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セナのCA見聞録 Vol.9 早く起きて、支度して!

飛び始めて一ヶ月が過ぎた頃、同期の由美子とサンフランシスコへ飛びました。

由美子は以前日本の旅行代理店に勤務していた、とてもしっかりした子で、まだ飛びなれない時期の私たちは一緒に飛べることをとても喜びながら成田を発ちました。

サンフランシスコには朝10時頃に到着し、次の日の朝10時過ぎにはホテルを出発することになっていました。

ホテルへ着いてからお互い軽く仮眠をし、4時に待ち合わせをしてホテルからタクシーで近くのショッピングセンター出かけて、早めの夕食をとりながらおしゃべりを楽しみました。

まだ飛び始めて数回なので、同期の誰々ちゃんはどこへ呼ばれて飛んだという話でもちきりでした。

「彩なんかね、ニューヨークにって呼ばたからコートを用意して行ったのに、会社についたらコーディネーターの人にニューヨーク便はクルーが間に合ったから、これから夜の便でハワイに行ってちょうだいって言われて、ホノルルに到着した後、制服のまま急いで夏服買いに行ったんですって。」

「美代子はね、シカゴからのロンドン便に人が足りないからそれを飛んでと言われて、成田からシカゴまで*デッドヘッドで行って、それからロンドン往復乗務したんですって」

(*デッドヘッド(英語: Deadhead)とは、航空会社のパイロットやCAなどが、業務中の移動のために飛行機に乗客として搭乗すること、または搭乗した社員のことを指す業界用語)

「聞いた? 真由子なんて香港ロサンゼルスを飛ぶために、まず香港まで飛んで、そこからLAの往復して成田に戻ってきたのは一週間後だったんだって。香港でのレイオーバー(飛んだ先での滞在時間)が長くて一人でどう過ごそうか困っちゃったって言ってた。」

「インドもすごいらしいよ。機内の臭いが強烈で、香辛料の効いた機内食も臭いが強いから、サービス中笑顔がひくひくしてくるって聞いたよ。お水はペットボトル以外飲んじゃダメなんだって」「そうなんだあ?。でもそういう所も飛んでみた~い。」

などなど、リザーブ要員ならではのどこでもありのフライトスケジュールに「すごいね、すごいね。」と、次のエキサイティングなフライトは私たちと言わんばかりにいささか興奮気味に同期や他のクルーから聞いたの様々なフライトや飛んだ先の様子をいつまでも語り合いました。

ホテルへ戻り、「じゃあ、また明日もよろしくね、お休み〜。」と別れ、部屋へ戻ると、私はマッサージ棒で入念に足裏をもみほぐし、それからお風呂にゆっくり浸かって明日のフライトに備えて眠りにつきました。

翌朝。

送迎バスの出発する15分前になってもロビーに現れない由美子を不安に思いつつ、「でも、あの子のことだ。もうすぐ来るだろう」とフロントで彼女が来るのを待っていました。バスの出発10分前になっても姿を見せないので、さすがに心配になった私は、駆け足で彼女の部屋までいって、ドアをノックしました。

この日はモーテルタイプの二階建てホテルだったので、通路から窓をノックして部屋の中の様子をうかがうことができました。ドアの開く気配がないので、ガラス窓をコンコン叩きながら、「由美ちゃん、由美ちゃん、いる?もうあと10分でバスが出ちゃうよ。」と呼び出しました。すると、その窓にパジャマ姿の由美子が大きく目を見開いて顔をくっつけ、部屋の中でパニクりはじめました。

「OH MY GOD 😳 寝過ごした~!!」

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