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おばあちゃんのおひざもと 第45話 片田の思い出

「志摩半島っていうのはね、とってもきれいな所だよ。おばあちゃんの育った片田っていうのは、志摩半島の先端にあって村の両側が海でねえ。南は太平洋。北側は英虞湾っていうの。真珠が取れる国立公園になっててね。海女さんっていって、女の人が桶を持って海に素潜りしてアワビやサザエ、ナマコ、伊勢エビなんかを採ってくるの。海女さんていうのは昔から続いている有名な仕事なんだよ。女の人が海の中に潜って手づかみ一つ一つ取ってくるんだよ。すごいでしょう。でここ辺りでは千倉(現:南房総市)に海女さんがいるらしいね。おばあちゃんはウニとナマコが大好物でね。いくつでも食べられたから、よーく食べたもんだよ。

幸ちゃんが生まれるずっと前だけど、伊勢湾台風っていう大型台風が三重県を襲ったことがあってね。あの時はもう心配で心配で。大勢の人が亡くなったり行方不明になって毎日ニュースを見ながら家は、片田は大丈夫だろうか、って気がきじゃなかった。何千人もの人が亡くなって、恐ろしかったねえ。高潮って言って、海水がすごく上昇してね、腰のあたりまできて溺れてしまった人がたくさん出たんだよ。それも夜に高潮が襲って来たから、外が暗くてそれはそれは大被害になったんだよ。日本中で被害が出たけど、伊勢を直撃したから伊勢湾台風と後から名前がついたんだけど、三重県の人はほぼ全員被災した超大型台風だった。

台風がくると、暴風雨をもろに受けるし、高潮に襲われることもあるから、どこの家も家の周りに垣根を作って家を守ってるんだよ。」


*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音(ひらがな)をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…

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