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おばあちゃんのおひざもと 第7話 バッタ

「バッタって食べられるんだよ。私たちはイナゴって呼んでたけど。戦争中は本当に食べるものがなくてね。どうしようもないとき、バッタをそこら辺から捕まえてきて食べたもんだよ。一晩袋に入れておくと糞が出るから、それが出た後に茹でたり炒めたりして食べるの。幸ちゃんには信じられないでしょう。おじいちゃんは戦時中、イナゴばっかり食べて生き延びた時期があるって言ってたよ。イナゴにちょっとお砂糖と酒、醤油なんかで煮て佃煮にして食べれたらもうご馳走。死ぬか生きるかだったら何でも食べるしか仕方ない状況だったんだよ、あの時は。だって、食べなかったら死んじゃうんだからねえ。そこまでお腹が空くってことがなくて、今の時代は幸せだねえ。

おじいちゃんは体質的にずっと昔からずっと胃が弱くってねえ。、テニヤン島にいた時に、敵から隠れるために防空壕の中に潜って集団で何日か過ごしたことがあったんだって。狭いところに十数人が潜り込んで静かにしていなくちゃならなかった。そこでおじいちゃん、具合が悪くなってゲロゲロもどしたらしいんだよ。そうしたら、防空壕の中の人から、『申し訳ないけど臭いし、敵に感づかれて困るから外に出てってもらえないか。どのみち貴方は体が弱ってるから早く死ぬ身だろうから、わかってもらえるでしょう』って言われたんだって。それでおじいちゃんはここで死ぬならそれも人生かと思って素直に外に出てったらしい。そしたらなんと、その防空壕が襲撃にあって中に隠れていた人たちは全滅しちゃったんだって。自分が死ぬ覚悟で外に出たら、生きようとした人たちが死んでしまって、人生の不思議を思わずにわいられなかったらしい。テニヤン島での仕事は、墓地の確保や埋葬ばかりでうんざりしたって言ってたよ。」

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

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