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【漫画原作】アクトライズ【第7話】

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みらい動線 教室

みらい「…これはやってしまったかもなぁ…」

神妙な顔を思わず手で覆ってしまう。もう少しで今週最後の授業が始まるというのに。チラリ、と指の隙間から教室を見渡す。

女生徒「ねぇ昨日のドラマみた~?まっちゃんカッコよすぎない?!」
女生徒「見た見た!!ゆりこに告るシーンめっちゃキュンキュンした!」

左から右に視線をずらす

男生徒「なぁ宿題やった?!!見せてくんね?!ジュース奢るから!!」
男生徒「しゃーねぇな?今日だけだぞ?」
男生徒「うわぁ助かるわ!!マジ神…!」

クラスには生徒たちの賑やかな声が飛び交う。そう、教室には既にいくつかのグループができ始めている。一方私はというと…1人自分の机にいる。つまりこれは…

ぼっち……!!

確かに高嶺の花になるべく行動はしていたがまさかこうも裏目に出てしまうとは…。オマケに地元から遠いところを選んだのも相まって顔見知りすらいない。話し相手も居ないもので思わず本を広げて読んでいるふうを装う。
まぁまぁまぁ。まだ焦るときではない。私だけではなく若干名も机にむかって音楽を聴いたりシャーペンを走らせているではないか。それに勉強はついていけているし1番は取れている。元々のプラン通りではないか。たかが親密な友人が出来ないだけで不安に思うことはないが…。

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みらい動線 被服室

みらい「はああぁぁぁ」
むげん「はああぁぁぁ」

被服室内にため息が響く。それも2人分。以前よりも少し片付いたのも相まって若干反響して聞こえる。

みらい「なんで先輩までため息つくんですか。マネしないで下さいよ!」
むげん「マネしたのは君の方だろ?」

むげんはやれやれと言いたげに頬杖をつき手をヒラヒラさせてる。

みらい「そういえば例の3年生の件どうなったんですか?」
むげん「それがなぁ…」

彼は歯切れが悪そうにこう言った。

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回想 むげん動線 美術室前

むげん「え…帰って来れない…?」

想定外の言葉に思わず目を丸くしてしまう。しまったこれでは予定がくるってしまう。

3年女子「そう~ごめんね進藤くん。あれから美術部の活動も楽しくなっちゃって…今も勧誘の展示用作品を描いてるんだ」
むげん「その…せめて衣装…いや在籍だけでも…」

汗がたらりと首筋を伝う。冷たい。正直彼女が部の存続の最後のピースだ。大会に出ない3年は6月末を持って部活動終了となる。つまり3年生でも在籍している期間に申請さえすれば部の存続はできるのだが…。

3年女子「それが結構制作も大詰めで…掛け持ちは難しいんだよね…(後ろから万里ーそっちの進捗はー?と声が聞こえる)」

ガーン!!なんてことだ!あと一人。そうだあと1人。でも一体誰を頼ればいいっていうんだ!むしろ今までが着々と事が進みすぎたのか…?

3年女子「あー…でもね…」

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みらい動線 1年教室廊下前

みらい「その妹さんが1年に居るから勧誘してこいと…」

このクラスで間違っては居ないんだろうけど…思わず扉の後ろから様子を伺ってしまう。ほんっと人使い荒いのにもほどがあるだろあの男…。こちとら入学早々友人一人すら出来ていないのに勧誘だなんて尚更ハードルが高すぎる…!
(廊下をすれ違う生徒が 成宮さんだー 何してんだろー? とすれ違いざまに会話している)
放課後の教室の中はと言うと数人の女子生徒が和気あいあいと談笑をしていた。

女生徒「…でさーあの先生めっちゃ口癖酷くない?」
女生徒「あはは!ほんとウケるこの前授業でめっちゃ言ってて思わずカウントしたわー!!」

うわぁ…人の話題で盛り上がってる…。正直この雰囲気はあんまり好きじゃないんだよな…。なんて思っていると、ある生徒がこちらに気づいたようで先程より少し小さな声で会話をし始めた。

女生徒「…ねぇみてあれ」
女生徒「あっ笑学年トップ様じゃん~」
女生徒「えー?なに?うちらの事バカにしにでも来たの~?うっわ性格悪~」
女生徒「しっ!声大きいって笑」

あはははは!!教室に女生徒達の笑い声が響く。
そうだ。こういうことは想定内だ。1位だからといって誰にも好かれるわけじゃない。むしろ疎まれることの方が多いことだって十分承知の上だ。でもこうも目の前で見てしまうと心にくるものがある。…それに友達ができないのは自分が要因であるってことも理解している。けれど…けれど…

ガタッ!!
突如教室に音が響く。

???「ごめーん!あたし今日用事あんのわすれてた!」
女生徒「ちょっとせんり!静かに立ってよ!びっくりしたわ」

せんりと呼ばれた女子生徒は立ち上がり帰り支度をしている。なんだなんだ…?

女生徒「えー?じゃあこのあと行く予定だったクレープは??」
せんり「ごめん!来週にまわして!じゃ!」

彼女は教室を後にする。ふと出て行く彼女と目があう。彼女はそのまま後に…はせず他の女生徒にみえない位置で立ち止まり私に話しかけた。

せんり「そういうあなただってうじうじしてていいの?言いたいことあるならハッキリ言わなきゃ」

せんりと呼ばれた女生徒は少し冷たいような目でこちらを見た。その目はとても透き通っていてまっすぐこちらを見すえていた。
そうだ。彼女の言う通りだ。またあの時みたいに誰かに蔑まれるのが怖くて怖くて仕方なくて。自分から1歩も踏み出せていないではないか。
覚悟を決めろ成宮みらい。私はやれる女だ。
重くなった口を開く。

みらい「…っ衣川(きぬかわ)さんっているかな…?」
せんり「それあたしだけど…」
みらい「え」
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みらい動線 通学路 駅前付近

みらい「いいの?ゆっくりしていて。用事あるって…」
せんり「あー…あれ全部嘘。あーいう空気苦手なんだよねー」

あの教室で話すのもなんだし帰りながら聞くよ、と思わず誘われてしまった…。
先輩からは『部活の勧誘ができるなら今日は帰って構わない!!』と返信が来ている。
誰かと登下校ともにするの高校入ってからは初めてだな…なんて思いながら足を運ぶ。思わず横目でチラリと彼女を見る。
校則にぎりぎり反することの無いであろうメイク。爪は綺麗に整えられていてうっすらマニキュアを塗っているのだろうか?つやつやしている。だが髪はというと色素の薄い水色でゆるふわ系?夢系??ってやつなのか?ピンクのカーディガンとマッチしていて可愛らしい雰囲気を出している。にしてもこれは校則にかなりアウト寄りなのでは…?
なんせ前までは教室の隅で本を読むタイプだったもんであまりそういう派手な子との付き合いなんてない…!!
こういう子ってどういう話題で盛り上がるんだろう…??それにどうやって部活を進めれば…

せんり「そういえば成宮さん。駅前のジェラート屋行った?」
みらい「じぇ、ジェラート…?」

不意な話題に思わず肩を竦めてしまう。…そういえば1人で寄り道すらしたことなんて無いからこの辺り何があるか把握できてない…。思わず冷や汗をかく。

せんり「そうそう!先週オープンしたばっかの!あのお店可愛くて映えすぎるんだよね〜」
みらい「そ…そうなんだー…」

しらないっ…!写真映えもおしゃれなお店も何一つわからない!!うろたえていると彼女は何を思ったのか顔をずずいと寄せてきた。近い近い近い…!!

せんり「…もしかして行ったことないな…?」
みらい「うっ…ご名答です…」

さすがに勘が鋭い…!こうもあっさり見破られてしまうとは…。というよりいつもより動揺が顔に出てしまったのかもしれない。

せんり「いやーまさかね!成宮さんたる人が流行りの店知らないなんて!放課後寄り道とかしないとか?んなバカな」
みらい「………」
せんり「…嘘でしょ?」

嘘じゃない…。こればっかりは嘘じゃない…!図星を当てられて汗が滝のように止まらない。

せんり「え?!放課後寄り道したことないの?!!もう入学してから1ヶ月経つってのに?!!」
みらい「う…ん…」
せんり「じゃあGWも?!友達とどっか遊びに行ったりとかは?!!」
みらい「…ない…」

ただ質問されたことに対して答えただけなのに後ろめたさに包まれていき思わず目を逸らしてしまう。だってそんな時間ないし…。1番になるためには設計されたルーティンをこなす日々。部活に拉致られている時だって先輩が脚本を書いている時は勉強してるし…。その中に誰かと寄り道の時間なんて到底作れやしない。何かを得るためには何かを捨てなければならない。そんなのこの世の条理というものだ。なんて悶々と考えてふと彼女に目を向ける。彼女は腹を抱え声を押し殺し笑っていた。

みらい「え?!ちょっ?!衣川さん?!!いきなり何?!!」
せんり「あっはは!だって…だって…"あの"成宮さんがだよ?ほんと真面目ちゃんかよ!」

真面目ちゃん…!確かに昔からルールの通りこなす性格だったから…否定はできない。彼女は「はあーあ」とひとしきり笑い終えるとふふんと鼻をらし慢心した顔をこちらに向けてきた。

せんり「よし!そうと決まればこのせんり、手取り足取りJKの極意ってやつ教えなければな!」
みらい「衣川さん…?なんかさっきとキャラ違くない…?」
せんり「衣川さん、だなんて硬っ苦しいよ!ほらっライライ、いこ!!」
みらい「ら…ライライ…?!」

彼女はそう声を高らかにあげると私の腕を引っ張り走り出した。

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