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『学問のすすめ』速読術!

【カズキチ】私立学校法人勤務の32歳/三度の飯より車のタイヤが好きな3歳児の父/息子に最適な"学校キャリア"(子供が社会人になるまでの進学プロセス)を考えるため、保護者+本業目線で都内の学校情報を収集中

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今回は福沢諭吉『学問のすすめ』を忙しいママパパが短時間で読む方法を紹介しています。本書は現代人が読んでもためになるような金言が詰まった不朽の名作です。私も32歳にして初めて読みましたが、福沢諭吉の物事に対する洞察力の凄まじさに「そりゃあ1万円札にもなるわ」と感服しました。ただ、本書が書かれたのは150年前。原文を読むのは現代人にはなかなかしんどいです。そこで今回は『学問のすすめ』を効率よく読み進める方法をご紹介します。特に慶應幼稚舎を目指されるご家庭は『福翁自伝』と並ぶ必読書だと思いますので、よろしければ参考にしてください。

原文にこだわらない勇気

『学問のすすめ』が刊行されたのは、明治5年から9年にかけてです。この頃の本は、今とは文体がまったく違います。
大学時代に近代文学の原典購読をやっていた方ならまだしも、一般人が読もうとすれば四苦八苦するでしょう。

私はこうした古い作品を読むときに、原文には全くこだわらない派です。
文体に不慣れなせいで、読むスピードが遅くなったり、内容がうまく理解できなかったりしては本末転倒だからです。

試しに読んでみましょうか。『学問のすすめ』の冒頭を。

まずは原文です。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賤きせん上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資とり、もって衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。

「青空文庫」より

次に、現代語訳です。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という(西洋の)言葉がある。その意味はどうかというと、「神様が人間を造るに当たっては、どの人間にもみな平等の権利を授けられた。だから、生まれながらに貴賤上下の差別などというものはない。人間はみんな、万物の霊長たる固有の心身の活動により、天地間にあるすべての物資を利用して、衣食住の役に立てることができる。そうして、だれに遠慮気がねもなく、しかもお互い同士迷惑をかけ合うこともなしに、めいめいが安楽にこの世を渡られるようにしてやろう、とそういうのが神様のおぼし召しなのだ」という意味である。

『現代語訳 学問のすすめ』岩波現代文庫より

いかがでしょうか? 原文よりも数段、理解しやすい感じがしたのではないでしょうか。

真面目な性格の人ほど、ついつい"べき論"にとらわれて原文から手を出そうとしてしまいがちです。大学のようなアカデミックな場ではそれが正しいかもしれませんが、このnoteをご覧になっている皆さんの目的は、同書を学術的に理解することではないはず。

ハリー・ポッターをわざわざ英語で読みますか? それと同じことです。

ここは踏みとどまって、まずは現代語訳から手を付けましょう。
福沢諭吉が伝えたかったメッセージを、現代の言葉でしっかり受け止めるのです。

現代語訳でもまだ苦しい

ただ正直なところ、これでもまだ読みづらさを感じる方はいるのではないでしょうか。

「人間はみんな、万物の霊長たる固有の心身の活動により」
「めいめいが安楽にこの世を渡られるようにしてやろう」

こんな言葉、人生で発音したことあります?
私はないです。「めいめい」って何じゃ。

現代語訳は、一応現代の言葉に置き換わってはいるものの、原文の空気感みたいなものを崩さないためになのか、"馴染みのない現代語"が多用される傾向があります。そのため原文と比べればいくらかは楽になるものの、その辺のビジネス書などと比べると相変わらず読みづらいことに変わりはありません。

皆さんには時間がない

いつも子育てご苦労様です。
皆さんの生活のどこに、ゆったりと腰を据え、小難しい本にじっくりと向き合う贅沢な時間があるというのでしょうか。きっとないでしょう。

そこで見つけました。多忙な皆さんでも『学問のすすめ』を読破する方法です。

こちらをご覧ください。先ほど現代語訳で読んだのと同じ箇所です。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」といわれています。
 天が人を生みだすときは、だれもが同じ権利を持ち、生まれによる身分の上下などはありません。みんなが自分の身体と心を働かせて、いろいろなものを利用して衣食住を満たし、人の邪魔をしないで自由に過ごせるように天はしてくれています。

いかがでしょう、なんと分かりやすい。趣旨は同じですが、先ほどよりもさらにスムーズに読むことができたのではないでしょうか。

これが今回私がおすすめする『13歳からの「学問のすすめ」』です。

この本は、2017年に筑摩書房「ちくまプリマ―新書」シリーズから出たもので、タイトルの通り若年層向けに書かれた『学問のすすめ』です。最初から最後まで、ほとんどこんな調子で訳されています。

「13歳からの? そんな本を大人が読むなんて…」

そう思われた方、その謎のプライドは今すぐ捨ててください。

私なんてカバーもつけずに中央線の中で読み切りましたから大丈夫です。周囲の目線など、次々と押し寄せる福沢諭吉の金言に比べれば取るに足らないものです。

あなたには時間がないということを、もう一度思い出してください。

本書は『学問のすすめ』の内容を簡単に理解しながら読み進められます。
体感的には、前半でご紹介した現代語訳版の1.5倍くらいの速さで読めます。仮に現代語訳版の読了に6時間かかるとしたら、「13歳からの」は4時間で読み切れる計算です。2時間も浮いたらどんなに嬉しいことか。

『学問のすすめ』を一度は読んでみたい。
でも昔の言葉や難しい言葉には抵抗がある。

そんなピュアな気持ちに寄り添ってくれるのが、この本です。

慶應幼稚舎を見据えて

私はお受験教室の人間ではないので、慶應幼稚舎合格のためのハウツーはよくわかっていませんが、願書や面接で志望理由を述べる際、義塾の創始者である福沢諭吉の考えや価値観に触れないわけにはいかないことはよく知っています。

志望理由に福沢諭吉の考えや教育観を用いるには、まずその考えや教育観をよく理解することが必要です。いくら字面を舐め回したところで、意味がわからなければ頭には入ってきません。もちろん最終的には原文の言葉を使う必要があるかもしれませんが、それは仕上げの段階でのお話でしょう。

今回、私は『13歳からの「学問のすすめ」』を読んでみて、福沢諭吉の考えや価値観をとてもスムーズに理解できた実感があります。
そして最初に手に取ってもたつきを感じた岩波現代文庫の『現代語訳 学問のすすめ』も、「13歳からの」を読んでからはサクサクと読み進められました。

『13歳からの「学問のすすめ」』

『現代語訳 学問のすすめ』

(必要に応じて)『学問のすすめ』原文

これが、忙しいママパパに紹介したい『学問のすすめ』の速読術です。ぜひお試しください。

(この他にマンガ版などもあるようですが、あいにくそこまでは試していませんので、おすすめできる場合はぜひコメントください。)


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