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【漫画原作】アクトライズ【第6話】
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↓【第1話】はこちら!
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みらい導線 図書館(自習室)
カリカリカリカリ。
ペンが走る音が響く。平日はしばらくまともに勉強できていなかったからこう集中できる場所があるととても助かる。お陰様で数学Iの1章の予習が終わりそうだ。
カリカリカリカリ。
みらい(よし。区切りもいいしこの辺りで終わろっかな)
カバンからスマートフォンを取り出す。14時37分。この時間なら家に帰ってもう1科目勉強できるだろう。ふぅと小さく息をつく。筆記具をお気に入りのペンケースにしまって席を立つ。
カラン、コロン。
落ちた音が室内に響く。足元を見るとボールペンが転がっている。辺りを見渡しても探しているそぶりの人は見当たらない。…どうやら手元に夢中になっている隣人の物らしい。足を揃えて屈んで拾う。横着をして立ったまま取らない。こういう時にも気を抜かないことが世界一の女になるための1歩だ。
みらい「落としましたよ」
にっこりと微笑んでボールペンを差し出す。周りは集中している人ばかりだ。迷惑にならないほど小さな声でかける。
しかしどうだろうか隣人はこちらを見向きもしない。なんて仏頂だと思ってしまう。よく見るとヘッドホンをして何かを書きなぐっているようだ。大きな音漏れこそはしてはいないが少々場違いなのではと思ってしまう。
みらい「あの…」
シャカシャカシャカシャカ。
みらい「あの〜…落としましたよ」
シャカシャカシャカシャカ
みらい「あ の!お と し ま し た よ!」
隣の男「あ。すみません。ありがとうございます」
思わず声が強くなってしまう。ボリュームに反応してか周りの目線が少々痛い。しょ、しょうがないじゃないか…こんだけ声掛けても反応しなかった相手が悪いんだし…。
彼はまた手元に戻ってしまったがちらっとみた顔は前髪で隠れて見えなかった。目悪くならないのかな?
まぁ。そんなこともあるよねなんて軽く流してその場を後にする。
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みらい導線 住宅街
みらい「んー…」
外に出て伸びをする。今日は随分と捗ったな…。授業の予習復習、課題。おまけにノートのまとめまでできてしまった。思わず鼻歌なんか歌ってしまう。
まだ入学して1週間経ったくらいだが今のうちにスタートを切らなければいつ誰に越されるかわからない状況だ。気を引き締めなければならない。
にしてもだ。こんなに順風満帆に見えて一つネックになっていることがある。
みらい「新入生歓迎会ねぇ…」
ふとあの時のことを思い出す。
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回想 被服室
むげん「そうだ。新入生歓迎会。毎年6月にあるこの学校の恒例行事だ。…と言っても軽い学芸会みたいなものさ」
みらい「はぁ」
あかり「建前は1年生の歓迎。本音は各部最後の勧誘チャンス。文武両道と名乗っているこの学校らしいちゃらしいけどね。」
みらい「つまりはそこで部員の勧誘をしたいと」
むげん「さすが成宮。読み込みが早い」
あかり「この学校、部活は強制参加だからまだ決まりきっていない生徒にとってはかなりの後押しになるんだよね」
むげん「それにだ」
むげんは少し深刻そうな声色で話し始める。
むげん「部員は最低でも5人必要だ。部の存続申請の期限も6月末まで。つまり演劇部が存続できるリミットも限られているというわけだ」
みらい「なるほど…。」
あかり「あれ?部員はどうにかなるって言ってたからワタシ戻ったんだけど」
むげん「もちろん無鉄砲にやっているわけじゃないさ。ただ数は多い方がいいだろう?」
あかり「それもそうか」
みらい「あの…それで…私にも関係あるんですか?そもそも私も新入生というくくりなんですけど…」
むげん「関係あるも何も主演だろ、成宮」
みらい「はあ?!」
あかり「そう心配するな。ある程度のことはこちらがサポートする」
むげん「そういうことだ!めいいっぱい演じるといいぞ!」
だああ!!また勝手に話進めて…!!
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みらい導線 住宅街
みらい「…って急にそんな事言われてもなぁ…」
ピーンポーン
しかもよりによって定期テストが終わったすぐ後にあるし…私も新入生なんだけどな…
ピーンポーン
またなんか流されているような…先輩二人に増えたし…ここをなんとかしないとあのカメラの映像もどうにかしないとだし…。
ピピピピピピピーンポーン
みらい「誰ですか?!こんな傍迷惑なピンポンラッシュしてるのは!!」
って…
みらい「先輩?なんでこんな所いるんですか?」
チャイムをした方を見ると私服のむげんが怪訝な顔をしながら誰かのインターフォンを見つめている。へぇ。先輩、私服シャツって割とキレイめなんですね。もう少しカジュアルな感じかと思っていましたよ。なんて少し見ていたらこちらに気づいたようだ。
むげん「ん?あぁ、成宮か。君もこっちの方なんだね」
みらい「君もって…この地域学校から結構遠いですよね?私以外に誰かいるんですか?」
???「うげ」
うげ?
疑問に思ったのもつかの間、ふと声がした方に顔を向ける。そこは植え込みしかないはず…だが…
人影…というより足が見える。するとどうだろうか。すかさずむげんは植え込みの方へとずんずん歩いてゆく。しばらく時間が過ぎ出てきたかと思うと…
むげん「みつけたぞっ!!」
声が聞こえたと同時に隠れていたであろう男を小脇に抱えて出てきた。抱えられていると言うよりかは首に腕をかけられているようで傍から見たら首を絞められているような…。し…死なないかそれ…?大丈夫…?にしてもこの男、どこかで見たような見てないような…
???「む…むげんく…し…しぬ…」
みらい「あ!さっきの!」
おもわず指をさしてしまう。そう。先ほど図書館で出会ったあの男だ。ヘッドホンシャカシャカ目隠れ男。
むげん「成宮、知っているのか?_」
目隠れの男「むげ…く…ぎ…ぎぶ…」
みらい「詳細は後で話しますからとりあえず早く腕を離してあげて先輩!」
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みらい導線 近所の公園(ベンチあり)
目隠れの男「っはぁ…〜むげんくん、全く君ってばいつも横暴なんだから…」
むげん「すまんすまん」
けほけほとから咳をする目隠れ男。先輩にかなり強い力で締め付けられていたのだろうか涙目になっている。にしても先輩その態度は軽いな…。加害者意識というものを少しばかりは持った方がいいのでは…?
むげん「紹介しよう。彼は 天音かなた (あまね かなた)。高校2年。僕の友人で我が部の幽霊部員の一人だ。」
かなた「幽霊部員って…部室に行ってないだけでやることはやってるじゃないか…」
にっこにこ笑顔で紹介する先輩とは対照的にかなた先輩は大きなため息をついている。あぁ…その気持ちとてもよくわかる。わかるぞかなた先輩。
みらい「そもそも先輩に友人と呼べる方がいらっしゃったんですね」
むげん「おい成宮。言葉のナイフには気をつけるんだ」
思わず真顔で本音がでてしまった…。いっけなーい。いっけなーい。
みらい「にしてもピンポンラッシュは近隣住民の方のご迷惑にもなるので次から気をつけてくださいね」
かなた「うちの部にしては随分まともな子が入ってきてくれたね…」
むげん「騙されるんじゃないぞ、かなた。成宮はまともに装ってるだけだからな」(スマートフォンで例の踊っている動画を見せている)
ああ!!こらああ!!誰彼構わずその即興ダンスを見せびらかすんじゃない!!そしてかなた先輩もあぁ…やっぱりってかわいそうなものを見つめる目でこちらを向くんじゃない!!!それは誤解なんだ!!ご・か・い!!!
みらい「こほん。それでなんで先輩はかなた先輩の元に来たんですか?」
むげん「そうそう!すっかり忘れるところだった。もう一度部に戻ってくれないか?」
会えた喜びで事を忘れないでよ先輩…。かなた先輩のはやれやれと少々鬱陶しそうに口を開く。
かなた「もう一度…ていうより僕はあかりちゃんみたいに部活のことおざなりにはしてはいないんだけど…。むげんくん。君にはいくつかデモ渡したよね?」
デモ?そう答えると彼は持っていたカバンからノートPCと…
みらい「あ、さっきのノート」
そう。先程図書館で見かけたあのノート。
タン。エンターキーの音を合図に耳に映像が流れる。
それはあの時部室で見た星空が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えるような。そんな不思議な感覚。
むげん「そうそう!!これだよかなた!!さすがだな!」
かなた「まあ…頼まれたからね…。やることはちゃんとやるから」
むげん「どうだ?成宮もいいだろこの…」
そのむげんの声は届かない。彼女は手を伸ばす。いや思わず…手が伸びてしまったのだ。
みらい「星だ」
その声を皮切りに公園が、青空が星空に変わる。そよそよとかすかに風が流れる。
かなた「な…なんだこれ…」
むげん「…やはり君は逸材だよ成宮…」
困惑するかなたを横にむげんは思わず笑みをこぼす。ああそうだ。彼女は誰よりも嘘を被ることに長けているのだから。
ふとみらいは我に帰る。二人ともこちらに目を向け固まっていることに気がつく。
みらい「はっ?!すみませんつい…」
むげん「あぁ、構わない。…すごいだろ彼の音楽も」
みらい「はい。まるで先輩の物語を見たときみたいに情景が目の前に広がりました」
かなた「ちょっと…二人ともそんなことしてもなにも出てこないよ…」
そう言うかなた先輩はちょっと嬉しそうにモジモジとしている。…褒められ慣れてないんだな。
かなた「まぁ、あかりちゃんがあんなにはしゃぐいだのも彼女を見たらわかったよ。またやるんだね、むげんくん」
むげん「あぁ、もちろん」
そうかなた先輩が言うと私に手を差し出す。
かなた「改めて。僕は天音かなた。演劇部では音響を担当しているよ。よろしくねみらいちゃん」
みらい「よ…よろしくお願いします。かなた先輩」
おずおずと手をだして彼の手を取る。
むげん「よし!これで4人だな!あと一人!」
みらい「先輩…私まだ本入部するって言ってませんけど…」
そうだ。この先の学校生活を穏便に過ごすためにも私にとってはどうにかしないといけないことだ。6月末の仮入部期間、ここまでに何としてもあと数人勧誘しなければならない。まぁ、ちょっとした我慢ってやつだ。だけど…なんだろ。ほんのちょっとこの未来に期待している自分が、いる。
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※おしらせ
現在週1更新としておりますが体調を崩してしまった為しばらく月1更新とさせていただきます。(詳細はこちらの記事にて)
楽しみにしてくださった方、今回更新がかなり遅れ大変申し訳ございませんでした。
ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いします!
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