![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/66104148/rectangle_large_type_2_302ac6954b9e23deaa03d291b61bcee7.jpg?width=1200)
セナのCA見聞録 Vol.51 祖父と二人のハワイ旅行 その4
87歳とは、とても信じられないおじいちゃん。
ハワイ観光2泊3日の強行スケジュール。87歳で20代の私と同じペースで動けるって、どういうこと?
夜出発の便で、機内でもずっと起きっぱなし。徹夜したも同然なのに、到着直後から今日まで、時差ボケに困ることもなく、毎晩4、5時間睡眠。しかも日中は観光であちこち移動ばかり。老人の体力とは思えません。
そんな中、やっぱり四六時中行動を共にすると気づくこともありました。
おじいちゃんがトイレから出てきた後、次に私が入ると便がゆるいようで便器の内側が飛び散った便でかなり汚れていたのです。私は下痢ではないかと心配になり、「おじいちゃん、お腹の調子良くないの?大丈夫?」とダイニングテーブルでお茶を飲む祖父に確認するも、
「おじいちゃんは元気も元気。ピンピンさ。なんだか、いつも以上に元気な気がするねー」と本当に元気な様子。
私はそのままトイレに戻り、ブラシで汚れを落とした後、さらにペーパータオルでキュッキュと音がでるまで跪いて便器をきれいに拭きました。
「おじいちゃんのうんちまできれいに掃除させてもらうとあれば、孫として本望。汚いなんて思わない。おじいちゃんの体から出てきた老廃物さん、おじいちゃんを元気に保ってくれてありがとう」
と感謝すらして、真剣に便器を掃除しました。🚽
掃除スタッフの仕事なのはわかっていましたが、私がきれいにしたかったのです。
明日成田へ帰るという最後の晩。
テイクアウトのお寿司をバルコニーで外気に当たりながら食べることにしました。暖かい夜風が気持ちいい、温暖なハワイを最後に存分楽しんでもらおうと思ったのです。
二人がけの小さな丸テーブルにおじいちゃんと向かい合わせに座り、会話を始めました。
「あっという間だったね。おじいちゃんの並外れた体力には驚いたよ。今日はぐっすり眠れるといいんだけど。お寿司美味しい?」
「いやあ、美味しいねえ。どれも美味しい。」
おじいちゃんは、常にどんな状況でもポジティブ。
そんな茶目っ気たっぷりで通してきたおじいちゃんが、途中からしんみりと静かな口調に変わりました。
「セナちゃんのお母さん、陽子は童女がそのまま大人になったようだよ。50を越えてもまだ純粋。あの性質は子供の頃からずっと変わらないねえ。珍しいんじゃないか。セナちゃんもお母さんの娘だね」
私は突然のことにびっくりし、と同時に目からツーっと涙が滴りました。
「おじいちゃん。。。」
祖父の血やDNAはお母さん経由で私の命に確実に継承されていて、今、こうやってこの場で一緒に躍動している。「私はおじいちゃんと繋がってるんだなあ」と心底血縁の強さを思い知った瞬間でした。
「一緒にこれてよかったね」
その時、ワイキキビーチで花火が上がりました。
「あ、花火。見て。おじいちゃん」
「おー、きれいだ。」
コンドミニアムの7階から、おじいちゃんと二人で眺めた花火。
「ありがたいねー」
私は深い感謝と感動に包まれ、なんと幸せなことだろう、と噛みしめていました。きっと祖父もそうだったと思います。
「明日もまたロングフライトだし、もう休もうよ」
「そうだね。そうしようか」
私は祖父が寝たのを確認してから、今日の出来事、会話を日記に記しました。
その後、そっとドアを開けて祖父の寝顔を遠くから見入ってしまいました。
「おじいちゃんの孫に生まれてよかった。ありがとうね」
手は自然と合掌になっていました。