独身アラフォー女性の奮闘記#21 恋愛のスキル回しが下手くそすぎる女
相変わらず私はゴリ夢中だ。あ、間違えた。五里霧中だ。
ゲームでは最新のつよつよ装備を徐々に手に入れて、スキル回しも練習して、高難易度ダンジョンに攻め込んだり、メインジョブ以外のジョブステータスもカンストさせてどんどん強くなっているのに、リアルの恋愛の話になると、ずっと初期設定のまま成長できていないような気持ちになる。
ゲーム攻略はちょっとネットで検索すれば、スキル回しの最適解も攻略のためのマクロもすぐに見つけられるのに、恋愛についてはどこに書いてある情報も信用ならぬ。あと、そんな高校生みたいなこと言われても…みたいな気持ちになる。恋愛偏差値、高校生以下のくせにな。
そんなわけで、直近の出来事を記録目的で綴ってみようと思う。
40歳でヘラってる
前回キングクリムゾンさんにお会いしてから、その後全く音沙汰がない期間が続いた。年度末ということもあり、私も忙しかったし、仕事の後輩の退職が決まったりで結構バタバタしていたので、極力考えないようにはしていた。
でも、1週間が過ぎ、10日が過ぎた頃、ちょっとメンブレを起こしてしまった。
私は恋愛をすると、好きな人のことを結構考える、割とお花畑になってしまうタイプ。毎日のおはようおやすみとかそういうマメな連絡は要らないけど、ちょっとしたことで気軽に連絡しても鬱陶しがられない相手だったらいいなって思う。でも、キングクリムゾンさんの連絡頻度はめちゃくちゃ少ない。前から言っているけれど、彼の都合に大きく左右されているような印象で、それは多分、あながち間違ってはいないと思う。
それでも、どうしても、連絡がないのは脈なしのサイン、としか思えなくて、本当に気持ちが落ちる時がある。少しでも好きなら、どうでもいいことでも、おはようだけでもいいから連絡してくれたら、時々は私のことを考えてくれるんだなって思えるのにな。
そんな淡い少女趣味の意見など、彼の前では通用しないのだ。
もしかしたら、考えたとしても、用事もないのに連絡したくないタイプなだけかもしれない。そうであってくれ。さもなくば私のメンタルがもたない。
しかし、私は根負けしたらダメだと直感的に思っていた。
ここで、耐えきれずにこちらから連絡したらダメだ、と私の中のリトルアマリリスが言っているような気がした。何故ならば、最後に連絡を取り合った時に、彼が落ち着いたらまた連絡をくれると言ってくれて、私はそれに対して「待ってるね」と伝えたからだ。だんだん、「待て、長すぎでは?」という気持ちが大きくなる一方だったが、私は戌年生まれなので、ヨシのサインがあるまで待ってやろうじゃないか、という謎の負けず嫌いという名の強がりを発揮して、夜な夜な「今日も連絡が来なかった」と枕を濡らした。
仕事も多忙だったので、そうこうしているうちに、私はソフトメンブレを起こしたのだった。それでも、自分からの連絡は我慢した。3月末日を迎えて、やっぱり彼のことはもう、諦めるべきだなんてことが頭をよぎったりもした。
サクラじゃないのかも知れない
私にはオタク友達がいる。好きなバンドのライブに一緒に行く友達3人と私の4人でよく集まるのだが、いつしか我々は自分達のグルーピングを「軍団」と自称するようになっていた。なので、以後、軍団というワードを多用させてもらう。
4月最初の日曜日に、軍団と久しぶりに集まることになっていた。場所は、私の地元。フルーツパーラーと焼肉を予定していたので、午後のティータイムと夕食の時間、ガッツリ軍団と一緒に過ごすことになっていた。
年度末で忙しくしていたが、みんなに会えるのは楽しみだった。でも私には別の目的も生まれていたのだった。
キングクリムゾンさんは甘党で、一人でパフェを食べに行くとかいう女子力私より高いエピソードを以前披露していたので、フルーツパーラーでパフェを頼んだら、パフェの画像を送りつけながら「4月になったけど会う時間作れない?」と連絡するつもりだった。女々しいな。
そんなわけで、3月最後の週を終えて廃人と化していた31日金曜日、YouTubeでゲーム関連の配信を見ていた私は、その日はゲームにログインもせず、翌4月1日にたくさんゲームすることにして早々に就寝の準備をした。布団の中でYouTubeのアプリを開いてスクロールをしていたら、下記の動画がレコで上がってきた。なんで。
こういう系の動画は基本信じてないけど、ヘラっていた私は珍しくこの動画をタップした。目的は、コメント欄。「本当に連絡がきました!」みたいなコメントを流し読みしながら「サクラだろw動画見ただけで連絡くるとか、んなわけあってたまるかww」と脳内で悪態をつきつつ、心の奥底では、ほんの僅かに期待したのかもしれない。その晩、そのまま動画を開いたままで就寝した。
翌日、少し遅めの朝10時半に目が覚めて、ベッドでしばらくごろごろしながらお腹すいたなーって思ったタイミングで起き、好きな配信者の枠を聴きながらキャベツが傷む前にお好み焼きを作ろうと準備をした。フライパンで焼き始めて、ひっくり返すタイミングを伺っていた時に、携帯の通知が鳴った。休みの日の午前中に鳴る通知は、LINEの企業アカウントか配信の通知だと思っていたのだけど、お好み焼きをひっくり返して通知を消そうと携帯を見たら、キングクリムゾンさんからの連絡だった。
それもたった1行の「こんにちは!」。
botかよ!!!
企業アカウントの方がもうちょっとしっかり内容詰めてLINEしてくれるよ!というツッコミを抑えつつ、昨晩見たYouTube動画を思い出して「嘘でしょww」と思わず口に出した。
マジでありえないでしょ。
私は上記の「こんにちは!」は、既読がつかないように確認した。何か改行して続きがあると思ったから。でも、本当に、これ1行だけで、逆に「何?」と思ったけど、お好み焼きをお皿に移してから「こんにちは、元気?」という返事をした。そうしたら堰を切ったように長文でこれまでのいきさつと、ランチのお誘いを頂いたので、焼き終えたお好み焼きにそっとラップをかけて、「行きたい!」とお伝えした。
願ったり叶ったり
以前、そろそろ夜のご飯だけではなくて、休みの日に普通にデートがしてみたい、と書いたような気がするが、意図せず叶うことになった。
夕方に仕事の打ち合わせがあるから、本当にお昼間の短い時間になってしまうけど、という連絡だったが、それでも会いたかったし、いつも通りうちの方に来ると言われたけど、ランチはあんまりいいお店がないから、彼の最寄りに行きたいと言ったら、それで良いというので、私は支度をして電車に乗った。
よく晴れたお天気で、気温も高くて、なんだか突然の春の訪れに心から浮かれた。
ランチをしながら、今期見ていたアニメの話になり、声優の話題になった時に、数年前に彼が朗読劇に行った話をされたのだけれど、その公演を私も軍団の友達に誘われて観に行っていたので、すごい偶然だね、なんて話にもなった。声優の朗読劇なんて、ガチめのオタクしか行かないはずなのに、そんなことあります?っていう気持ちで、私はまた「やっぱりこの人面白いかも…好き!!!」ってなってしまうのであった。
ご飯を食べて、まだ時間があったので、お茶をしようと場所を変えることになり、最近テレビで取材されていた近所のカフェがいい感じだから、混んでなかったらそこに行こう、とお散歩しながら歩いた。道すがらの緑道は桜が満開で、好きな人と桜を見るのなんか、10年ぶりくらいかも知れなかったから、私は密かにとても嬉しい気持ちになって彼の隣を歩いた。
目的のお店は、テレビの取材効果と、お天気の良さで信じられないくらいの行列だったので諦めた。そして、彼の家の近くの喫茶店に入った。
お店に行くまでの間、昔住んでいた家の話や、そこで飼っていた犬の話を聞いた。普通の女の人が聞いたら引くような、実は親世代の女性の家に居候をしていたとかいう謎エピソードも聞かされた。私自身、寮で生活したり、ハウスシェアしたり、幼馴染の実家に居候していたこともあったので、まあ、あんまり珍しいことでもないかな、みたいな感覚で聞いていた。その女性との関係は追求しなかったけど、仕切りに「部屋は別だったし」とか、「ヒモみたいに聞こえちゃうかも」と気にしていたので、そういうのではないと信じたいと思う。あと、実際私の元彼はヒモみたいなもんだったし、ヒモっぽいタイプってことは結局、私のストライクゾーン狙い撃ちじゃん…て気付いてしまったので、その事実の方がダメージが大きかった。
喫茶店では、お互いの家族の話をたくさんした。いわゆる、お互いのバックグラウンドの確認作業?探り合い?というよりは、家族の面白エピソード披露みたいな感じだ。お互いにあけすけに話ができてよかったな、という読後感が残って、満足している。
あと、彼が頼んだコーヒーがとっても好みの味で美味しかったらしく、「一口飲んでみて」って言われたのが嬉しくて、ニヤニヤしてなかったか心配だ。
私は彼のことを好きなので、彼に対しては「会えて嬉しい」「ありがとう」「楽しい」などは直接、目を見て言葉に表現して伝えるようにしている。キングさんは、初めて会った日から今日に至るまで、全ての飲食代を出してくれて、私が「お茶代くらいは」と言っても、支払いを済ませてしまっているような人だ。そして、この日も駅まで送ってくれて、改札でまたねとお別れをしたのだけど、「私たち、なんで付き合ってないんでしたっけ…?」としか思えなかった。
元同僚の婚活エピソードを参考にしてみる
少し話は逸れるが、私が広告代理店に勤めていた時に、ガチ婚活をして弁護士と結婚した営業の女性がいた。彼女は、どんなに仕事が忙しくても、1年間は絶対に毎週末アポを入れて、人と会い、デートをする人を最終的に3人に絞ったらしい。そして、翌年にはそのうちの1人と絶対に結婚するつもりで、付き合いを並行させていたそう。そんな彼女は、その「翌年」が来る前年の年末までは、相手は何をしようが、「全て優しく許す」ことにしたそうだ。浮気しても許したらしい。そして、つけあがるかどうか、後ろめたさで身を引くかどうかとかを徹底的に精査し、最終的に1人に絞り、本当にその1人と結婚して、今でも幸せそうにしている。
彼女の結婚当初、私は「本当に結婚したい人ってそこまでするんだ」と思ったことを覚えている。私はそんなガチで婚活する気もなかったし、そこまでして結婚したいと思ったこともなかった。
でも、今になって、私は彼女のやっていたことで「全て優しく許す」を実行したいと思っている。人間の本質が見えるようになる気がするし、自分にとっても学びがありそう。私の思考回路のクセの良くない部分もきっとあって、他者の価値観とかにも柔軟に耳を傾ける作業を丁寧にすることで、その人と自分が本質的に合うかどうか見えてくる、というのは今なら理解できるからだ。
そしてタイムリーに、しいたけ占いにこう書いてあった。
すごくない?流石ですわ、しいたけさん。
私はすぐに返事が来ないとか連絡がないとか、好きなら私のことを考えたりして連絡くらいあってもいいじゃんとか思いがちだけど、「相手のスピードに合わせる」に関しては、今はそうしてみる時なんだろうな。
普段だったら、しいたけ占いにも書いてる通り、短気を起こして「どうせ合わないんだ」みたいになっていたはず。私も成長してるんだ、キングクリムゾンさんのおかげで。婚活成功者の体験談が今になって効いてくるとは。
やはり、何事もご縁とタイミングなんだろうな。
真夜中のラップと売れないバンドマン思考
キングさんとのランチ翌日、予定通り開催した軍団の集会で、私は経緯報告をした。特に、一緒に声優の朗読劇に行った友達は「本当にさあ!あり得ないんだけど」とか言って、実際、彼は優柔不断っぽい態度なので、友人たちからの好感度はあまり高くないけれど、彼が私にぶっ刺さってる理由が理解できてしまうから、やめなよって強く出られないらしい。むしろ「そんな人なかなかいないよなぁ」とも言っていた。
また話は飛ぶが、私の家は商店街のはずれにある。そして、古いマンションなので、道ゆく人の喧騒はリビングにいると良く聞こえる。
先日、深夜1時すぎにマンションの前で若者がラップバトルを繰り広げていた。あまりにも下手くそで、韻も踏めてないしうるさいしイライラしたので、華麗なるライムを刻んだディスりのラップで黙らせようと3−4分リリックを捻り出そうとしたが、そもそも私はロック少女だった故、ラップなんかしたことがないので良いラインが全く浮かばなかった。結果、ただ窓を開けて「うるさい!」と注意するだけになってしまい、非常に悔しい気持ちだ、という話を軍団にした。
すると、彼女たちは、「ラップで黙らせようとするのは、普通だったら思いもしないしありえない思考回路だけど、アマリリスちゃんなら考え得るからまだいいとしてwwwラップバトルってそんな日常的に起きる?そもそも『家の前でラップバトルしててさぁ』って何w」と大爆笑していた。
私としてはラップで黙らせることができなかった悔しさへの共感を求めるつもりで披露したエピソードだったが、そもそもストーリーの主軸から間違っていたことを指摘されたのが恥ずかしいし、滑稽さが面白すぎて一緒になって笑った。ただ、何が最悪って、この話を私は嬉々としてキングクリムゾンさんにもしていたのである。
でもね。いいんだ、頭のおかしい女と思われても。そもそも40歳で独身の時点で大概ちょっとはおかしいんだから。後方彼氏面で「おもしれえ女」くらいに思ってくれる人の方が私も楽しいし。何より、こんな変なエピソードトークしてもキングさんだって笑ってくれてたし!?
最近思うのよ。一緒にいて楽しい人がいいじゃん。誰だってさ。
緊張したり、何を話そうかなって考え過ぎてお互いを知ることができないより、おバカエピソードでもなんでも、とりあえず自分が楽しいとか面白いと思ったことを話してみて、結果一緒に笑えるならいいじゃない。
しかもさ、キングさんだって年齢は私と変わらないのに、めちゃくちゃ真顔でYouTuberになりたいって話もしていた。普通だったら「いい歳して何言ってんの?」ってなるけど、私は仕事でその辺のことはかなり詳しいので、本気でやるなら、という前提で、戦略的アドバイスをした。私は、高校生の夢みたいなことを言うキングさんを「そんなの無理だよ」とか「やめた方がいいよ」なんて否定はしなかった。むしろ背中を無駄に押してしまっているくらいだ。
仮に私が婚活女だったら、そんなのやめなよの一点張りになると思う。
けど、私は同世代なのに売れないバンドマンみたいな思考回路のキングさんを受け止めた。歴代の元彼が、売れないバンドマンだったので慣れたものだwwそして私自身は婚活女でもないし、相手の財力とかに拘ってもいないし、この歳になってもやりたいことがあるって素敵だと思う。
なんか、居候エピソードとか、元も子もない上記のYouTube発言とかを経て、彼はガチでただの私の性癖どまん中男なだけである、という理解をした。友人たちも、もう何も言うまい。
軍団に「なんでそういう男ばっかり引き寄せるの?」って聞かれたけど、引き寄せているんじゃくて、私が引き寄せられているだけである。無駄な嗅覚。
なんだかんだ夢見たって
問題ない世の中ですって藤井隆も歌ってた。
だから私もまだ諦めないことにする。連絡が来ないとメンヘラ発動しちゃうけど、相手のペースに合わせて頑張ってみる。
だって、きっと彼も私と居て、話していて、楽しかったと思うんだ。
私は楽しかった。
もうね、「この人、所詮Tinderだし」なんて思ってもいない自分がいる。
お手つきなんだけど、なんか今はもう、そんなことはどうでもよくなっているみたい。
相手にとっては都合のいい女かもしれないけど、ただのスローペース男なだけかもしれないし。連絡するよって言われて、時間はかかったけど、今回はちゃんと、本当に連絡をくれたわけで。
春だからちょっといつもより大きめの振り幅で浮かれているけど、面白くなってきたんじゃないだろうか。私は、ちょっと嬉しくて、ちょっと悲しい時もあって、感情のスキル回しがど素人だけど、ゆっくりでもいいから、どこか着地点が見つかったらいいなって、今はこっそり、心の奥で考えている。