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セナのCA見聞録 Vol.31 国外追放者、亡命者、犯罪者

まれに特別に注意を払う必要のある乗客が乗ってくることがあります。

それは国外追放者、亡命者、犯罪者です。

国外追放者とは国の行政当局から不正行為や危険行為などを摘発され、強制的に国を退去するよう命ぜられた人のことです。英語ではdeportee。平たくいえば、国を追い出された人。

私も何度かこのdeporteeと呼ばれる方との乗る便に乗務したことがあります。

外国人としてアメリカで生活をしている中で違法行為を摘発され、国外退去に至るケースもあるでしょうが、航空業界として身近な例をあげると、例えば入国に要求される書類(正式なパスポートやビザなど)を持たずに入国を試みたり、または不正な書類を持ってやって来た乗客は空港の入国審査で入国を拒否され、その場で移民局職員によって拘束されます。その後アメリカへ来るために利用した航空会社に通達がなされ、やって来たのと同じ航空会社を使用してこの人物を出国地まで戻すということがあります。

私はシカゴ発の便で、国外追放者となったあるアジア系の若い男性を目にしたことがありますが、彼は12時間を超えるロングフライトにも関わらず、一切食事に手をつけず、テーブルに頭をのせてうつ伏したまま何時間もずっと過ごしていました。

どういう境遇にいて、何をしてしまったのかは私など知る由もありませんが、自国へ到着後、自暴自棄になったりせずにしっかりと気を取り直して生きていけるだろうかと、勝手に心配してしまいました。

また別のある便では(確かロサンゼルスだったと記憶していますが)、同じくアジア人でまだ20才そこそこのストレートの長い黒髪をしたちょっと顔の大きい若い女性を見たこともあります。

係員に連行されて搭乗してきましたが、見るからに勝気そうな人相をしていて、言葉を交わさなくとも彼女の発する気から、かなり憤慨している様子は明らかでした。英語はあまりしゃべれないようでした。

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