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あなたは誰よりも自分の音楽を信じているかしら?

ヨーロッパ紀行の第二弾はポーランドの古都クラクフを訪れたときのことを。

ポーランドと言えばショパンの故郷の国。

それならばと訪れたのがショパンホールという名前の小さなコンサートホールでした。

そこで目にしたのがショパンと深い関係にあった作家/思想家のジョルジュ・サンドの絵画です。

「あなたは私がショパンにそうしたように、誰よりも自分の音楽の可能性を信じることができるかしら?」


この絵を見た時に、そう問いかけられた気がしました。

ピアノ詩人と呼ばれるあのショパンですら、音楽を評価してもらえない不遇のときがあったそうです。

そんなときに、誰よりも自分の音楽を信じてくれる存在があったことはどれだけの力となったでしょうか。

容易には計り知れないものがきっとそこにはあったはずです。

「ショパンの音楽を信じた彼女以上に、私は私の音楽を信じられるだろうか?」

自分の中にある音楽を信じて今回のコンクールに挑むと決めてから、幾度となく蘇ってきたのがこの問いでした。

「キミには自分の音楽をこの世界に向かって解き放つという覚悟があるかい?」

「例え死を前にしたとしても、ただただ真っすぐに自分の中にある音楽に向き合いなさい」

「音楽はいつもキミの中にあるんだ。世界はこんなにも音楽で満ちている。そしてキミの内側から溢れ出すその音楽も、この世界の一部だ。キラキラと光り輝く美しい調べを奏でればどこまでもそれは響き渡ってゆく」

「さあ、キミは何を表現したいんだい?」

「いつ、どのように、それを表現するんだい?」


ショパンの肖像画に囲まれて彼の曲を聴きながら頭の中に浮かんできたのはこのような言葉たちでした。

あの日、演奏が始まる前。

演奏者の方が歩いてきてピアノの前に座った瞬間。

その瞬間にもう彼の作り出す世界に引き込まれていました。

「これは素晴らしいコンサートになる」

一音も聴く前からそう悟ったまさにその通りに、それはそれは本当に素晴らしい演奏でした。

「これほど力強く、勇ましく、雄々しく、激しく、荒々しく、表現して見せよ」

上手い下手を超えてそう言わんとばかりの圧倒的な演奏に強く全身を揺さぶられました。

そしてその一方で、とても甘く澄み渡った、まるで天上の世界かのような幸福感に包み込まれるような響きが彼の演奏にはありました。

ヨーロッパの旅を終えてから約2カ月半準備をしてきたコンクールも、いよいよ明日終わりを迎えます。

「あなたの信じるものは何であろうか?」

「信じることは力である」

「あなたの信じる力の強さこそがあなたの信じる場所へあなたを連れていくのである」

「信じて進みなさい」


ブダペストではリストもそう語りかけてくれました。

今まで積み重ねてきたことを、そして自分の中にある音楽をどこまでもどこまでも信じて、明日は最高の舞台を楽しんできます。

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