【初心者OK】4冊の本とともにデータ野球の歴史を楽しく学ぼう!
12月も残り2週間となりましたね。学生の方も社会人の方も忙しくされていることと思います。
ぼくは1月から働き始めるために、卒業論文をがんばって書き進めたり、選手名鑑を開いてホークスの選手を覚えたりしています。選手の顔以外の部分を下敷きで隠して暗記していると、受験勉強を思い出します。
他にも野球関係の本をたくさん読み直したりしたので、自分の内容の復習もかねて、MLBでのデータ活用をおもしろく学べる4冊の本とともに、データ野球の歴史を振り返ってみましょう!
マネー・ボール
まずはこちら、言わずと知れた本家の「マネー・ボール」です。ブラッド・ピットさんが主演を務めた映画版も有名ですね。
メジャーリーグのアスレチックスというチームでGM(チーム編成の権限を持つ役職)に就いたビリー・ビーンが、劇弱&超貧乏なチームをメジャー随一の強豪に変えていく、という話です。
プロ野球選手からフロントマンに転向したビリーは、野球に統計学を持ち込んだ「セイバーメトリクス」という考え方を積極的に活用し始めました。守備よりも攻撃、打率よりも出塁率を重視する新たなスタイルで、実力の割に年俸の低い「おトクな」選手をどんどん獲得していったのです。
するとその結果、他球団と比べて総年俸が1/3程度なのに、勝利数がもっとも多いチームができあがってしまいました。チームの強さが財力に大きく依存していた当時からすると、これは革命的な出来事だったのです。
歴史の中で見るとこれは2000年代初頭のことで、メジャーリーグにおけるデータ活用の始まりともいえる話です。そして使っているデータも出塁率や長打率、三振数、四死球数など、従来から存在していたデータを使っていました。
ビッグデータベースボール
次はこちら、2010年代前半のピッツバーグ・パイレーツを舞台とした「ビッグデータベースボール」です。
先ほどの「マネー・ボール」は主に攻撃面でのデータ活用が中心でしたが、今度はパイレーツが守備面でのデータ活用に乗り出します。
具体的には、キャッチャーが際どいコースをストライクと判定してもらうための技術である「フレーミング」、今やメジャーでは当たり前となっている「偏った守備シフト」の導入などをいち早く行なったのです。
さらに偏った守備シフトの導入によってゴロをたくさんアウトにできるようになったので、ピッチャーはツーシームなどの速くて小さく変化するボールを増やし、投手成績も向上しました。
その結果、2012年まで20シーズン連続で負け越していたチームが、なんと2013年から3年連続でポストシーズンに進出するほどの強豪チームへと変貌を遂げたのです。
この背景には、「PITCHf/x」と呼ばれる新しい機械の導入がありました。この機械ではストライクゾーンのどこをボールが通過したか、キャッチャーがどこで捕球したか、などを知ることができます。
このテクノロジーのおかげで、それまでほとんど注目されてこなかった「フレーミング」という技術の重要性がわかり、キャッチャーの一つの評価指標として注目されるようになったのですね。
アストロボール
次はこちら、「アストロボール」です。「ビッグデータベースボール」のすぐ後、2010年代中盤ごろの話が書かれています。
2011年から3年連続100敗以上と散々な成績だったヒューストン・アストロズは、プロ野球経験がなくマッキンゼー出身と異色の経歴を持つジェフ・ルーノウをGMに置きました。彼はアナリストのシグ・マイデルとともにデータ主導のチーム改革を行い、2015年にはリーグ優勝、2017年にはワールドチャンピオンまで上り詰めました。
「マネー・ボール」や「ビッグデータベースボール」では、出塁率や打球方向などのデータ化しやすいところに注目していましたね。アストロズではこうした分析に加え、選手のメンタル面やチームの雰囲気などデータで扱いにくい部分があることを認識し、うまくバランスをとりながらチーム改革を進めていったのです。
ルーノウは「人間が気付くことは数値化できる。数値化できればそこから学ぶことができる。」と言いつつ、「数値化できないからといって、存在しないという意味にはならない。」とも言っています。
歴史的な背景でいうと、「マネー・ボール」や「ビッグデータベースボール」のようなデータが浸透し、データ面では球団ごとの差が少なくなっていました。
そこで従来からのデータという「ハードな」部分に加え、直感や感覚などの「ソフトな」部分の価値にも目を向け始めたアストロズが成功した、といえるのかなと思っています。
ビッグデータ・ベースボール革命
最後はこちら、「ビッグデータ・ベースボール革命」です。この本は題名のとおり、野球界で最近起きている「革命」について書かれています。
現在起きている「革命」とはいったいどういうものなのでしょうか。
ここまでにご紹介した3冊では、データを選手の評価や試合での戦術などに使っていました。つまり、データを分析し活用するのは主にチームの編成に携わるフロントスタッフや、試合で指揮をとる監督などが中心でした。
しかし、近年では選手自身が自分の能力を上げるためにデータを活用するようになってきています。これこそが今野球界に起こっている「革命」なのです。
例えば、「ビッグデータベースボール」では打球方向を分析して偏った守備シフトをしき、ピッチャーはゴロを打たせてアウトを稼ぐ、という考え方が出てきましたね。それに対する打者の対抗策として、打球速度の速いフライを狙ういわゆる「フライボール革命」が起こりました。ここまでは以前から起きていたような投手と野手の攻防です。
ただこれまでと違うのは、スイングの軌道や速度などを測定するスイングセンサーを活用し、「フライボール革命」を実現するためには自分のどこが課題で、どう修正すれば良いのかという方法までもがわかりつつあるのです。
他にも、高精度のカメラを活用して理想の変化球を投げるために必要なリリースや投げ方を習得したり、科学的知見を活用して定量化が難しいメンタルスキルを向上させたり、ということが行われています。
こうした背景により、メジャーリーグの世界では少しずつ元プロの選手でないコーチやスタッフも増えています。「マネー・ボール」から約20年を経て選手の編成においては球団ごとの差が小さくなり、現在では選手の育成が競争優位性を生む根源となっているのですね。
まとめ
というわけで、ここまで4冊の本とともに野球界におけるデータ分析の発展を振り返ってきました。
野球界における主流の戦略が時代とともに移り変わり、またテクノロジーの発展によってどんどんデータ活用が浸透していることがわかっていただけたかなと思います。
とはいえこのnoteはかなり要点に絞って書いたので、書ききれなかった部分がたくさんあります。原作はこの100倍くらいおもしろいと思います。
というわけで、ぜひ年末年始のお時間ある時にでも原作を手にとってみてくださいねー!
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