宇宙で地球環境を再現!! 〜宇宙環境におけるECLSS(環境制御・生命維持システム)技術〜
ECLSSとは
ECLSSは、Environmental Control and Life Support System(環境制御・生命維持システム)の略で、宇宙環境で人類の活動を支えるために必要不可欠な技術です。ECLSSは、宇宙船や宇宙ステーション、月面基地、火星基地など、あらゆる宇宙環境で人間が生存し、活動するための基盤インフラを構築します。
ECLSSの主要機能
ECLSSは、人類の生存を保証するため、さまざまな機能をシステムとして統合しています。
1. 環境制御(Environmental Control)
真空状態、高温・低温の極端な変化、放射線、低重力などが宇宙空間における人間活動の障壁は数多く存在します。ECLSSの環境制御機能は、これらの過酷な環境で人間が住めるように調整する役割を担います。
1.1 温度・湿度の制御
宇宙空間では、外部温度が極端に変化します。例えばISSでは、太陽側は高温(100℃以上)、影側は低温(-150℃以下)となるため、内部温度を一定に保つための温度調整技術が必要です。ECLSSでは、熱交換器や放熱システム、空気調和(エアコン)技術を利用して、船内を快適な温度範囲に維持します。また、湿度の制御も重要で、快適な湿度状況を維持するため、湿度の調整機能も併せて搭載されています。
1.2 空気供給・循環
宇宙空間では、呼吸による酸素の消費や、接合部からの大気のリーク(漏れ)などの要因により、空気が減少し続けます。そこで、空気供給システムによって酸素や窒素の供給が行われます。タンクに貯めたものを供給することもあれば、化学反応(水の電気分解など)により供給することもあります。大気の処理に関しては、呼気により増え続ける二酸化炭素の回収・再利用や有害ガスの除去なども重要で、そちらは2.1 二酸化炭素・有害ガス除去にて説明します。
1.3 微粒子・微生物の除去
宇宙船内では、微粒子や微生物が環境汚染を引き起こす可能性があります。これらは呼吸によって体内に入り、健康を害する可能性があるため、フィルターによって空気中の微粒子や微生物を除去する必要があります。これはISSでは前述の温度・湿度調整システムに組み込まれています。また、微小重力下においては対流による空気の動きが発生しないため、気流を発生させるファンなども必要になります。
2. 生命維持(Life Support)
ECLSSのもう一つの機能は、人類が宇宙環境で生存できるために必要な「生命維持」です。これは、酸素供給や水の再生、廃棄物処理など、生命に直結する基盤となる技術です。
2.1 二酸化炭素・有害ガス除去
宇宙では、空気中の酸素が次第に消費され、二酸化炭素などが蓄積します。1.2 空気供給・循環 で触れた通り、この対策として酸素供給が行われますが、同時に二酸化炭素や有害ガス(アンモニアなど)の除去も必要になります。二酸化炭素除去装置では、さまざまな吸着材(ゼオライト、アミン、水酸化リチウムなど)が用いられます。また、単に回収するだけでなく、回収した二酸化炭素をサバチエ反応といった化学反応で還元することで、もう一度酸素に戻すという研究もなされています。
2.2 水の再生
宇宙での水資源は非常に限られていますが、地球から水を持ち込むと莫大なコストがかかるため、水再生システムが重要です。水は主に尿や汗、大気中の水蒸気を利用して再生されます。具体的には、蒸留装置や浸透膜を使用して水を浄化・精製し、飲料水として再利用する技術が使われます。この技術は、地球上でも持続可能な水管理技術として応用されることが期待されています。
2.3 廃棄物処理
宇宙空間では、排泄物や食べ物の残渣、使い捨ての下着やプラスチックなどの廃棄物を処理するためのシステムが不可欠です。固形廃棄物の処理や、尿や便の処理はECLSSに組み込まれています。これらは、物理的・化学的に処理されます。しかしながら、現行ISSでは固形廃棄物の処理は行われておらず、補給船に詰めて地球に戻しているという課題があります。
2.4 栄養補給と食料管理
宇宙では、食料の持ち込みに限りがあるため、食料の再生や管理も重要な要素です。ECLSSでは、食料の保存方法、再利用可能な食料システムの開発が進められています。また、栄養補給システムでは、宇宙飛行士の健康を維持するために必要なビタミンやミネラル、エネルギー源を供給する技術が求められます。
3. 健康管理と快適性
ECLSSでは、単に生存環境を提供するだけでなく、宇宙飛行士の健康や快適性も重視されます。宇宙環境は地上と大きく異なるがゆえに、宇宙飛行士には多大な心身の負担がかかります。また、宇宙に持ち込めるものは極めて限られているため、宇宙飛行士のストレス解消にはかなり難があります(参考:Space Life Story Book:https://iss.jaxa.jp/med/images/71532_story.pdf)。
これからより一般人が宇宙に行く時代、このような生活を改善する快適なECLSSの開発が重要になってきます。
ECLSSの技術的な課題
ECLSS技術の開発にはいくつかの重要な課題があります。
1. 高い再生率
ECLSSシステムは、物質を可能な限り再利用し、補給の必要性を最小限に抑えることが求められます。酸素、二酸化炭素、水、栄養素などのリサイクル技術は、地球上での持続可能なシステムにも応用可能であり、その効率性が今後の宇宙開発における重要な課題です。
2. 小型化・軽量化
宇宙環境では、使用する装置のサイズや重量には厳しい制限があります。ECLSSシステムの小型化や軽量化が進められており、これにより、打ち上げコストや使用スペースの制約を克服することを目指しています。
3. 高い安全性・信頼性
宇宙では、機器の故障が直接的な生命の危険に繋がります。ECLSSは、極めて高い信頼性と安全性を必要とし、すべてのシステムは多重化され、故障に備える設計がなされています。
まとめ
ECLSS技術は、宇宙での人間の生活を可能にするための最も重要な技術の一つです。これにより、宇宙での長期滞在や将来的な宇宙開発が現実のものとなり、人類の活動範囲を地球から宇宙へと広げることが可能となります。Amateras Space株式会社は、このECLSS技術を基に、より効率的で持続可能な宇宙開発に貢献することを目指しています。
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