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【長編小説】ダウングレード #27

 西川が車を停めて店長が古びたアパートに入って行ってから、もう十分近く経っていた。運転席の西川はハンドルに手をかけたまま道の先の景色を見ている。後部座席に座った耀も窓の外を眺めていた。
 菅原は耀の処遇はこれから検討すると言っていた。市長には報告するだろう。G2のメンバーにも意見を聞くのかもしれない。溝口かなえはきっと辛口の意見を出すだろう。
「俺の処遇を決める会議とか、あるんですか?」
 耀は西川の後頭部に向かって声をかけた。西川は肩越しに振り向いて、また前方を見た。
「会議、あるらしいですね。早ければ今頃もう始まっているはず」
「G2のメンバー以外に誰が参加するんでしょうか?」
「さあ、それは俺も聞いてないから……」
「西川さんは参加しなくてもいいんですか?」
「……俺はああいう場は苦手だから」
 耀は膝についた両手を組んだ。
「どんな事を話し合っているのか、西川さんなら分かるんですよね?」
 西川は黙っている。
「ただ訳もわからず待たされるのって精神的にきついですよね。せめてどんな検討がされてるのか選択肢の一部だけでも聞けたら少しは気が楽になるのに」
「それはどうだろう……。楽になるって言っても……」
 西川は言葉を切って視線を自分の手元に落とした。迷っている? 耀は少しおおげさにため息をついた。西川に嘘は通じないだろう。耀は仕事をくびになり新しい仕事が見つけられなくて自暴自棄になっている自分を想像した。急激に心が沈んで暗闇に引き込まれるような気がした。この感情に飲み込まれないようにしなければうまく元に戻れないかもしれない。けれど暗い井戸に落ちたような閉塞感と孤独感は、スピードを増してとても調整などできそうもなかった。
「話に上がっていることを聞くだけで、本当に気が楽になるのか?」
 耀が顔を上げると西川がこちらを見つめていた。
「そうですね。真っ暗闇よりは、たとえ遠くでも何かの形が見える方が自分の位置を把握できますから」
「……俺に分かるのは映像として見える参加者の思考だけだ。実際にどんな話になってるのかは分からないし、菅原さんの思考は部分的にしか見えない。それでも?」
「はい」
「……水道局への配置換え。これは多分今回のことでどれだけ水道局に負担が生じたかを実際に安慶名くんに見てもらうため。次に、別の違反事実をねつ造して形だけ処分を受けさせる。意味がわからないな。それからもう一つ。永続的ダウングレード」
 西川は耀の目を見つめて情けなさそうに口を半開きにした。
「安慶名くん嘘つきだな。ぜんぜん気が楽になんてなってないじゃないか」
 西川に指摘されて自分の頬がひきつっていることに気が付いた。確かに気が楽になんてなっていない。むしろ知らない方が良かったかもしれない。特に永続的にダウングレードさせられるかもしれないという点は、すでにかなり落ちていた気持ちが更に暗くなった。
「いえ。それでも、情報はありがたいです」
 耀は平静を装って言ったが、西川に嘘は通用しないだろうから、無理に笑顔を作るのはやめた。
 西川がふっと前に視線を戻し、耀もつられて前方を見た。店長がアパートのドアを開けて手招きしている。西川と耀は車を降りて店長の部屋に向かった。
 玄関には小さな傷がたくさんついたクーラーボックスと、保存容器で冷凍されている食材がアルミ蒸着の袋に二袋分、キャンプ道具が詰め込まれた大きなナイロンバッグが五つ置かれている。
「トランクまで運んで」
 店長は部屋の奥からキャンプ用の折りたたみチェアを三脚抱えて来ると、靴を履いて車へ向かった。

          * * *

 パチパチと薪がはぜる音がする。流れる水音がそれに混じって聞こえる。空には星が瞬いている。石を組み上げた炉の中で燃える薪に手をかざしながら、耀はキャンプ用のチェアに身体を預けて星を見上げた。
 左横を見ると同じようにチェアに身体を預けて店長が目を閉じている。耀の右側には西川も同様に座っているが、西川は暗闇の奥の草むらの方を見ている。
 店長の家を出た後二時間ほど車を走らせ、林の中の小川が流れる岸にテントを張った。店長は慣れた手つきで夕食の準備を始めた。途中で買い込んだミネラルウォーターのボトルは川の水に浸して「波動調整」した。野菜や肉は炉に網を置いて焼き、バケットも火で炙った。コーヒーは特製の豆らしく、店のものより果実のような香りが強い。暖かい食事と飲み物を堪能した後は、片づけを簡単に済ませ、三人とも火に手をかざしながら自然と黙り込んだ。
「どうしてキャンプなんですか?」
 耀は独り言のようにつぶやいた。
「楽しいだろ?」
 店長が目を閉じたまま返事した。
「寒いですけどね。でも、俺を預かるってことは、俺の今の状態を変えるために訓廉とか、研修とか、何かするわけですよね? 今のこれはムチの前のアメってわけですか?」
「アゲちゃんまじめだよねぇ」
 店長が笑った。西川は黙って二人のやりとりを聞いている。
 店長は小川の水面を指さすようにすると、クイッと指を天に向けて弾いた。川の中央付近からザバッとひとかたまりの水が持ち上がり、球形を作って浮いた状態を保っている。店長が手の平を開き、指を扇ぐように動かすと、球体の中から小さな水の玉がポツ、ポツと跳ね上がり、順番に水面に落ちた。
 西川は急に立ち上がると、イスを持って店長の横に移動した。
「今の、どこへでも飛ばせるんですか?」
「まあ、ある程度ならね」
 店長は球体に向かっておいでおいでをするように指を動かした。球体は西川の目の前まで来るとそこにピタリと止まった。西川が不思議そうに右手を伸ばして水を触ろうとすると、店長は球体をツイと川の中へ飛ばした。ザプンと音がして球体は消えた。
「触らない方がいい。人間の身体も水分でできてるから影響を受ける」
「水が水へ影響するってことですか?」
 西川は水面を見つめたまま聞いた。
「そういうこと。振動が伝わるのと同じ」
「それは人から人へも影響するってことですか?」
「そう。人と人の場合は、水の影響だけじゃないけど。思念の波動とかもあるから」
 西川は耀と店長を見比べた。
「俺、安慶名くんのそばにいると、体がすっきりするんで近くにいるのが好きだったんですけど、中村さんのそばにいても同じように気分がいいです。これはやっぱりお二人が持ってる力の影響なんですか?」
「俺にはよくわからないけど、そのすっきりする感じはわかるような気がする。そう言われれば俺もアゲちゃんといると落ち着く」
「今は安慶名くんヘタってるんで、俺中村さんの近くで今日寝てもいいですか?」
 それで入り浸っていたのかと耀は合点がいったが、なぜかちょっと寂しい気持ちになった。乗り換えて捨てられたような? イヤイヤと心の中で首を振った。
「えー、俺の睡眠を邪魔しないならいいけどさ」
 店長は怪訝そうに言った。
 一瞬間が空いた。店長は水面を見ている。
「甘いもの食べたいな。ニシちゃんさぁ、来る途中にコンビニあったろ? 車でちょいっと行って、あそこ限定のブラウニー買ってきてよ。もう一杯コーヒー淹れるから」
 西川は一瞬片眉を上げたがすぐに無表情に戻り、分かりましたと言った。店長は財布から札を出して西川に渡した。
 西川が車を停めている方へ行くのを目で追いかけ、しばらく待ってから店長は耀に振り向いた。
「大丈夫か?」
「え?」
 何に対しての大丈夫かという質問なのか分からず、耀は一瞬答えに詰まった。自分の置かれている状態を振り返って、急に胃が重く感じた。
「はあ……そうですね。大丈夫……だと」
 店長は口角を上げて笑った。
「まあ器物損壊なら賠償求められるかなぁ? アゲちゃん一生返済のために働いて終わるかもね」
 その可能性もあるか、と耀は更に加わった暗い未来を頭の中でリストにした。
 自分が選んだ仕事で職場では努力もしてきた。普通の業務では役に立てている自負もある。それを失うことになるのは辛い。けれど一番気が重いのはそれではない。
「永続的ダウングレードってのが一番つらいです。あの二ヶ月間、俺は毎日不平不満ばかりだった。またあの状態に戻るのは……」
「そんな処分になるって?」
「いえ、まだ決まった訳じゃないんですけど」
 ふぅんと店長が顎に手をやりながら空を見上げた。
「でもダウングレードの間は覚醒後の記憶はないんだろ? 比較対照がないわけだから、それなりにやってけばいいじゃないか」
「何て言うか、自分のことで精一杯で、周りの人の言葉や行為をぜんぶねじまげて受け取ってたんです。あんな状態じゃとても誰かの力になるなんてことできそうにない」
「それはどうかな。覚醒してなくても、人助けしたり誰かの役に立ってる人はいっぱいいるじゃないか。覚醒非覚醒とは関係なくないか?」
「そうですね。結局は俺自身の問題だと思います。でも、それでもダウングレードの状態よりは、今の方がきっと力になれるのに……」
「和佳ちゃんのこと?」
 耀は返事をしなかったが、店長は肯定と受け取ったようだった。
「俺も和佳ちゃんには誰か支えになってくれる人がいればいいなと思ってたから、アゲちゃんが彼女のそばにいると安心だけど」
「……彼女が受け入れてくれるかはまた別の話ですけどね」
 耀は自分で指摘して落ち込んだ。
「和佳ちゃんは、す、好きな人とかいるんでしょうか。そんな話、聞いたことありますか?」
「ないねぇ。って言うか、恋愛とかそんな余裕はないって感じだったし」
 店長のその印象は正しいだろうと耀は思った。周りの人間を信じられないのに、誰を好きになるというのだろう。
「アゲちゃん、まあしょげずに気を楽にしろよ。なるようにしか、ならないから」
 なるようにしかならない。確かにそうだ。けれどその言葉は、今の耀にはとてもキツい。
「……そうですね」
「今回は死人が出た訳じゃないし」
「それはそうですけど」
 耀は一歩間違えば二人殺していたかもしれないことを思い出した。
「俺の時は、一人死んだ」
 耀は店長が何の話をしているのか分からず、次の言葉を待った。
「俺もアゲちゃんと同じことしたんだよ。それで庁舎が水浸しになって、暖をとるために庁舎内にかくれてた浮浪者のじいさんが、水没した地下室で発見された。今の庁舎に建て変わる前の話だ」
 何か言わなくてはと思ったまま、耀は言葉が思いつかない。亡くなった人のことを思うと、何を言っても正しくない気がする。その時店長はどんな気持ちだったのだろう?
「……それで役所を辞めさせられたんですか?」
「……正確には自分で辞めた。菅原が奔走して、俺はお咎めなしだったから続けることもできたし、菅原も何度も引き留めてくれたけど」
 耀は何か言おうとしたが、やはり今の自分では何を言っても食い違っている気がする。迷っているうちに店長が先に話し出した。
「どんな仕事だろうと自分次第だよ。覚醒してなくたって、それもちゃんと人生だし」
 違う仕事、違う毎日、制限された状態。それもちゃんとした人生。本当にそうだろうか。この先どうなるのだろうか。
「明日から特訓ですか? ここでずっとですか?」
「まさか。教えたって急にできるわけじゃないよ」
「でも、俺を預かるってことになってるんでしょ?」
「預かってるじゃん。こうやって」
「……」
「菅原は時間稼ぎのためにアゲちゃんを俺に預けたんじゃないかと思うよ」
「時間稼ぎ?」
「いや、分からないけどね。単なる俺の印象。指導しろとは言われたけど。そんなのさ、どんなに訓練したところで感情が乱れれば暴走するだろ、誰だって。まあ、俺も制御できるようにがんばったけどね。でも、一番大事なのは感情をコントロールすることかもな。自分起因なら修行でも何でもして何とかなるかもだけど、自分以外の他者が絡むと、簡単じゃないよな。特に大切な人の事だと……」
 耀は店長の言葉を頭の中で反芻した。店長の感情を乱した他者とは誰なのだろうか。
 足音が近づいてきて、振り向くと西川の姿が見えた。店長はニコニコしながら西川に手を振った。
「ニシちゃーん、おつかれ!」
 店長は、立ち上がり、湯を沸かす準備を始めた。西川は買ってきたブラウニーを配給のように一つずつチェアに置くと、店長のそばへ行きコーヒーが淹れられるのを見ている。そばにいると身体がすっきりする。それが本当なら、自分のそばにいる人すべてにその効力が現れるのだろうか?
 店長がプラスチックのマグカップにコーヒーを注ぐと、西川が二つ手に持って、一つを耀に渡した。西川は自分のチェアを火に近づけて座り、ブラウニーの袋を片手と歯でちぎって褐色の焼き菓子にかじり付いた。他の人とタイミングを合わせようとは思わないところが、西川らしい。
 店長も自分のイスに戻り、ブラウニーを口に放り込んでコーヒーを口に運びながら耀を見た。
「アゲちゃん、食べないの?」
「砂糖はあまり摂らないようにしてるんです。体調が揺れるというか、体調よりも、感情が揺れるというか」
「何だそれ、随分繊細だな」
 西川がキラキラした目で見つめている。
「西川さん、食べますか?」
「いいの?」
 返事をする前に西川が立ち上がり手を伸ばしてきた。店長がにやにやしている。
「ニシちゃんも甘党なんだな」
「アマトウ……それはどうでしょう?」
「菅原も甘いもの好きだけど。あいつ酒も飲むけど甘いものも大好きだから」
「菅原さんにケーキの食べ放題に連れて行ってもらった事があります」
 西川はうっとりした表情で記憶をたどった。
「それ菅原も甘いもの食べてただろ? 自分一人だと行きにくいから口実に使われたんだよ。女性を誘うと職場で色々と不都合だから、ニシちゃんが適任だったんだろ」
「テキニン……」
 西川は何か考えているようだったが、すぐに放棄したのか自分のコーヒーに視線を戻した。 
「あいつは、奥さんを口説いて口説いて、待ちに待って三年かけて結婚したんだけど、アゲちゃんが言うように砂糖がメンタルに影響するから奥さんは砂糖抜きの生活してた時でさ。一緒に甘いもの断ちしてた時あったよ。今もきっと家では食べないから外で食べるんだろうな」
「三年……」
 耀は無意識に声に出ていた。
「そうそう。アゲちゃんも女性を口説くなら、参考にして長期戦の構えでいった方がいいかもな」
 耀は菅原が妻について話していたことを思い出した。
「ニシちゃんは菅原の家に行ったことある?」
「ないです。特に用もないですし」
 店長が軽く吹き出した。
「あいつ絶対家に呼ばないんだよな。きっとめちゃくちゃ嫉妬深いんだぜ。かなえさんの話では奥さんはすごい美人らしいんだけど、写真すら見せてくれない。可愛くないよな」
「よけいなことして怒らせない方がいいですよ。菅原さん怒ったらほんとマズいですから」
 西川が真顔で言った。

 テントが二つと寝袋が二つ用意されていたので、それぞれテントを組み立て、服を着込んだまま寝袋に入った。西川は自分の寝袋を使い約束通り店長のテントに行った。
 水辺からは離してテントを張ったので水音はあまり聞こえない。耀はナイロンのテントの天井を眺めた。
 ファスナーを下ろしたテントの開き口の外に、何かがいる気配がした。テントの中の様子を伺っている。テントのファスナーの引き手がチャラと音を立てた。
「誰?」
「西川です。安慶名くん、こっちで寝ていいかな? 開けますね」
 ファスナーを開ける音と共に姿を見せた西川は、片膝を地面についている。
「店長のテントに行ったんじゃないんですか?」
「いびきがすごくて。寝られないんです」
 そう言われればウシガエルが鳴くような声が遠くに聞こえる。
 西川はするりとテント内に入ってくると、手に丸めて持っていた寝袋を耀のとなりに広げた。耀は少しずれて場所を空けた。西川は背が高いのに動きがスムーズで、圧迫感を感じる前にするりと寝袋に収まった。
「せっかくキャンプなのでヘッドフォンつけたくなくて。人が少ないから、こういうところはいいですね。余計なものが頭に入ってこなくて」
 耀はふーんと曖昧に相づちを打った。
「俺のそばにいると体調がすっきりするって本当ですか?」
「本当です」
「どんな風に?」
「リセットされる感じですね。リラックスできます」
「へえ、何でだろう」
 西川は質問に答える気はなさそうだった。首の下まで器用にファスナーを引き上げると、寝袋の中でごそごそと身体を動かして、心地よい姿勢を探っている。
 西川は自分がしたいこと、自分が欲しいことに正直に動く。耀はそれがうらやましいと思った。自分が何をしたいのか、何を選びたいのか、それを自分で決め、自分の人生を作っていけるなら、例え間違っても納得がいくのではないか。
 今までは人と深く関わることを避けてきた。人に近づくのはものすごく恐ろしい。だがもう、そんなことを自分自身望んでいないと分かってしまった。
 今こうして考えていることも、ダウングレードしてしまえばきっと覚えていないだろう。その時自分はどうするのだろう。そもそも和佳が自分を拒否したら、もう何もできることはないのだろうか。和佳のまわりの、和佳を利用しようとする人間だけでも遠ざけることはできないだろうか。
「あの時の二人の男ですけど」
 見ると、西川が天井を見つめている。
「しばらくは、違法行為やそれに近い事はしないと思います」
「それって……」
「昔、説教の方法のひとつに地獄絵を見せるっていうのありましたよね。あれと同じような映像を見せてやったので、後ろめたいことをしようとするときっと動悸や吐き気におそわれるはずです」
「そんなことできるんですね……」
「それだけのことをあの二人はやろうとしていたので。もちろん主犯ではなくて、連れて行くだけの役割でしたけど」
「それだけのことって?」
「あの日、安慶名くんが助けに行ってなければ、奥原さんは殺されていたはずです。そのために彼女を連れて行こうとしていた」
 胸の中に黒い気体が充満したように息苦しくなった。西川が少し身体を動かして距離を取ったように見えた。
「主犯が誰か、西川さんには見えてるんですか?」
「そこまでは分かりません。でも警察でも、岡田の交友関係をたどって捜査がされているはずです。その捜査であぶり出せるかは分かりませんが」
 耀は西川が自分の思考を感じ取ってその話を始めたのだと気が付いた。心を見透かされているようで急に恥ずかしくなった。西川に背を向けるように寝返りをうった。そうしたところで何も変わりはしないのだが。
 数秒静かになって西川が起きあがる音がした。
「俺やっぱり車で寝ますね。安慶名くん、ゆっくり休んで下さい。おやすみなさい」
 寝袋から出てそれをざっくり畳むと、這うように西川がテントから出て行く。耀は声をかけようと口を開いたが、何と言っていいのか分からずに、固まっているうちに西川の足音がして、また静かになった。



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