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ヒグマも暮らす大自然の中で野営をする「バックカントリーキャンプ」に挑む -アラスカ一人旅⑤
前回の記事↓
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8月23日
今日はデナリ国立公園に来た目的とも言える「バックカントリーキャンプ」のパーミッションを取りに行った。そもそもバックカントリーキャンプとは何??という方が多いと思うので説明をする。
それは簡単に言うと、人里離れた大自然の中でそれっぽい平らな地面を見つけたらテントを張りキャンプをして何日かかけて荒野を練り歩くということだ。
「荒野」だからコンクリートの道はもちろん、道というもの自体が無い。藪をかき分けて進んでいく。川があっても橋はない。というより人工物は一切ない”本当の”自然の中に入っていくのだ。電気もガスも水道も無い。もちろんネットも繋がらない。あるのは植物で、居るのは動物。文明からかけ離れた世界で大自然を存分に堪能できる最高のアウトドアがこの「バックカントリーキャンプ」である。
写真家・星野道夫氏も荒野で野生動物の写真を捉えるときは何日間も荒野でキャンプをしながら生活をしていた。それと同じようなことをすることが出来る。今回の旅が「星野道夫氏の足跡を辿る」ことを目的に来ているのでこれをやらないで他に何をやるというのか。
デナリ国立公園のホームページにも国立公園でのThings to Doとしてこのバックカントリーキャンプを挙げている。国立公園としてもそういった制度で訪問者が自由に荒野に飛び出すことを認めているのだ。
バックカントリーについて 国立公園公式HP↓↓↓
公園入口のビジターセンターなどがあるエリアの一角に Backcountry Information Center という小屋があり、そこでバックカントリーキャンプをするための許可を取得した。
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このバックカントリーの許可を取得するための手順は以下の通り。
①レンジャーと相談してどのあたり(ユニットという)でキャンプをするのか決める。
②安全講習のビデオを見る。
③個人情報や装備、テントの色などを申請用紙に記入
③レンジャーと口頭でビデオの内容の確認、質疑応答など
④ベア缶をもらう。
以上が許可を取得するまでの流れである。許可を取得する事自体は無料で出来る。ただ、申請したユニットの入り口まで移動するためには国立公園が運行しているキャンパーバスというものに乗らなければいけないので、実質その料金である往復33.25ドル(約5000円)がかかる。
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僕は、適度に野生動物が生息していて、ビギナー向けで、晴れたらデナリが見えるところなどの希望を基にユニット6(テクラニカリバー沿い)を選んだ。この大きな川が目印になるため遭難の危険が少なそうだと思った。日数は3泊4日にした。
ちなみに、このセンターで見る安全講習ビデオは国立公園公式HPからも見ることが出来る。バックカントリーキャンプって実際どういうもの?と思う方は見てみるといいと思う。
映像はこちらから↓↓↓
バックカントリーの許可取得後は公園入口のビジターセンターやキャンプ場周辺を散策した。翌日からついにバックカントリーに旅立つ。
8月24日
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午前11時、バスは荒野に向けて走り出した。しばらくはトウヒの森を走る。段々と標高を上げていき、草木が低く、トウヒがまばらになってきた頃、紅葉し始めのくすんだ赤茶色の高山ツンドラが見えてきた。そのツンドラの上に野生のカリブーがいた。
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やがて自分が申請していたユニット6の入り口であるテクラニカリバー橋で降ろされた。
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この道と橋が最後に見る人工物であり、バスの乗客が最後に見る人間だ。これから4日間は自分一人で道を切り開いて歩いていく。
さて、この先は完全に自由なのだが、目標地点として定めている場所があるのでとりあえずは川沿いを南に下った。
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ここはもう人間が住む世界ではなく、動物たちの住む大自然。つまりは、野生のクマが生息する Bear country である。クマに鉢合わせないように見通しの悪い藪に入るときは声を出す。
"He~~y!!! BEAR!! Human is here~~!!!"
と、(別に英語である必要はないけれど)とにかく大きな声で人間がいることを知らせる。すると、クマの方から離れていくのだという。
実は、案外クマの方も人間を恐れていて、出来るならば近づきたくないのだという。クマが人間を襲ってしまうのは、人間が子熊に近づいたとき、森の中などで急に鉢合わせてしまったとき、自分の獲物を横取りされたときなどである。
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そのため、お互いに最適な距離を保てばクマの方からわざわざ人間を襲うようなことはないのである。
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近年、日本でクマが人間を襲う事故が増えているのは、おそらくそのクマと人間の距離が保たれていないからだと考えられる。ここアラスカは広いので人間とクマが住む世界がしっかりと区分けされていること、そしてこのような国立公園では訪問者が上に述べたようなクマ対策をしっかり行うことで不用意なクマとの接触が起こる可能性は非常に低い。
その他にも、ベアースプレーを持ち歩くこともいざというときに身を守る重要な対策の一つである。国立公園に来ている人はほとんどの人がこのベアスプレーを身に着けていた。
このように、しっかりと対策を取れば野生のクマがすぐ近くの森の中にいるような状況でも安全なキャンプを行うことが出来るのである。
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例の安全講習ビデオの中に 「(クマを含めた)野生動物との向き合い方」 というものがあって、結構勉強になるので読者の方も是非見てみてほしい。ちなみに、日本語の字幕設定も出来る。↓
川沿いの河原を5kmくらい歩き続けた。河原は開けたところと、流れが崖に沿っているところがあり、そのようなところでは川を渡るわけにもいかないので森の中を歩いた。森の中は見通しが悪く、クマと鉢合わせる危険が高いので、出来る限り開けた河原を歩いた。
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上の写真の川がテクラニカリバーで、この川に沿って歩いていた。氷河から流れ出しているためシルトという細かい泥のような粒子を含んだ濁った水になっている。
Double mountainという山の麓辺りに着いたころ、河原に適度に開けて平らな場所を見つけたのでそこをベースキャンプとすることにした。
実は、このDouble mountainが今日目標にしていた場所である。バックカントリーキャンプ中の天気が最も良い予報の2日後にここに登ろうと思っていた。ここに登ると、この国立公園にその名を刻む北米大陸最高峰デナリが望めるとレンジャーから聞いていた。
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誰もいない大自然の中で一人。どこにテントを張ってもいいという最高の自由。これこそがバックカントリーキャンプだ!と気分は高まる。
さて、テントも張ったので夕食にするか、というところだがここでもクマ対策が必要である。
クマの嗅覚は非常に優れているため、テントの中に食料を持ち込んだり、炊飯をするということはクマをおびき寄せていることになり、自殺行為だという。
そのため、食事はたとえ雨が降っていようとテントの外でしないといけない。更に、国立公園が推奨しているのはテントから100m離れた「風下」で食事をするということ。(下図を参照)
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そして、食べ物・ゴミ・歯磨き粉など匂いの出るものを詰めた缶(ベア缶)もテントの中に入れず、テントから100m離れた風下に置く。
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図に書いた三角形は「ゴールデントライアングル」と呼ばれていて、バックカントリーの許可を取得する際にレンジャーから強調して伝えられていた。
これらの対策は自分自身の身を守るためでなく、クマや次の訪問者を守ることにもつながる。一度人間の食べ物の味を覚えてしまえば、そのクマはそれを得るために人間を襲うようになってしまうだろうし、もう野生には暮らせなくなってしまうかもしれない。
このようにしなければいけない対策はたくさんある。しかし、そのおかげで安全にキャンプをすることが出来る。この大自然ではクマを頂点とした生態系が存在し、そこに人間はいない。彼らの世界にお邪魔させてもらっているという意識を常に忘れてはならないのである。
このままMt.Doubleの登山も書きたかったが、記事が長くなってしまったので今回はここまでとする。
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