League of Legendsのプロチームを3年応援してきた僕が伝えたい「観る」というゲームの楽しみ方
日本の挑戦が、ひとつ、終わった。
League of Legendsの春の世界大会「MSI」。日本リーグ代表として挑んだDetonatioN FocusMe(DFM)は、東南アジアリーグ代表のPSG Talonとブラジルリーグ代表のLOUDにそれぞれ0-2で敗北し、MSIから敗退することとなった。
僕はいちDFMファンとしてこの上なく悔しく思っているところだが、この3年ほどLoLのプロシーンを応援してきた立場から、改めてこの「LoLのプロシーン」というコンテンツの面白さをみんなに伝えようと思ってこの文章を書いている。
LoLをプレイしたことがないという人も安心して欲しい。LoLをプレイしたことがなくても、選手やチームのストーリーに着目すれば、十分に楽しめるし、実際そういう「観る専」のような楽しみ方をしているファンも多い。
LoLってどんなゲーム?(さらっと紹介)
LoLというゲームはなかなか難解で、初見の人は何をしているか分かりにくいと思う。なのでここでは本当に要点だけに絞って説明したい。
LoLは5vs5で戦う陣取りゲームだ。チームは5人で協力しながら相手のタワーを順番に破壊していき、最終的に相手の本拠地(ネクサス)を破壊すれば勝利となる。
特徴的なのは各メンバーに明確に役割が存在するということだ。以下に各ポジションの簡単な説明を書いておくが、じっくり読む必要はない。求められる役割が全員違って、みんな求められた役割を発揮して初めてチームが成立するということが分かれば良い。
Top 1vs1で戦うポジション。タンクやファイターといった殴り合いに強いキャラクターが選ばれることが多い
JG(ジャングル) 各レーンの間にあるジャングルを回る遊撃のようなポジション。マップを自在に移動してそれぞれのレーンに介入し、人数差を作り出す役割
Mid マップの中央のレーンで1vs1をするポジション。マップコントロールとファイトの両方が求められるため、エースが配置されることが多い
ADC マップの下のレーンで2vs2をするポジション。遠距離からたくさんダメージを出せるかわりに耐久がペラペラなキャラが選ばれることが多い
Sup(サポート) ADCを隣で補助するポジション。味方を守ったり、相手の動きを止めたりと補助性能に長けるキャラクターが選ばれることが多い
日本におけるLoLの位置づけ
正直、日本においてLoLは決して大流行しているとは言えない。そもそもプレイするには奥が深すぎる。1試合に平気で30分以上かかるし、そもそもPCでプレイするオンラインゲーム自体が他の国に比べて日本ではあまり流行していない。
最近ではk4senさんやshakaさんといった有名配信者が遊んでいるため少しずつ認知が広がってきたが、それでもLoLが市民権を得ている韓国や中国、EUなどの地域に比べればまだまだ、といったところだろう。
そんな日本にもLJL(League of Legends Japan League)というプロリーグが存在している。リーグのレベルとしては韓国、中国、EU、北アメリカなどのメジャー地域には及ばないものの、近年ではメジャー地域の優勝経験者の獲得に成功したり、有望な新人が出てきたりと少しずつリーグ全体のレベルが上がってきている。
レベルの上がってきているLJLで5シーズン連続で優勝しているのが僕の推しチーム、DFM(DetonatioN FocusMe、デトネーション フォーカスミー)なのだ。最強。
DFMというチームを知る
DFMというチームを知るために、まずは去年までのDFMというチームについて語りたい。
去年までのDFMは国内でまさしく圧倒的だった。
日本人最強のTopであるEviと、日本人最強のADCであるYutapon。ゲーム理解度が高く、日本語⇄韓国語の通訳もできる韓国人JGのSteal。
この3人を軸としながら、MidとSupに助っ人韓国人2人を置いて戦うチームの完成度は国内では敵なしだった。
国内で敵なしというだけではなく、世界大会でも結果を残し始めていた。
2021年の世界大会「Worlds」ではプレイイン(マイナー地域のチームが集まる予選大会)を突破してグループステージに進出した。MidのAriaはLoL界の生ける伝説Faker選手をソロキル(1vs1で相手を倒すこと)した。
2022年のWorldsではプレイインの突破は叶わなかったものの、元世界一のチームである中国代表RNGに1ゲーム取った。
世界のレベルに少しずつ手が届き始めている。DFMファンは全員そう思っていた。
今年に入り、衝撃的なニュースが飛び込んできた。
日本人最強トップレーナーであるEviが、EUリーグのチームに移籍する。
日本人が海外のリーグに挑戦した例はなく、野球で例えるなら日本人として初めてメジャーリーグに移籍するような快挙だ。
日本というLoL界ではマイナーな地域から、メジャー地域であるEUに移籍。これがうまく行けば、日本で活躍した選手が海外に挑戦するといういいサイクルも生まれるかもしれない。ファンたちの期待は高まった。
一方で、DFMというチームで見ると戦力ダウンは避けられない。
Eviは国内で最強なだけではなく、世界戦で出てくるトップレーナーに対しても1人で有利を作れるだけの実力を持っていた。そのEviが、いなくなる。
Eviの公認として選ばれたのは弱冠20歳の期待のルーキー、tol2。
tol2はAXIZという別のチームで数試合ではあるが出場経験があった。
当時はトップレーンでアクシャンやドレイブンといった普通はピックされない強気なキャラクターを出すような尖ったプレイヤーで、荒削りではあるものの、日本最強のEviに対して果敢にチャレンジする姿勢を見せるなど、将来に期待が持てる選手だった。
DFMの一員となったtol2を楽しみにするファンたちの前に出てきたのは、奇抜なキャラを繰り出していた以前のtol2ではなく、サイオンやグラガス、マルファイトといったザ・タンクキャラを多用するトップレーナーに改造された新生tol2だった(笑)
tol2を加えた新生DFM。
Midには2021年にDFMで活躍し、その後韓国のKT Rolsterというチームで経験を積んだAriaを起用。
Supは2022年から引き続きHarpを起用した。日本に来る前は韓国のKT Rolsterのサブ選手として登録されており、韓国でも活躍を期待されていた選手だ。世界大会の出場経験を積むためにDFMに2年契約で加入している。
シーズンの序盤こそ何度か敗北したものの、中盤から終盤にかけてチームとしての完成度を高めてきたDFMは、大型補強を加えたSG(Sengoku Gaming)やSHG(Softbank Hawks Gaming)などのライバルチームを下して、MSIへの切符を手に入れたのであった。
tol2個人で見てもシーズン序盤に散見された噛み合わない動きやわかりやすいミスは減ってきており、LJLのトップレーナー内で比べても十分上位と言って良い成績を残していた。
新生DFMが挑んだMSI
そして新生DFMで挑んだ世界戦は苦い結果に終わった。下馬評では「正直tol2の仕上がり次第だが、上振れすれば十分予選突破もありうる」という評価だったように思う。
tol2にとっては初めての世界大会、それに初めてのオフライン大会という要因が重なった。日本の大会はコロナの時期からずっとオンラインで開催されており、観客の歓声が入る場所で戦うこと自体、新たな体験だっただろう。
全体を通してぎこちなさが目立った。いつもより少しタイミングの早いエンゲージ(戦闘開始)、普段なら起こらないようなミクロのミス。tol2が大事なタイミングでアルティメットスキル(必殺技)を何度か外してしまったシーンもあった。tol2だけでなく、チーム全員が少しずつぎこちなく、国内で見られたような素晴らしい連携も見ることができなかった。
PSG Talonとの1試合目は序盤から有利を広げられ、なすすべもなく敗北。2試合目は9000ゴールド近い大きな有利を持っていたにもかかわらず、チームファイトの敗北がずるずると尾を引き、逆転敗北を喫してしまった。
2戦目となるLOUD戦ではtol2のパフォーマンスは若干改善されたように見えた。一方で、チームとしての連動は引き続き精彩を欠いたように思う。tol2がTopを離れて味方を助けるために動いている途中で味方が捕まり、tol2は戦果を得られないままトボトボとTopに戻っていく、というようなシーンが散見された。 Ariaは相手にカウンターを当てられることも多く、普段のようなパフォーマンスを出しきれなかった。 5vs5の集団戦の際もチーム全体の連携がうまくできず、Yutaponが操るジンクスが敵の攻撃に晒されるというシーンがあった。
試合後のインタビューでは、YutaponとHarpがそれぞれ悔しさを口にした。世界戦に照準を当てた準備がしきれなかったようだ。
いちファンボからすると、今回のMSIは不安を抱えながらの戦いだったように思う。
大黒柱であるEviが抜け、tol2が加入。他地域との練習試合でもボコボコにされることが多い(コーチ談)tol2が世界戦でどこまで通用するのか。
国内では問題にならような小さなミスも容赦なく突いてくる相手ばかりの中で、他のメンバーがどれだけ実力を発揮して勝ちにつなげることができるのか。
残念ながら敗退となったが、ファンの目線からすると「tol2のパフォーマンス、特にメンタル面が思ったより強そう」ということが分かったのは大きな収穫、安心材料だったように思う。
世界でも名のしれたトップレーナーが次々と出てくるような場所で、初戦で大きなミスもしてしまった新人選手が、たかだか10分のインターバルでメンタルを持ち直して普通に試合に出れているということ自体がなかなか凄まじいことなのではないだろうか。
夏のLJLで優勝すれば、次は夏の世界大会「Worlds」が待っている。
伸びしろたっぷりの新生DFMが、どのような姿を見せてくれるのか楽しみでならない。
ここからのMSI
さて。日本代表のDFMは敗北してしまったわけだが、MSIはまだ続いている。
少しLoLというゲームを見てみようかな、と思った人は韓国代表のT1というチームを追いかけるところから初めることをおすすめしたい。
T1は生ける伝説Fakerを中心に、各レーンに世界トップクラスのメンバーを有する、文字通り世界最高峰の実力を持ったチームだ。
Fakerの凄さについては「Faker 実績」などで検索すれば山のように伝説が出てくると思うので詳細は割愛するが、世界最高峰のリーグである韓国リーグ(LCK)で10回以上優勝しているベテランであるという点を押さえていれば十分だ。
去年のWorldsでは惜しくも決勝で敗北して準優勝に終わったものの、いつでも世界一を狙える実力のあるチームであることは疑いがないだろう。
ちょっと通ぶりたい人は中国リーグ(LPL)代表のJDGか、EUリーグ(LEC)代表のG2あたりを応援してみると面白いかもしれない。
次にDFMが見られるのはいつ?
MSIが終了すると、少し間を開けてLJLの夏シーズン(Summer Split)が開催される。DFMを始めとして、8つのチームが世界大会「Worlds」への出場権を賭けて激闘を繰り広げる。
配信はTwitchとYouTubeで行われるので、見やすいプラットフォームを選んで見てほしい。どの試合も実況と解説がついているので、ルールやキャラクターが分からなくても、見ているうちに段々と理解が深まっていくに違いない。
また、最近では配信者たちと一緒に試合を見るウォッチパーティも開催されている。
さいごに
他の多くのプロスポーツと同様、チームと選手の背後にあるストーリーや歴史を知ると「プロシーン観戦」というコンテンツを深く楽しむことができるはずだ。
今回はDFMというチームを中心にどっぷり語ってみたので、ぜひLoLのプロリーグ観戦という世界に飛び込んでみてほしいと切に願っている。
LoL観戦めっちゃ楽しいよ!!! #DFMWIN !!!
(このnote中に貼った画像は LoL Esports Photos より引用した)