じた事を詩とか文章とかラップとか芝居とか、色々な作品にまで仕上げる…って事をやってます。というよりやり始めました。」
リサ「へえ~!」
シュン「マジすか!何すかそれ、すげえ!面白そう!」
ダイキ「いやあ、でも全然作品のクオリティとかは高くなくて。どうしてもこう、追体験みたいなものとか理想を追ったものになってしまうというか。う~ん…自分の経験したことを元に書きがちで。…要するに、修行中です。(笑)」
シュン「へえ~、面白え~!!」
ダイキ「ただ、彼女…とか恋人なんか、俺もずっといなくて。なんかこう、話の弾む人と付き合いたいと思ってここに来ました。好きなタイプとかはよく分からないけど、笑顔がステキな人が好きかも…です。いや、こういう話とかするの照れるなあ。(汗)」
アカリ「しょうがないですよそれは。(笑)」
ダイキ「…ああ~、もう分からない!とにかく、よく趣味とか言動がおっさんみたいって言われる俺だけど、楽しく今日はお話できたらと思います。よろしくお願いします!以上!」
シュン「え、終わり!?まだちょっと時間あるけど…。」
ダイキ「良いです良いです、ちょっと恥ずかしいし、十分自己紹介させてもらったし。それに、確か『進行について』には『2分以内』って書いてあるんですよね?それならルールも守ってるし、良いんじゃないかと…」
シュン「どんだけ自己紹介したくないんすか(笑)」
ダイキ「恥ずかしいし、苦手なんだよこういうの…。」
アカリ「ダイキさん、恥ずかしがり屋なんだ。良いですよねそういう男性、なんかかわいい。」
ダイキ「え、か…か!?いや、そんな事は無いんですけど…。」
ダイキ、照れるのをごまかすように話を振る。
ダイキ「あ、自己紹介が終わったら…次は何をやるんでしょう?次のプログラム、楽しみだなあー(少し棒読み)。」
リサ「(『マユミ』の手紙を見ながら)えっと、次は…。あ、アイスブレークですね。やっぱり初対面同士なので、距離を縮める為にゲームで盛り上がろう…って事だそうです。」
アカリ「なるほど。」
シュン「なんか自己紹介も終わってゲームやるって、だんだんワクワクしてきましたね…!」
ダイキ「た、確かに!恋活っぽくなってきました。」
シュン「それで、ゲームっていうのは…何をやるんですか?」
リサ「えっと、この『マユミ』さんのプログラムによると、ワードウルフの準備がされているそうです。…皆さん、ご存知ですか?」
アカリ「あれかあ~…ちょっと苦手なんだよな~…」
ダイキ「アカリさんご存知なんですか?もしかしてそのワード…ウルフ?って、結構有名なやつ…?」
アカリ「まあ、そう…ですね。」
シュン「割と知ってる人は多いかもしれません。俺も、得意ではないけど好きで友達とよくやるし。」
リサ「一応、ダイキさんの為にも皆さんの確認のためにも、ルール説明しますね。」
ダイキ「あ、ルール説明あるんだ?」
リサ「はい、『マユミ』さん、ちゃんと準備してくださってます。」
シュン「『マユミ』さん、細かいところには気遣いがあるんだよなあ。」
リサ「えっと、じゃあ読みますね。まず、参加者全員には、ある単語が与えられます。」
ダイキ「単語?」
アカリ「お題みたいなものですかね。例えば、ん~…まだ季節じゃないけど、『アイスクリーム』…とか。」
ダイキ「ああ、なるほど。」
リサ「で、その単語は全員共通なのですが、一人だけ、微妙に違う単語が与えられます。」
ダイキ「…?」
リサ「(ダイキの『?』の表情を見て)さっきの例えで言ったら、皆が『アイスクリーム』の中、一人だけ『ソフトクリーム』…とか。分かります?」
ダイキ「うんうん、なるほど。分かりやすい!」
リサ「ありがとうございます。…それで、その違う単語を与えられた人がワードウルフになり、このワードウルフを話し合いで見つける…というゲームになります。」
ダイキ「へえ~、難しそう…だけど面白そう!」
シュン「これ、やってみると分かりますけど…めちゃめちゃおもろいです。」
ダイキ「え、はい(挙手)!質問!」
リサ「なんですか?」
ダイキ「そのワードウルフになった人は、自分がウルフだって事は分かるの?」
リサ「いや、それは分からないんです。だからウルフの人は、話し合いをしていく中で察するしかない。『周りが話している内容と自分のお題とがちょっとかけ離れてるな』『という事は、自分がウルフなのかな?』…みたいな感じですね。」
ダイキ「なるほど~!奥が深いなあ…。」
アカリ「自分の単語、お題を直接言うのはOKなんですかね?」
シュン「ダメではないけど、多分得策ではないんだよね。もし仮に自分が少数派だったりしたら、それでバレて負けちゃうかもしれないし。」
アカリ「そっか、確かに…。」
リサ「…ま、あとはやりながらコツとかも分かると思います。とりあえずやってみますか!」
シュン「そうしよ!」
リサ「えっと、プログラムによるとお題とかのアイテムがこっちの部屋にあるみたいだけど…。」
リサ、ワードウルフセットを持ってくる。色々持ってくる。
シュン「す、すげえな!」
ダイキ「このゲームって、こんなに大掛かりなモノなの…!?」
リサ「いや、そんな事は無いですけど。なんかこれは、お客様にも楽しんで頂くためのアイテムだそうですよ。」
アカリ「お客様?何の事?」
リサ「さあ。」
シュン「ま、細かい事はいっか。さっそく最初のゲーム始めるべ!俺からお題の単語を見せていただこうかな。」
ダイキ「じゃあ俺たちは、それが見えない様に目を瞑ってた方が良いのかな。」
シュン「そうですね。俺がOK言うまでは目を瞑っててください。」
アカリ「分かりました!」
リサ「(客席に投げかける)お客様も、『シュン』さんのカードを持っていない方はどうぞご一緒に目を瞑っててください。逆に『シュン』さんを持っている方、ぜひ一緒にお題の単語をご確認ください。」
アカリ「リサさん…誰に話しかけてるの?」
リサ「?さあ。」
シュン、自分の単語を確認。それを『シュン』のカードを持つお客様にも見せる。
シュン「よし、じゃあ次は…」
ダイキ「そしたら今度は、俺が確認しようかな。さっきの自己紹介は、女性陣からだったしね。」
シュン「おっけーです!」
ダイキ、シュンと同様に単語を確認。
これをリサ、アカリも行う。
そのままワードウルフをプレイする。話し合い時間は3分。
これを2ゲーム行う。この進行はアドリブ、役者さんにお任せします。
ワードウルフのプレイング終了。上手くこの後のセリフに合流させる。
シュン「で、お次のプログラムは…?」
アカリ「…(マユミの手紙を見て)えっと…なんだこれ?『匿名自己暴露』?」
ダイキ「なんだか危なそうな企画名だね(汗)」
シュン「確かに。どういう内容?」
アカリ「はい。…(手紙を見ながら説明をする)『まず、参加者全員に白い紙を一枚ずつ配布します。そしたらそこに、ご自分の秘密や暴露話を一つ書き込んでください。絶対にご自分のお名前は書かないようにお願いします。全員が書き終わりましたら、暴露ボックスに全員の紙を入れてよく混ぜます。ある程度混ぜられたらボックスから一枚紙を取り出します。それがいったい誰が書いた暴露なのか、予想しながらトークするというゲームです』…。」
リサ「暴露…!?」
シュン「なるほど、面白そうじゃん。」
ダイキ「調子に乗って凄い暴露を書いて、それがトークで自分のモノだってバレたら…めちゃめちゃ恥ずかしいな。(笑)」
リサ「え、でももし引かれた暴露が自分のモノでも、知らんぷりしてトークしても良いって事ですよね?」
アカリ「そう…だね、『嘘をついてはいけない』とは書いてないから、良いんだと思うよ。」
リサ「良かった…。」
アカリ「…あ、注意書きに書いてある。『もし、ボックスから選ばれた暴露を書いたのが自分だとバレたくない場合は、嘘をついてごまかすのもOKです。』…だってさ。ただその代わり、『紙に書く暴露は必ず本当の事、事実だけを書いてください。』…って。」
リサ「なるほど…。」
シュン「その『暴露ボックス』っていうのはどこにあるんだ?」
アカリ「確かに…。でも、多分この辺にあるんじゃ…」
4人、アカリのセリフをきっかけに辺りをキョロキョロ見回す。
ダイキ、机の下から暴露ボックスを見つける。
ダイキ「あった。これじゃないかな?」
アカリ「あ。そうですね、それだ!ありがとうございます。」
シュン「紙も…あ、一緒にあるか。」
ダイキ「うん。とりあえず配っちゃいますね。」
ダイキ、小さい白紙と筆記用具を一枚ずつ配る。
シュン「…でもさ、急に『暴露』って言っても難しいっすよね?」
ダイキ「うん。暴露はウソをついちゃいけないっていうのがなあ…。」
リサ「絶対知られたくない事とかもありますしね。(笑)」
アカリ「まあでも、仮にそれを書いて選ばれても、全力でごまかせばいい訳だし。ヤバさに関わらず書いちゃいましょ。」
ダイキ「凄い、アカリさん男らしいですね…!」
アカリ「いやあ、そんなそんな。(照)」
4人、それぞれ紙に暴露を書き込む。その間アドリブで会話。
4人、暴露を書き終えボックスに紙を入れる。アカリ、全員の暴露の入った箱を振り、よく混ぜる。
アカリ「…じゃあ一枚引きますね~!…じゃあ…(箱の中に手を入れ、選ぶ)これです!(一枚取り出す)」
シュン「記念すべき初暴露…!」
アカリ「はい、それじゃ読みます…。…『自分は実は、童貞である』…やだ、こういう系?」
ダイキ「ええ~?マジ?(シュンの方を向いて)」
シュン「あ、そうだったんすか?(ダイキの方を向いて)」
ダイキ「いやいやいや、俺じゃないから、これ書いたの。」
シュン「いや、俺でもないっすよ。」
リサ「さっそくごまかし合いの勝負になってる。(笑)」
シュン「…ってか、これだと俺かダイキさんのどっちかじゃん。良くないでしょこれは。(笑)」
リサ「確かに(笑)」
アカリ「まあ、どっちが書いたかは分からないけど…確かにこれは悪手だったかもしれませんね。(ダイキを見ながら)どっちが書いたかは分からないけど。」
ダイキ「なんで俺を見ながら言うの!?ホントに俺じゃないんだよ!?」
アカリ「分かりました、そういう事にしておきましょう。(笑)」
リサ「そうですね。あまりいじってもかわいそうだし。」
ダイキ「…!全っ然信じてない…!」
シュン「まあまあ、しょうがないっすよダイキさん。イメージの差です。」
ダイキ「差って言うなよ!」
シュン「ははは。」
リサ「じゃあ、そろそろ次の暴露カードに行きますか?これはどうするんだろ、このまま次のカードをボックスから取り出せば良いの?」
アカリ「(マユミの手紙を見て)あ、一旦ボックスの中をリセットするんだって。さっき書いた紙は全部捨てて、新しい紙に暴露を改めて書くみたい。…ただ、暴露が読まれてない人はさっきと同じ暴露を入れても良いみたいよ。」
リサ「なるほど~。了解。じゃあ出しますね。」
リサ、暴露ボックスから紙を取り出す。そのまま丸めて、部屋の片隅にあるごみ箱に捨てる。
アカリ、リサが紙を捨てている間に小さな白紙を一枚ずつ配り始める。
アカリ「じゃあこのまま2ゲーム目、やりますか。」
シュン「ういうい。」
ダイキ「…これって何ゲームやるんですかね…?」
アカリ「マユミさんの手紙には、最低でも5ゲームはやるように書いてありますね。」
ダイキ「なるほど…。」
シュン「ダイキさん、今度は上手くごまかせると良いっすね。」
ダイキ「…(シュンをジトッとした目で見る)」
シュン「(ダイキの目線を受けて笑う)ははは。」
リサ「これは、ごまかすスキルがホントに大切なゲーム…ですね。」
ダイキ「うん…ホントに。ごまかすスキルと、あと…信じてもらうスキルだね…。」
リサ「…(戦々恐々としている)」
シュン「おっけ、書き終わった。入れま~す!」
アカリ「私も。」
4人、続々と暴露カードをボックスに入れる。
アカリ、ボックスをよく振って暴露カードを混ぜる。
アカリ「じゃあ、次の暴露を引きます…!…これ!」
リサ「今度は誰のだろ?」
アカリ「…えっと…。『半年前、恋人と親友が浮気していたことが発覚して別れました。』…これはキツイなあ…。」
シュン「これは誰が書いたか分からないっすね。」
ダイキ「しかもその上割と重い暴露だ…。」
リサ「その人、友達と恋人を同時に失った…って事でしょ?辛すぎる…。」
シュン「でもこれってさ、この暴露を書いたのが男子なのか女子なのかでちょっと変わってこない?」
リサ「どういう事ですか?」
シュン「ほら、男同士の友達関係と女同士の友達関係って、微妙に違うじゃん。そこの違いというか何というか…難しいね。(汗)」
リサ「ああ~…なるほど…?」
アカリ「え、この暴露ってそんなに奥深いヤツなんですか?男と女の違い…みたいな?」
ダイキ「いや、絶対違う。」
シュン「…てか、その暴露をした人は…多分それが原因でここに来たって事でしょ?…つら。」
アカリ「…まあ、これはあまり詮索しない方が良い感じの奴かもしれないですね…。…次行きます?」
ダイキ「なるほど、あんまり暴露が重たすぎるとこんな感じになるのね。(笑)」
シュン「バランス図るの難しいっすね。」
アカリ「はいはい、次行きますよ。(ボックスから暴露カードを取り出しながら)次の暴露、書いてください。」
シュン「ほいほい~。」
4人、暴露を書いて続々とボックスに入れていく。
シュン「じゃあ今度は俺がひこうっと!(ボックスの中に手を入れて、ゴソゴソと選ぶ)」
ダイキ「良い感じのヤツにしてよ~。」
シュン「オッケーっす。…(ボックスから1枚引く)よし!これ!」
リサ「(ワクワクしながらシュンに近づく)」
シュン「…え?」
ダイキ「?どうした?」
アカリ「早く読んで下さいよ~。」
シュン「ああ、うん…。えっと…。『ダイキとアカリは、このイベント前から面識がある』…。」
ダイキ「…え」
アカリ「…(ダイキの方をパッと見る)」
シュン「えっと…これはマジ、なんすか?」
ダイキ「え…まあ、うん…」
アカリ「(ダイキの返答を聞いて、急いで表情を作る)はい、まあ…実はそうなんですよ。」
シュン「あ…へえ~、そうなんだ。どういうお知り合いなんですか?」
ダイキ「…あ、お互い家が近所で。で、…アカリさんの兄貴が俺と同級生で。…それで、その友達と遊ぶときに何回か会った事があるんだ。」
アカリ「…まあ、顔見知りというか。そこまでお互い知ってた訳ではないんですよ。だから、言う必要は無いかなって。なんかびっくりさせちゃったらすみません。」
リサ「なんだ、そっか。…でも凄いですね、こういう形でのイベントで顔見知りと同じグループになるなんて。結構確率低くないですか?」
アカリ「…そうだね、ホントに偶然。」
ダイキ「だからお互い、最初ビックリしたよな。俺より先にリサさんがいてくれたから良かったけど、もし違ったら…なんか恥ずかしいというか、気まずかったよなあ。」
アカリ「…そうですね。」
リサ「思いもよらないところでお役に立てていたみたいで…良かったです。」
ダイキ「ははは、いやいや。」
アカリ「…、そろそろ次に行きません?もうこれ以上掘り下げる事も無いですし。」
シュン「そうだね、次引こうか。」
シュン、ボックスに一番近い位置にいたので自然とカードを選ぶ。1枚暴露カードを引く。
アカリ「次はもっと、盛り上がる暴露だと良いですね!」
リサ「ビックリ具合というか、衝撃で言ったら今のも大分レベル高かったですけどね。(笑)」
シュン「…」
ダイキ「?シュンさん、どうしました?」
シュン「あ、いや…これは…(引いた暴露カードを思わず隠そうとする)」
リサ「何をためらってるんですか、気になるじゃないですか~。(言いながら暴露カードをシュンから取る)…え…」
ダイキ「?どうしたんですか?」
リサ、ダイキを見る目に怯えが混じっている。
ダイキ、リサから暴露カードを受け取り読む。
ダイキ「…!(アカリに視線を向ける)」
アカリ「…?」
ダイキ「なんで…こんな暴露を…!?」
アカリ「…え…?」
ダイキ「…(震える手で暴露カードを手渡す)!」
ダイキ、乱雑に持っていた暴露カードをアカリに手渡す。アカリ、受け取り読み上げる。
アカリ「…(一度読み、衝撃を受けながら)『ダイキは過去、アカリの事が好きだった時期がある。そして、その時期に、…その恋愛がらみで警察沙汰にもなっている』…。」
アカリ、ダイキをパッと見る。
ダイキ、アカリを見ている。だが、すぐにリサやシュンからの視線に気づき、そちらに視線を向ける。
ダイキ「いや…違うんです、警察沙汰だなんて…。これはちょっと、誇張した表現というか…。」
リサ「恋愛がらみで警察沙汰って…どういうことですか…?…暴力とか、無理やり…とか…?」
ダイキ「いや、俺がそんな…」
シュン「いや、それは違うと思う。」
リサ「シュンさん?」
ダイキ「…シュンさん…!」
シュン「…暴力とか暴行とかだったら、アカリさんにそういった外傷があるはず。だけど、少なくとも目に付くところに傷は見えないし…多分そういうタイプのトラブルでは無いんじゃないかな。」
ダイキ「な…!そ、そんな…!」
シュン「となると、あと大きなトラブルと言えるとしたら…ストーカー、とか…?」
ダイキ「…!」
アカリ「…(シュンのセリフに少し反応する)」
シュン「…当たり…ですか…?」
ダイキ、みるみる顔色が悪くなってくる。
ダイキ「…(アカリに向かって)な、なんでこんな暴露をするんだよ…!…まだ…まだ俺に恨みがあるのか!?」
アカリ「違う、私じゃない!私こんな暴露入れてない!」
ダイキ「じゃあ誰が入れたって言うんだよ!俺が自分でこんな暴露を入れるわけが無い、そしたら君しかいないじゃないか!」
アカリ「知らない、分からないけど!でも、本当に…本当に私じゃないの!」
ダイキ「そんな、信じられる訳…」
シュン「やめろ!!」
シュン、ダイキを静止する。
シュン「…やめてください、ダイキさん。…俺は、二人に何があったのかなんて知らないけど…。でも、怒鳴ったりするのは…違うと思います。」
ダイキ「…ああ…も、申し訳…ない…。」
アカリ「…」
リサ「あの…。」
ダイキ「…(顔を上げてリサの方を向く)」
リサ「もし、差し支えなければ…聞かせてくれませんか?お二人に何があったのか…。…あの、このままこんな雰囲気でこの会を進めるのも…無理だし。…ダイキさんを誤解したくないので…もし可能なら、話を聞かせてほしいです…。」
ダイキ「…。」
シュン「…そうっすよ、ダイキさん。もし後ろめたいことが無いなら、ちゃんと話してくださいよ。」
ダイキ「いや…でも、もうその話は既に解決していて…。」
シュン「そんなの関係無いっすよ。実際問題、今、正にその話が原因で…こうなってるんですから。…話してもらえないと、少なくとも俺とリサちゃんは…納得できないっすよ。」
ダイキ「…」
ダイキ、躊躇いながら口を開く。
ダイキ「…2年前。…大学入って少ししたくらいの時。あまり大学に馴染めなかった俺は、地元の連中と遊んでた。…そこで、その…アカリちゃんに再会した。」
シュン「…。」
ダイキ「昔から、友達の妹だから何回も会ってたし、普通に知ってたけど。久しぶりに会ったというのもあってか…妙に惹かれてしまって。好きになってた。」
リサ「…(頷きながら聞いている)」
ダイキ「それでさ。恋するのも久しぶりだしあまり慣れてないしで、…ちょっと変なアプローチをしてしまって。アカリちゃんもあまり恋愛に慣れてなかったから、怖がらせてしまったんだ。…でも、当時の俺は、アカリちゃんが怖がってるなんて気が付かなくて…。」
ダイキ、口をつぐむ。
アカリ、ダイキの様子を見てセリフの後を言う。
アカリ「…それで、私も過剰に怖がっちゃったのもあって…学校の先生に相談したら、いつの間にか大事になっちゃって…。」
ダイキ「…気づいたら俺は、周りからストーカーって呼ばれるようになってた。」
アカリ「…。」
ダイキ「…そりゃ、俺が悪いよ。怖がらせるようなことをして、それに自覚が無かったんだから。罰を受けるのは分かる、当たり前だ。…だから俺は、実生活で…なるべく外に出ず人に迷惑をかけないように、慎重に過ごしてる。」
シュン「…?」
ダイキ「…でもさ。…わざわざこんなところでまで、俺に罰を与える事は…ないだろう!?」
アカリ「、え…」
ダイキ「復讐のつもりか?恐怖を植え付けられた分、その恨みを晴らそうとしてるってことか?…なあ、悪かったよ。悪かったから、…こういう…俺が少しずつ前に進もうとしてる、邪魔だけはしないでくれよ…。」
アカリ「ちょっ、待ってください!本当に…本当に私は書いてないんです。さっきの暴露、ホントに私じゃないんですよ!」
ダイキ「…はあ?」
アカリ「そもそも私、…その件については、ダイキさんに…申し訳ないとも感じてるんです…。」
ダイキ「…え?」
アカリ「…私があまりに恋愛に疎くて、…そのせいで過剰に怖がってしまって。ダイキさんを余計に傷つけてしまって…でもなかなか謝るチャンスが無くて、全然ごめんなさいって言えなくて…。…恨んでなんか、無いんです…!」
ダイキ「…」
アカリ「…タイミング、すごく変ですけど…。今更なんですけど、…あの時は、本当にすみませんでした…。」
ダイキ「、…な…。」
アカリ、ダイキにぺこりとお辞儀して謝る。
ダイキ、混乱する。
ダイキ「ちょ…どういうことだよ…。本当に、さっきの暴露…アカリちゃんじゃないのか…?」
アカリ「…(顔を上げて、頷く。)」
ダイキ「じゃあ…じゃあ、いったい誰が…。」
リサ「…二人とも、その話はあまり他人には話してないんですよね…?」
ダイキ「…そりゃあ。聞いてて愉快な話ではないしな…。」
アカリ「…。(頷く)」
リサ「それじゃあ…う~ん…。」
シュン「…(ずっと考え込んでいて、ふと)『マユミ』。」
アカリ「…え?」
シュン「そうだ…、『マユミ』なら…知ってるんじゃないですか?ほら、この恋活イベントに申し込みする時。アンケートで色々書かされたじゃないっすか。『過去の恋愛の失敗談』とか。…ひょっとして、二人のどっちか…あそこにそれを書いたんじゃないすか?」
ダイキ「いや、俺は…(アカリを見る)」
アカリ「私…書いちゃいました。」
シュン「ほら!『マユミ』は知ってるんすよ。多分『マユミ』が、このボックスに暴露カードを仕込んで…」
リサ「(シュンを少し遮って)で、でも!でも…どうやって仕込むんですか?私たちは、毎回ボックスの中のカードを入れ替えてるんですよ?」
シュン「え?…ああ…。」
シュン、少し悩む。
リサ、何か思いついたようにボックスを開ける。
リサ「…!」
シュン「…?どうしたの、リサちゃん?」
リサ「…これ…(手を開いて、持っているものを見せる)」
ダイキ「…?暴露カード…がどうしたの?」
リサ「枚数。…おかしいんです。」
ダイキ「おかしい?」
リサ「…はい。シュンさん、今の…アカリさんとダイキさんの事が書いてあった暴露カード、まだ持ってますよね?」
シュン「え?うん、もちろん…?(手元の暴露カードを見せながら)」
リサ「ということは、本来ならボックスの中には3枚しかないはずなんですが…。(手元のカードを広げて、枚数が分かるようにする。)」
シュン「…!」
ダイキ「4枚…ある…!」
リサ「…はい…。」
アカリ「え…だって、このボックスには私たちしか…」
リサ「…(頷く)。つまり、この中に…自分の暴露も入れつつ、同時にアカリさんたちの暴露も入れた…『マユミ』さんがいるんです。」
アカリ「ええ…!?」
シュン「…!」
ダイキ「…!」
4人、顔を見合わせる。
ダイキ「…いや、でも…おかしくない?その『マユミ』は、なんでこんな事を…?だって『マユミ』にとっては、メリットなんか全く無いじゃんか!」
シュン「…いや。メリットなら、ある。」
ダイキ「…え?」
シュン「例えば、…ダイキさんが『マユミ』なら。今、結果的にアカリちゃんに謝ってもらえて…仲直りできてますよね?」
ダイキ「…は?」
シュン「アカリちゃんの性格を以前から知ってたダイキさんなら、もしかしたらこうなる流れが読めていたかもしれない。そして…」
ダイキ「(シュンを遮って)ちょっと待てよ。それって…俺がさっきのアカリちゃんとの会話を、芝居でやってたって言いたいのか?」
シュン「その可能性は、…ゼロでは無いってだけです。」
ダイキ「…それを言うなら、シュンさんこそ。…『マユミ』の暴露カード、2枚ともあなたが引いてますよね?」
シュン「…そうですね。」
ダイキ「それってさ、いくら何でもおかしくないか?二回連続で『マユミ』のカードを引き当てられる確率は相当低い。…ボックスの中から引いてるように見せて、実は『マユミ』のカードは初めから握っていただけ、それを引いたように見せただけなんじゃないのか?」
シュン「なんで俺がそんな面倒なことをやらなきゃいけないんですか。それこそメリット無いっすよ。」
リサ「お二人とも、けんかはやめましょう。落ち着かないと、考えもまとまらないですよ…。」
ダイキ「リサさんも決して怪しくない訳ではないんですよ?そうやって仲介に入るキャラを装って、上手くごまかしている可能性だってある。」
リサ「なんでそうやってすぐに疑うんですか。シュンさんと同じです、私にだってメリット無いですよ。」
アカリ「…でも、庇うわけではないですけど、ダイキさんにも…別にメリットがある訳ではないですよね。だって、仮に私の動向を読めていたとしても…そんなもの不確定ですし。」
ダイキ「…!、そうですよ!」
シュン「それを言い出したら…!…じゃあどうやって『マユミ』を探せば良いんだよ!?」
アカリ「そんな事、私に聞かれても…」
4人、激しい言い合いになる。
SE玄関のチャイム音、CI。
4人、SEをきっかけに動きを止め、崩れ落ちる。
SE玄関のチャイム音、何度も鳴る。
海斗、何度も鳴るSEをきっかけに、ゆっくりとけだるげに起き上がり、服を着替える。
SE配達員の声、チャイム音に続きCI。(「冴島さ~ん、宅配便で~す。いらっしゃいますか~?」)
海斗、うつろな目で玄関の方を向く。表には出ない。
SE不在票を玄関のポストに入れる音、CI。
海斗、ゆっくりとあたりを見回す。乱雑に物が置かれた部屋。
海斗、ため息をつく。
海斗「…続き、書くか…。」
海斗、ぼうっと立ち尽くす。
MEED、CI。
海斗、頭をかきむしる。やるせない気持ちを何かにぶつけようと、机の上にある紙を破く。
照明、CO。
MEED、FO。
終演。お疲れさまでした。
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