セナのCA見聞録 Vol.13 機内通訳十人十色
トレジャー航空では、日本語の機内通訳を担当するCAは、わりと独自の訳し方をしています。
それは、会社が配布する機内アナウンスのマニュアルは英語版のみしかないからです。
英語でアナウンスされる内容をどう日本語で伝えるかは、毎回そのフライトの機内通訳次第ということになります。
ちなみに日本人客室乗務員であれば誰でも日本語の機内通訳担当になり得るので、機内通訳のみを専門に扱うようなポジションはありません。
私の場合は、いつ機内通訳に指名されてもいいように、訓練終了後の早い時期に会社から配布された英語版の機内アナウンスの冊子を小さなポケットサイズのメモ帳に、自分なりに丁寧と思われる日本語に自宅で手書きの翻訳をし、最後のページには摂氏と華氏、フィートとメートルなどの対照表を書き込み、私だけのオリジナル機内通訳帳なるものを作りました。そういう人はわりと多いと思います。
飛行機に乗られたことのある方はご存知のことと思いますが、機内放送というのはかなり聞きづらいことが多いものです。
特にコックピットから流れてくるアナウンスfは、端的に短く要点のみを伝えることが多いのと相まって、ブツッブツッと雑音のようにしか聞こえず、時にはほとんど聞き取れないということも珍しくありません。
機内通訳として乗務するときは、通常の仕事をしながらそれに加えて英語のアナウンスが流れるたびにインターフォンをとって随時通訳をするので、たいてい通訳者はアナウンスが流れはじめると今している仕事を一時中断し、話されている内容に一生懸命耳を澄まします。
耳を澄まして一生懸命聞いて、聞いた本人は100%英語を理解しても、通訳を聞かされる側の人間にはちょっと変わって伝わることもあります。
こんなことがありました。
飛び始めてまだ半年くらいの真冬のソウル。外は大雪で猛烈に吹雪いていました。視界不良の悪天候のもと、出発は大幅に遅れています。
乗客乗員は機内でコックピットから流れる最新情報にやきもきしながら一刻も早い出発を待っています。
こういう状況下では、通常の飛行中にはたいして気にかけられもしない機内アナウンスとはうって変わり、ほとんどの乗客が機内アナウンスに神経を尖らせ集中して聞こうとしています。
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