田舎ではしご酒。壱
2018年12月4日
時間は17時頃
まだコロナが猛威を振るう前の話。
世間は師走という事もあり慌ただしい雰囲気だった。イルミネーションも点灯しておりカップルや子供連れ、学生達等で駅前は賑わっていた。
そんな中、私は友人と会うため高崎駅西口の喫煙所にいた。
西口を出て左手にある野外の喫煙所。17時頃という事もあり仕事終わりのサラリーマンで賑わっている。
一服をし携帯をいじっていると友人が来た。
心之介とスミケンの2人。
心之介はちょくちょく会っていたが、スミケンとは数年ぶりだ。
スミケンは大学生で都内の頭のいい大学に行っていた気がする。
昔から勉強ができ、高校も県内随一の進学校に通っていた。
勉強が嫌いで工業高校に行き高卒で就職した私とは真逆である。
久々の再会に話に花を咲かせていると心之介から今日集合した目的を告げられた。
田舎ではしご酒
内容は、電車に乗り途中知らない駅で下車。
一駅分を歩いてその中で見つけた居酒屋なり飲食店に立ち寄り飲み歩くというもの。
何かの番組のオマージュなのか、はたまたすでにそんな企画があるのかは知らないが楽しそうだったので参加することにした次第だ。
さあ、始めようと思ったが行き当たりばったりの私達はまだどこに行くのかを決めていない。
高崎駅西口付近を散策しイルミネーションを見ながら検討した結果、JR上越線に乗ることが決まった。
高崎から新潟県長岡市までを結ぶ在来線で奥に進むに連れ田舎になる路線。今回の企画にはピッタリだ。どうせなら新潟まで行って途方に暮れるのも面白い。
イルミネーションに名残惜しさはあったが、今度彼女と来ればいいやと思い、高崎駅へ向かった。
高校生の時は電車通学だったため、毎日のように通った改札。
社会人になってからも出張等で電車は利用していたが高崎発の新幹線に乗っていたので少し懐かしく感じた。
改札を抜けて目的のホームまで向かい待っていると電車が到着。
高崎駅発の為、帰宅時間ではあったが座席に座ることが出来た。
しばらくすると電車が出発。田舎への旅が始まった。
電車内ではどんな話をしたのだろうか。恐らく喫煙所の続きで昔の話だと思う。
他にはどの駅で降りるかを話した。
新潟まで行くのは現実味がない
じゃあ県内の一番遠く?
いや、あそこはなにもないところだぞ
前橋市内にしとくか?
そんな結末の見えない会話をしていると隣の市の前橋に入り、最初の新前橋駅が近くなってきた。
群馬県内では高崎についで2番目に栄えている都市。
ここは田舎じゃないということでスルー。
このあたりで確か沼田市ぐらいまで行こうと決めた気がする。高崎駅から1時間ぐらいの場所だ。
高崎前橋と比べれば田舎。程よく離れている。店もそれなりにありそう。好条件だった。
しかし、降り立ったのは「八木原駅」
高崎駅から5駅目、時間にして20分程。
田舎ではしご酒と言う割には近場だ。
今となってはなぜここで下車したのかはわからないが、土地感のない場所や帰りの手段などの不安があったのだと思う。
また、初めて降りた駅ではあるが、知っている「前橋」という場所に安心感をもったのかもしれない。
改札(実際はそんな立派なものではないが)を抜けるとあたりは既に真っ暗だ。
人がいない、コンビニもない駅前はどこか哀愁さえ感じた。
ここから私と心之介とスミケン。
男3人の壮大な企画が始まるのだ。とはならず、とりあえず一服。
さあこれからどうするか。
考えてもしょうがない。とりあえず歩こうと誰かが言う。
こうしてヌルっと田舎ではしご酒は始まった。