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じゃれ本

11月14日
メンバー:あまざけ、果汁、ちお、ハリネズミ(あいうえお順)


『おなかの脂肪を減らすめがね』タイトル:あまざけ

「お嬢さん、ダイエットに良く効く眼鏡があるよ」
私は耳を疑った。
眼鏡?
「みんな使ってるよ」
そこじゃない。
あと噓つけ。

果汁

実際に使っている方へインタビュー
「毎日朝の目覚めが良くなりました」「病気が治りました」
「就職が決まりました」「彼女ができました!」「長年悩んでいた借金を完済できました!」などの声が寄せられた

ハリネズミ

それを見て迷わず購入ボタンに手を伸ばした。
これできっと、理想のボディビルダーになれる・・・
わくわくして待つ中、届いたのは今にもポキっと折れてしまいそうな安物のようなめがねだった。高い金払ったのに。

ちお

こんな安っぽいめがねで本当に理想のボディビルダーになれるのだろうか・・・
しかし、せっかく高い金を払ったのだ。
恐る恐る、そのめがねをかけると・・・
むむっ。なんだか、身体がおかしいぞ・・・?

あまざけ

眩暈がした。全力で泳いだ後のような倦怠感が体を包み、力が入らなくなりその場で膝をついた。飢えとも疲労感ともつかないものが私を襲ってくる。これは、使ってはいけないものだと本能的に悟った。

果汁

そう一方的に恩恵だけを受けられる魔法のアイテムはないのである、この世の中のものはすべて等価交換。お腹の脂肪を減らす代わりに、実はとんでもない代償を払っていたのである。それは、

ハリネズミ

自分が使っている最高級品めがねだ。これはイギリスの有名な職人がいる老舗で購入した、3桁万円は余裕だった。もちろん性能もよかったが、材質や見た目も最高だった。そう、普段から浪費癖のある自分へ報いだった。

ちお

「くそっ!」
そう叫んでから、私は部屋を飛び出した。
悔しくて、やりきれない。
外を走って、走って、気がついた。
そうだ、最初から走っていれば、痩せれたんだ。

あまざけ

『社会性ってドーム型も四角型も捨てられない』タイトル:ちお

この春から社会人になった女です。
最近、不思議に思っていることがあります。
それは「社会人」とはないかということです。
「社会人」って大変。
そう思いながら、今日も鏡の前でメイクをしています。

あまざけ

もうこんな時間だ。慌てて食卓のパンをひったくるように手に取り、流れるような動作で玄関を出る。もう五分前にこれを出来ていれば。そう毎日思うが、実行出来たことは一度もない。

果汁

玄関を出れば、目の前に季節外れのかまくらがあった。
それのせいで通行人が道を通れなくて困っている。
だが、その光景を目にしても僕は「かまくらカスターが食べたい」そんなことを思ってしまう位自己中心的だ。

ちお

「おい! どいてくれ!」
僕は通行人の人だかりに向かって叫んだ。
いますぐ、かまくらカスターを食べたい。その一心だった。
しかし、僕の声は通行人には届かない。
くそっ、このままでは道を通れない!!!

あまざけ

「かまくらカスターは鎌倉ニュージャーマンでしか買えない!!!こんなところで足止めを食う訳にはいかないんだ!!!!ここを通してくれ!!!!!」喉がかれる勢いで叫ぶ。通行人は驚いたような顔で一斉にみる

果汁

「お前を通すわけには行かない!」通路塞ぐように大男が私の前に立ちふさがった。なんであいつがここに!?

ハリネズミ

そいつには見覚えがあった。
「仕方ない・・・」
自分は、この間飲み会に行った時に先輩から貰った分厚い四角い宗教のパンフレットを鞄からだして大男に見せた。
こいつは、このパンフレットを渡してきた本人だ。

ちお

『あまざけ学園七不思議』タイトル:ハリネズミ

これははるか未来の話。
ここ「あまざけ学園」ではごく少人数の中で盛り上がっている話題がある。それが「あまざけ学園七不思議」だ。
実際、これを信じているのはそのごく少人数のみ。他の人は全く信じていない。

ちお

そもそも「あまざけ」とは何か。
学園の資料によると「米」と「こうじ」と呼ばれる食物を発酵-長時間寝かせて菌を増やす-させて作られる甘い飲み物らしい。
なんとも不思議である。

あまざけ

「発酵っていうのは、腐るのとほとんど変わりはないんだ。人間にとって有益か有害かの違いしかないんだよ」そう山田さんはしたり顔で教えてくれた。

果汁

山田の実家は県内でも有名な酒屋だけあってさすが発酵に詳しいのである。将来は杜氏になって家業を継ぐのであろう。

ハリネズミ

流石山田。なんでも知っている。
山田がいればこの七不思議だって解明できるだろう。
そうすれば、この七不思議を信じていない奴らに証明できるんだから。
自分ができることは、山田を持ち上げていくことだけだ。

ちお

「すごいなぁ、さすが山田だ」
目の前の山田は「べ、別に……」とそっけないが、鼻の穴がふくらんでいる。
「なぁ、山田だったらあまざけを再現できるんじゃないか?」

あまざけ

山田は、時間が止まったかのようにピタリと無表情になってこちらを見た。「それはダメだ。それ以上は言ってはいけない」

果汁

だけど私は山田の静止を聞かずつい「◯○○○」とその言葉を発してしまった。一体わたしたちはここで何をしていたんだろう?何かを調べていた?ぼーっと記憶が曖昧な私を秋空の太陽が照りつけていた

ハリネズミ


『赤い水』タイトル:果汁

N県は緑豊かな地域で山岳観光が盛んである
厳しい冬に積もった雪が溶けて春先には
豊富な湧き水がでてくるのが有名なのだが
某村には珍しい赤い水が湧き出てくるのである

ハリネズミ

さてその水、実はとても美味なのだ。
一口飲んでしまえばあっという間に虜になる。
不思議と、口や舌は赤くならないのに、飲めば手が赤くなる。誰がこの水を飲んだのかは明白。某村の村民は、皆手が赤い。しかし、

ちお

ひとりだけ赤くないものがいた。
その人物は青色の瞳を持つ、とても美しい少女だった。

あまざけ

果汁

4ページ目の空白はあぶり出しになっており、その村から春先に湧いてくる赤い水に浸すと文字が浮かび上がってくるのである。浸す人によって文章が変わるのらしいのだ。是非読者の皆様の目で確かめて欲しい

ハリネズミ

その内容は恐ろしい物だったり、面白おかしかったり、他愛もないことだったり。だが一体どんな内容が書いてあろうと、この赤い水に虜になっている人たちは、まったく気にしないのだ。美味しくて仕方がないのだから。

ちお

「赤い水さえ飲んでいれば幸せなんです」
どこからかそんな声が聞こえてきて、ぞっとした。
まともではない。

あまざけ

私は弾かれるようにしてその場を駆け出した。自分の考えが恐ろしくなったのだ。私も、赤い水を飲みたいと。

果汁

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