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日本のサービスが優秀なわけ

日本語は元々は響き、サウンドが主で、記述は補助的に始まったと考えています。話し言葉、それは波動であり、発せられた瞬間に飛ぶエネルギーで、出たと同時に相手がキャッチする即時性がそこにあると思います。

西洋文化は文字、言語に訴え、討論し議論を好み、論理、証拠という時間をかけた方法を経た上で、理解に繋げるロジックベースが主流です。

その一方で、日本は、立ち居振る舞い、仕草、と行って人の放つ気品、品格を通して、非言語の側面から人により強く訴えるところがあります。姿勢ですとか、出した椅子は引っ込めてから席を離れる、脱いだ靴は手で揃える、そう行った作法を見て人間性を評価することがよくあります。一瞬、目に止まる挙動で瞬時にメッセージを受け取ることは、日本人に限らず人類共通のnon-verbal communication ですが、この非言語の領域を日本人は西洋より比重が大きいと思います。

日本のサービスの素晴らしさは、よく外国人の方に取り上げられる長所の一つですが、これは非言語の伝えるメッセージに細かい注意を払っていることの現れといえると思います。日本では、サービス業に従事する者は、表情、声のトーン、身だしなみ、髪型、話すスピードなどの教育を受けることは実に一般的です。それは、これらが、視覚情報、聴覚情報として言葉以上に大切であることを十分に認識しているからでしょう。

非言語の交流は瞬時です。

本当にコニュニケーション能力の高い人というのは、非言語=non-verbal の伝達能力が高いことを指すのではないでしょうか。それは母親が、泣いている赤ん坊が何を求めているのかを瞬時に理解する能力が父親よりも高いことにも通じていると思います。言葉をしゃべらない赤ちゃんと意思疎通できるのは、それだけ相手と強くつながっていることの現れです。言語情報は伝達手法のほんの一つにしか過ぎないので、受け手の解釈の幅も大きく誤解も生じやすいのに対し、五感をフルに活用するのみならず第六感までも研ぎ澄まして伝えよう受けとろうとする場合には、テレパシーのレベルにまでなり得るのです。

このNon-verbal に気を使うというとは、社会性、人間性に直結するため、日本では教育レベルを測る上で欠かすことのできない分野です。意識的に非言語に注意を払っているかどうかが立派な大人の条件とみなされるのです。

”おもてなし”という日本語があります。これは日本文化の無形の宝です。モラルを最低限の土台とし、マナー、サービス、ホスピタリティー、全てを内包し、自分を無にして、お客様を喜ばすことのみを考え、徹底した心づくしを表現する。

その先に到達した接客の姿を”おもてなし”といいます。これは大変美しい姿ですので、日本式の心のこもった”おもてなし”はいつも受けた人を感動させます。

日本で企業に就職すると、特に接客業に従事する人は、”おもてなしの心”について研修を受けます。ひと昔前の日本の航空会社のCAは、食事のサービスや機内安全、保安要員としての訓練の他に、着付けや茶道の勉強も教わったといいます。それは技術、知識のみでなく、お客様を大切に扱う精神を身につけてもらうための社員教育システムの一貫でした。

私自身、外資系航空会社のCAをしていた時期があるのですが、その時に、日本の空港でだけ見る光景というのに気がつきました。日本の空港で働く地上職員さんの行動です。Marshaller と呼ばれる飛行機をゲートから滑走路まで、またはその逆に滑走路からゲートまで誘導する作業員がいます。彼らは飛行機を滑走路まで旗を振り信号で誘導した後、離陸体勢の整った飛行機一台一台に向かって気を付けの姿勢をし、そして頭を下げて「いってらっしゃい」と一礼するのです。なんという礼儀正しさでしょうか。私は感動しました。

これは成田でも、羽田でも一緒です。ある一人の個人的な行動ではありません。そしてこれがすごいのは、人に見られているからする行動ではないところです。ごく自然にしているのです。私は世界中の様々な空港に離発着しましたが、飛行機に一礼する職員に出会うのは日本の空港だけです。

これは波止場で船が出港する時も同様でした。港から離れて行く船に対して敬礼をする職員たち。また、道路工事をしている作業員は、工事中のため片側通行となっている道路で、手に蛍光の誘導棒を持ちながら、通行を止める側の先頭車の運転手に対し、「ご迷惑をおかけしてすいません」と言わんばかりに深々と頭を下げます。そして通行する番になると、また深々と頭を下げて、「ありがとうございました」と感謝し通行を促します。

この礼儀正しさがどれだけ素晴らしいことか、私は声を大にして言いたい。

日本のサービスが高く評価されるにはそれなりの理由がちゃんとあります。礼儀とは何でどうすることかを世界で一番理解しているのは紛れもなく日本だと断言できます。

ホテルやレストランなど接客業と言われる業界のみならず、あらゆる社会生活の場で人と物を大切に丁寧に生きてきた日本の長い歴史と文化の賜物です。その精神を継承し、今を生きる私たちもそう振舞っていることが、どれほど貴重な宝であることか。

日本のサービスが高く評価されるのは、人に不快感を与えないようにすることを常に意識し、ちゃんと社会に反映しているからではないでしょうか。

日本人はもっと日本人であることに誇りを持つべきです。


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