僕の魂は青く灼かれた【#いまから推しのアーティスト語らせて】
ああ、昭和に生まれたかった。
僕がTHE BLUE HEARTSというバンドの事を知ったのは小学生の時。母親が運転する車の中で、しょっちゅうベストアルバムがかかっていた。初めは何の気も無しに聞き流していたが、シンプルな言葉を使いながらも詩的で熱いメッセージがふんだんに込められた楽曲の数々に、気が付いたら心を奪われてしまっていた。
『リンダリンダ』や『TRAIN TRAIN』等でよく知られるTHE BLUE HEARTS。1985年頃に結成されやがてメジャーデビューも果たし、たくさんの曲を発表していくも1995年に解散したロックバンドだ。20歳そこそこの僕の世代では、周りの友人らにバンド名を言っても誰なのか伝わらないことが多い。だが、曲名を上げると「ああ、」とピンと来るようだ。
「なんか…ヤバい人がボーカルのバンドだよね?」と。
ボウズ頭に引き締まった体。頭を振って舌を突き出し、ピョンピョン飛び跳ねながら楽曲を歌う。THE BLUE HEARTSのボーカル、甲本ヒロトさんその人である。
そのパフォーマンスは圧倒的で、活動初期にテレビ出演をした際「危ないクスリとかやっているのでは?」とテレビ局に電話が殺到したこともあるそうだ。なんて失礼な。
あまりTHE BLUE HEARTSの事を知らない人はヒロトのパフォーマンスのイメージくらいしか印象が無いらしい。まあ、確かに気持ちは分からない事は無いが…それではあまりにもったいない。僕は、同世代の人たちにこそ、THE BLUE HEARTSの楽曲を聞いてほしいのだ。
パフォーマンスももちろんだが、歌詞が素晴らしい。
小学生でも分かる言葉を使って、とても大切なメッセージを大切に・丁寧に表現している。
先ほど冒頭でも触れた、代表曲『リンダリンダ』の一節。
「ドブネズミみたいに美しくなりたい
写真には写らない美しさがあるから」
「愛じゃなくても 恋じゃなくても
君を 離しはしない
決して負けない強い力を 僕は一つだけ持つ」
(THE BLUE HEARTS『リンダリンダ』より)
正直、幼い頃は意味が分からなかった。いったい、ドブネズミのどこが美しいんだろうか。ドブネズミと比べるなら、僕が図工の授業で描いた絵の方がよっぽど美的だ。ちんぷんかんぷんで、頭の中にハテナが大量発生したのを覚えている。
だが、年々色々な経験や失敗をしていく中で、少しずつヒロトが言わんとしている事が分かる気がしてきた。生きることにひたむきに、真摯に取り組んでいるその姿勢が美しいのかもしれないと、21歳現在の僕は考えている。…まあ、また数年したら自分の中での曲の解釈も変わって、またちんぷんかんぷんになるのかもしれないが…。こんなふうに、THE BLUE HEARTSの曲は聞く時の自分の置かれている状況によって捉え方が変わるモノが多いのだ。なんとも面白く、奥深い。
もう一つ、僕が好きな曲で『夕暮れ』というものがある。
「はっきりさせなくてもいい あやふやなまんまでいい
僕達はなんとなく幸せになるんだ」
「夕焼け空は赤い 炎のように赤い
この星の半分を真っ赤に染めた
それよりももっと赤い血が
体中を流れてるんだぜ」
(THE BLUE HEARTS『夕暮れ』より)
なんておしゃれでカッコよくて、滾る歌詞なんだろう。
これを初めて聞いた時、僕は小学生ながら胸が震えた。未だに、しんどい時に聞くとじんわりと染みこむ。
ぽんこつでも、失敗ばかりでも、足りないところばかりでも『幸せ』になって良い。まるで夕日のようにあたたかく包み込みながら肯定してくれる歌詞に、いつも励まされる。自分の中に在るパワーを認めさせてくれる。
他にもたくさん…本当にたくさん、ステキな曲がある。一つ一つ紹介したいところだが、ここはグッと堪えて、僕のおススメ楽曲ベスト5のみをかかせていただきたい。この5曲は何が何でも聞いていただきたいものだ。
(本当はベスト3という事で3曲だけを挙げようと思ったのだが、大好きな曲がありすぎて絞れなかった。なんとも心苦しい。)
第5位:『チェインギャング』
THE BLUE HEARTSのギター・ボーカルを務めるマーシーこと真島昌利さんが、作詞作曲・メインボーカルとして歌われている曲。マーシーの独特な声がとても魅力的。大人になる事や成長する事に息苦しさを感じたり、孤独感を覚えた時に聞くとめっちゃ効く。
「生きているっていうことはカッコ悪いかもしれない
死んでしまうということはとってもみじめなものだろう
だから親愛なる人よ そのあいだに少し
人を愛するってことをしっかりとつかまえるんだ」
第4位:『TOO MUCH PAIN』
マーシー作詞作曲。とてもしっとりとした、落ち着いた一曲。他の曲とは雰囲気が違うので、「THE BLUE HEARTSって、あの騒がしいバンドでしょ」という偏見を持っている方に何としてでも聞いてほしい。辛い事や悲しい事があった時に聞くと無性に泣ける。夜のお散歩のお供にもピッタリ。
「はみだし者たちの遠い夏の伝説が
廃車置き場で錆びついてらあ
灰色の夜明けをただ黙って駆け抜けて
あなたに会いに行けたらなあ」
第3位:『ロマンチック』
ヒロト作詞作曲。ポップな雰囲気で、恋のドキドキやワクワク感に溢れた曲。恋人がいる人、片思いをしている人、最近あまりときめいてない人、あらゆる人におススメ。聞くと、「こんな恋をしたいなあ」と感じる。恋したくなる。とにかくかわいい。
「ああ 何もかもいとおしい
ああ 抱きしめてやさしくしたい
せつない気持ちの分だけ約束を果たそう
ああ ときめいて」
第2位:『終わらない歌』
マーシー作詞作曲。THE BLUE HEARTSらしく、アップテンポで元気が出る曲。大きな夢や目標に挑戦する事が少し怖い時。高い壁に阻まれ、くじけそうになった時。ヒロトのアツい歌声が、「もう少し頑張ろう!」と思わせてくれる。
「終わらない歌を歌おう クソッタレの世界のため
終わらない歌を歌おう 全てのクズ共のために
終わらない歌を歌おう 僕や君や彼らのため
終わらない歌を歌おう 明日には笑えるように」
第1位:『ナビゲーター』
ヒロト作詞作曲。テンポが落ち着いていてなおかつメロディもかわいらしく、歌詞がスッとまっすぐに伝わってくる感じがある。大変な事や苦しい事の方が圧倒的に多い『人生』。その平坦では無い道を歩くのに疲れた人に、この曲はそっと寄り添ってくれる。
「ああ この旅は気楽な帰り道
のたれ死んだ所で本当のふるさと
ああ そうなのか そういう事なのか」
どの曲も本当にステキで、素晴らしいものばかりだ。今まで聞いた事が無かった人は、ぜひとも上のおススメソングを検索してみてほしい。絶対にハマる事だろう。
そして、きっとこう思うに違いない。
ああ、昭和に生まれたかった。そうしたら、絶対にライブに行って生のパフォーマンスを見たのに…と。
ここまで読んでくださったあなたがTHE BLUE HEARTSの魅力に骨抜きにされて、小学生時代から続く僕の嘆きに共感してくださったら…これ以上ない喜びである。
長い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。