売国機関のディアナ・フォン・バルヒェット大佐が好きな話
売国機関のバルヒェット大佐が好きな理由、それは彼女が自分と自分の子供の為だけに生きているから、またその願望をひけらかさないから、そしてそれを叶えるだけの知識と研鑽を積んでいるからだ。
青い鳥で「売国機関」で検索をかけると、「分かりにくい」といった言葉がしばしば出てくるが、登場人物は何を求めて戦っているかを把握するとだいぶ読みやすくなる。(とはいうものの、私はまだ売国機関の全貌を把握しきってないので作者の意図と異なる見解を示すかもしれないよ。。。よって参考程度に読んでいただければ幸いです)
ヨランダ・ロフスキ少佐は同胞の為。
モニカ・シルサルスキ中尉は責務の為。
ルィバルコ少佐は王国の為。
では、バルヒェット大佐は?作中では頭の切れるキャラで登場し、ロフスキ少佐に憎まれつつも、共和国の安定化のため共同戦線を張っている。(※ただしタダではない)
その原動力は軍人の責務だから、つまりは子供を育てるお金を稼ぐためでしかない。共和国民からしたら、そんな理由で自分たちの経済や精神性を引っ掻き回されているのだからたまらない。
でも、私はカルロゼン氏のこういう人間像がすごくすごく好きなのだ。ヤキトリの新刊が出ないことに毎週2回はイライラさせられても追いかけるのがやめられない理由はこれだ。
王道系物語に出てくる人物は、初めは自己中だけどやがて絆の大切さを知り仲間のために戦う、といったものを思い浮かべるだろう。
カルロ・ゼンの手にかかればそんなことない。自分の為に最後まで生きる。仲間はついで、場合によっては見殺しにする。
これを不快感を持たせずに書く。そう、これが難しい。
どうしてこの類の人間に不快感を持ちやすいのかというと、読者の私の卑しさに近しいからだと思う。
例えば、王道小説を読んで主人公になりきっているときは楽しいだろう。自分は特別な力があって、仲間を助ける高潔さがある。皆に認められて何でもないようにクールぶって見せる。
でも、大人になるにつれてそういう妄想に耐えられなくなる。何もない、卑しい自分に耐えられなくなる。
じゃあ等身大に自分本位の卑しい主人公ならどうかというと、自分を見ているようで鬱々とする。
ところがバルヒェット大佐はこのバランスが取れている。自分本位だが、現実味のあるぎりぎりの賢さで上手に立ち回る彼女は、大人の私でも没入してしまう。
しかも承認欲求を見せない。軍人の立場をよく理解し、自分の出張る幕はどこまでか、どこまで利益を引き出せるか、損が許されるかしっかり計算している。めっちゃかっこいい。
自分の為だけに生きる卑しい願望を、こんなにかっこよく叶えている。私自身の卑しさを自覚しているだけ、親近感をもてて楽しい。
私でも、今からならこんな大人になれるのかなと、『憧れ』を抱いてしまうような存在、それがディアナ・フォン・バルヒェット大佐である。
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