じゃれ本②
『凶器になりうる絵ハガキ』タイトル:あまざけ
今どき手書きのハガキをもらえると嬉しいものである。だけどその絵ハガキをみて私は激しく動揺してしまった。
針鼠
ハガキの側面(といっていいのか分からないが)に血がべっとりと付着しているのだ。
(多分)郵便配達員さんの血だ!
僕の目にはハガキがギラリと光り、血に飢えているように見えた。
果汁100%
このハガキを持っていてはまずい、そう感じた僕はすぐにゴミ箱に捨てた。
捨てたのと同時に、目の前の風景で変化が起きた。
ゴミ箱がなくなっているのである。
目の前で、あっというまに粉々になってしまった。
ちお
ゴミ箱が粉々になるなんて――もしかして、ハガキを捨てようとしたから?
床にひらりと落ちているハガキを恐々と拾いあげる。
すると、そこには先ほどとは違う、人が首をつっている絵が浮かびあがっていた。
あまざけ
これは呪?一体こんなもの誰が送ってきたのだろうか?
このままでは私はこの絵ハガキに殺されてしまう!
捨てても戻ってくる?!
この絵ハガキを自分の手元から無くすにはどうしたらいいんだろうか?
針鼠
……チェーンメール。
脳裏にその言葉がよぎる。
呪いの絵ハガキは、誰かから送られてきた。
では、自分も呪いの絵ハガキを何枚か出せばとりあえず自分は助かるかも。
助かるはず。
私は郵便局に走った!
果汁100%
「すみません!これと同・・・」
つい、血まみれのハガキを見せたが、慌てて隠す。
「ハ、ハガキをください」
そうすると郵便局員はこう言うのだ。
「先ほど見せていただいたものと同じものでよろしいですか?」
ちお
恐る恐るうなずくと、郵便局員はにんまりと笑った。
「残念ですが、そのハガキはもう廃盤なのです。大変人気だったのですが……どういうわけか、ハガキを購入された方がみなさん3日後にお亡くなりになりまして」
あまざけ
『時が止まっているような感覚でTwitterをしよう』タイトル:ちお
今日もスマホの画面をスワイプする。
人差し指を下から上へ、下から上へ……
あれ? 気がつくと、もうこんな時間!
SNSをやっていると、あっという間に時間が過ぎるよね。
あまざけ
さながらサーフィンのように流れてくる文字の波を漂っていると何気ない言葉だけど目を引くツイートに引き寄せられることがある。
針鼠
電子の海にスマホというサーフボードを片手に情報の波を泳ぐ…つもりでツイートにリプライを返した。
とびきりのユーモアをかましてやろう。
インターネットジョーク!
果汁100%
俺の時間は今無限なのだ!
いつまでもTwitterができる。
目に入る情報すべてにリプライをひたすら返していく。
ほら見てみろ、全リプライの投稿時間が「02:22」で止まっている。俺は手に入れたのだ。
ちお
100件……いや、1000件はリプライを送っただろうか。
時間が止まったことをいいことに、知らない人間や企業アカウントにもクソリプを送り続けた結果、俺は気がついた。
「あれ……1件も返信が来ないな」
あまざけ
自分のリプライに対しても返信がないのはなんとも寂しいものである。
悔しがったり嫌がったり苦虫をつぶすような画面の向こうの相手の反応を想像するのが俺の楽しみなのだ。
スマホがあれば俺は無敵だ
針鼠
……と言いたいところだが、それは噓だ。
思い付きでクソリプを送るような奴にまともな精神状態の人間はいない。
束の間の万能感は急速にしぼみ、段々とイライラしてきた。
果汁100%
「クソっ!」
スマホを思いきり壁に投げつけた。
すると勢い余っていたのか跳ね返り、自分の額に……
音が聞こえる。
気が付くと、アラームとスマホの着信がなっていた。
これは夢だろう。俺は音を止めた。
ちお
『レンガ倉庫』タイトル:針鼠
「そろそろ休憩にしようか」
木箱に入った林檎の積み下ろしが終わり、大きく息をついたところで班長が声をかけてきた。
時計を見ると十二時より少し早い。
果汁100%
この建物は山の中にも関わらず、コンクリート造りだ。
「ふぅ」と息をつき冷たいコンクリートの壁にもたれるが、この硬くて冷たいコンクリートでは休まるものも休まらない。
身体でも動かそう。外を歩く事にした。
ちお
コンクリの建物から出て山の中を歩いていると、遠くに赤いレンガ色の建物が見えた。
私は導かれるように、その建物に向かって足を運んだ。
少しでも身体を休めたかったはずなのに、私の足は止まらなかった。
あまざけ
子供の頃は要塞のように大きく感じていた赤レンガ倉庫も大人になってから眺めてみるとこじんまりとした可愛い倉庫なのにはビックリした。だけど当時の僕達にとっては家や学校とは別の大切な秘密基地だった。
針鼠
僕は当時のことが懐かしくなり、あの頃のようにレンガの壁に向かって軽く体当たりをした。
ざらりとしたレンガの感触が懐かしい。
もう一度、体当たりをすると壁がボロボロと崩れてしまった。どうしよう!
果汁100%
この辺に人が来るとはあまり思えないが、隠ぺい工作をするしかない。
「こうなったら!」
僕はもう一度体当たりをかます。
「くらえ!」
そしてもう一度。
「このやろう!」
繰り返していく内に全てが崩れた。
ちお
「ここまで壊せば問題ないだろう」
隠ぺい工作を終え、ほっとしたのも束の間。
僕はその場に崩れ落ちた。
体力の限界だった。こんな山中で眠ってしまえば、命の保証はないというのに、それでも、立ち上がれない。
あまざけ
「まぁこんな人生も俺らしいかな?」ボロボロになるまで疲れ切った体に最後のタバコがしみわたった
針鼠
『金星のシャーマン』タイトル:果汁
皆は金星を知っているだろうか。
今は2341年。
ちょうど100年前に地球はほぼ滅びてしまった。
だが、それを救ったのが金星にいるシャーマンだった。
今日は、その物語をちょっとだけお話してあげよう。
ちお
今から100年前といえば、2241年。
地球が壊滅寸前だったのは、人類が火星への移住に失敗したからだ。理由は、原住火星民との対立、戦争。
火星と地球との間を取り持ったのが、金星シャーマンったのさ。
あまざけ
金星シャーマンはどのようにして地球と火星の争いをおさめたのか?わたしたちはこのモノリスに歴史を刻み残すことにしたのである。
針鼠
シャーマン曰く、最初のきっかけはごく小さなものであったという。
子供のおもちゃの取り合いであったとも食事の些細なマナーの行き違いであったともいわれている。
しかし、それがきっかけで死傷者出てしまった。
果汁100%
それはシャーマンの心を深くえぐった。
それがシャーマンを大きく動かした。
こうして、シャーマンは金星に拠点を移したのだ。
金星からいつも地球はよく見えた。
目で見ているのか、自分の力でみえているのか。
ちお
金星から見る地球は美しかった。
どれだけ自分が傷つけられたとしても、地球の美しさだけは守らなければいけない。
シャーマンは祈り続けた。地球と、地球に住む人々のために。
しかし、争いは終わらなかった。
あまざけ
「このままでは地球は汚染されてしまう」
そんな終わらない争いに決着をつけるべく金星シャーマンは最後の手段にでる決意をした、それは
針鼠
地球の汚染地域を全て違う惑星へ肩代わりしてもらう技術を使うことであった。
このプロジェクトにより、地球と金星の星間交流は改善した。
尊い犠牲を引き換えにして。
星は今日も巡り、争いは終わらない。
果汁100%