第136回 改革は四面楚歌 の巻
道真の改革案は現場主義。そこで働く人々のオペレーションまで考え尽くされたものでした。
もちろん道真ひとりだけで考えたものではなかったでしょうが、「現場働く人の意見を柱にする」というコンセプトが際立っている時点でひと味違います。
たとえば、通常は 地方長官が税をゴマかし私腹を肥やしていないかをチェックする役人(検税使)を中央から派遣します。
しかし道真はこの制度の廃止を提案します。
え?ゴマかしチェックせんでええの?と思ってしまいますが、道真の意見はこうです。
「災害などの非常時には民に物資を分け与える必要があり、余剰物資は蓄えておく必要がある。法律通り税をすべてもっていかれると、いざという時にその国が立ち行かなくなる。法律から多少は外れても実をとったほうがいい。」
そんな大胆な内容です。さらに、
「大半の国守(地方長官)はまじめに仕事してる。税をゴマかすヤツを泳がせておいても、トータルではプラスになる。」
…と、中央の貴族が絶対思いつかない現場の機微を具現化しようとします。
しかし会議は紛糾、道真案は反対され、ついに妥協案を飲まされることになります。
ここで…マンガのように観音様が出てきて道真を励ました…かどうかはわかりませんが、ここからが道真のすごいところ。
ここであきらめず、さらに現場の意見を集め、理論武装で固めた上で、もう一度まったく同じ提案を奏上します(執念~!)。
この時の奏上文が圧巻です。
検税使を廃止すべき根拠は3箇条になっているのですが、最初2つは反論しようがない、理論武装で固められています。
しかし、あえて3つ目の根拠を追加しています。
いや、3つ目は正直、ツッコミどころアリのユルい根拠なのですが、前の2つが効いているので、3つ目が「ダメ押し」になっているのです。
最初に完璧な根拠で反論の余地を与えず、相手が心理的に「ぐぬぬぬ…」となって劣勢になったところにダメ押しで一発入れてやると3発目はユルくても倒せる…みたいな。
道真はそんな心理の機微までを知り尽くしていたのか?と想像させる文章です。
しかし…。上級貴族に列っしながら、この反骨心です。
菅原道真といえば、詩の雰囲気からも一般的に青白いイメージが強いですが、実はめっちゃくちゃ気の強い人だったようです。 自分に課された財政再建を絶対なしとげやてる!というトンデモナク強い意志が伺えます。
このあと数々の意表をつく大胆な改革案が出されますが、これらは急に思いつくはずもなく、おそらく讃岐時代からずっと心の奥底で温めていたことだったのかもしれません。
次回のマンガでは、反対された案で再度トライする道真をネタにしてみたいと思います。
ちなみに、道真サンが子どものときに死にかけて観音様に助けてもらった話のマンガはコレ ↓