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セナのCA見聞録 Vol.29 もぐら生活

CAとなり飛び始めてから数年。

アメリカ便ばかりが続く月がありました。それを数ヶ月繰り返しているうちに、私の睡眠に障害が出始めました。

アメリカから戻ってくるのはたいてい日本時間の午後から夕方にかけて。

家に戻ってから夕飯を食べてお風呂にでも入れば、その後はロングフライトで疲れた体は早く休もうと睡眠へと誘ってくれるはずなのに、なぜか意識の方がギンギンに覚醒して寝付けないのです。

体はとっても疲労しているのに頭は冴え切っている。床についてから二時間、三時間たってもまだ眠りに落ちないのです。

こうなったら「えーい、起きてしまえ。」と夜中にバッと起き上がり、テレビを見たり、映画を見たり、本を読んだり、友達にメールを書いたり、と眠気を感じるまでそんな過ごし方を始めました。そして朝方4時、5時になって「さて、いくらなんでももう寝なくっちゃ。」とまた就寝を試みます。この頃にはパジャマになってもう7、8時間も経っています。朝5時ごろに横になり、それでもすぐに眠れるわけではなく、しばらくしてからようやく眠りに落ち、起きるのは正午。

このパターンは結構都合がいいと思ったのは、数日後にまたアメリカ便が控えているときです。出社時間が午後2時から4時の間に集中しているので、朝方4時か5時頃に寝て正午頃に起きると、7ー8時間がっつり眠っているので、夕方から翌朝にかけて徹夜で乗務するにはもってこいの睡眠パターンだからです。機内で眠くならないし、むしろ体にいいかもと思ったくらいでした。そしてアメリカに到着する頃、つまり日本の朝、仕事を終えて疲れた体はホテルのベッドで自然に私を眠りへと導きました。つまり、フライトの日はいい感じの体調でいられたのです。

しかし、このような睡眠サイクルを何度も繰り返すうちに、なんだか私は日本で生活している感覚が急に乏しくなっていきました。

日中に外の世界と接する機会が著しく減り、夜な夜な一人で何かをしているということが多くなりました。

そのうちに私は朝6時就寝、午後1時ごろに起床というパターンが確立されつつあるところまで来てしまいました。

朝ごはんを午後1時に食べ、昼食は夕方6時、夕食はたいてい真夜中。

月の約半分は日本で生活しているのにも関わらず、生活時間が完全にアメリカ時間に合わせているのです。こんなクレイジーな生活をするうちに、私は精神的にだんだん辛くなってきました。眠りたいのに眠れないというストレスはもう諦めて、無理に寝ようとせず、自然の眠気に任せようとしてみたのですが、その実全く自然体とはほど遠い状態になりました。

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