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バカンスも仕事のひとつ

仕事とプライベートは別物だけど、ガチガチに分けようとすればそれはそれで不自然だと思います。プライベートで得たことは仕事に活きるし、休日に仕事のことを全く考えないなんてことは無理があるし。

以下、この考えに至った経緯を自己紹介がてら綴ってみます。


フランスでゆったりと働く

僕は大学を卒業後にフランスに行き約4年パリの Ateliers Lion という設計事務所で働きました。最初の数年間は、言葉に不安もあったし高パフォーマンスを見せないと!というプレッシャーもあったのでそれなりに苦労はしました。

就業した最初の日、あるプロジェクトについて説明を受けた直後に、「で、君はどう思う?」と聞かれ、「え、俺に聞くの?」と思いながらも適当に思ったことを言ったらその案が採用されてしまいました。
衝撃でした。

今思い返せばその上司の懐の深さが凄いという話なのですが、20代半ばの無鉄砲な若者はそんなことは分からずに、
「あ、この人たち俺の能力を過信しているんだな。」と感じ、
それを否定せず、まわりを騙し続けることに決めました。

言葉だけではなく建築のことだって大した知識は持っていなかったけれど、だったら勉強すればよいと。毎日知らないフランス語は山ほど出てくるし、建築の知識やPCの操作だって分からないことがたくさん。それを持ち帰って家で調べる。残業や休日出勤はしないのが当たり前だから、時間は沢山あったのです。
それで次の日には、知ったかして出来るふりをする。
それを繰り返していたら4年目には主任になれました。

日本人的勤勉さで普通に働けば多少手を抜いたって大丈夫ということに2年目ぐらいから気付いたら、仕事は要領よくこなしてプライベートを重視するようになっていきました。平日でも映画見に行ったり、バイク買って旅行行ったりと。気が付けばいつも話題は次のバカンスの話。
周りのフランス人たちと同じような生活になっていました。

そんな「仕事よりもバカンス」「仕事よりも家族」といった世界で「ゆったりと」働くことは、とても生きやすく楽しかったのですが、どこかで「ぬるま湯」につかっているような感覚を持っていました。
(外国人として生きるということの疎外感のようなものもありました。これは別の機会にします。)


日本で働きまくる

帰国後は、一時はフリーランスとして仕事をしたのですが仕事の質に伸び悩み、藤木隆男建築研究所という設計事務所に就職しました。そこでは当時「毎日終電まで働くのが当たり前」といった生活をしていました。

これも最初は嬉しかった。質の良い仕事で忙しいということは全く苦にならなかったのです。社長も同僚も働きまくるので仕事はどんどん進みます。聞けばすぐに返答がきます。
「仕事をしている。」「物事をタイムリーに動かしている」
という感覚が心地よくて昼夜土日を問わず働きまくりました。

そのうち、家族が出来たら、またまたそんなわけにはいかなくなったので、労働時間を短くしようという話を会社に掛け合いました。みんなで効率化を図って集中して取り組めばもっと早く帰れるはずだと。

社長はかなり理解を示してくれて、彼が18時ぐらいに一番に退社してくれるようになりました。まぁ自宅で仕事はしていたけれど。。。

この時に、すき間時間を上手く使うこと。だらだら働かないこと。ちゃんと休むこと。でも仕事のことは常に考えていて。そんなスタイルの基礎がつくられたような気がします。


「男の嘆きはほろ酔いで酒場の隅に置いて行く」

『時代おくれ』 歌:河島英五 作詞:阿久悠 作曲:森田公一
・・・妻には涙を見せないで
子供に愚痴をきかせずに
男の嘆きはほろ酔いで
酒場の隅に置いて行く・・・

これは大好きな唄です。こんな風にカッコいい父親に憧れたけど、どうやら違うようだと段々と気付いてきました。というか、お酒飲めないからそもそも酒場の隅がもう未体験ゾーン。

ふと考えると、この人は家人と何の話をしているんだろうか?
日中のほとんどの時間を仕事しかしてないのだから仕事以外の話題なんて普通無くないですか?ただの愚痴は聞き苦しいけど、仕事の一喜一憂は話したほうが絶対いいと思います。

子育てしながら働く

現在は二児の父として家庭を持っており、ほぼ毎日17時に退社し家で家族そろって夜ご飯を食べています。仕事とプライベートは時間的にはしっかりと区別しながらも頭の中ではいつもシームレスにつながっている状態が、一番効率が良く健康的だと今は思っています。

また、休む時はちゃんと休む。ちゃんと休めないなら休まないほうがいいと考え、直近ではゴールデンウィークの旗日をすべて通常営業日にしました。コロナ禍で思いきり遊べないのならば、落ち着いてからの代休にしようと社員全員で話し合って決めました。

よって今年は有給休暇以外に代休貯蓄がたくさんあります。バカンス計画が膨らみます。うしし。

「仕事よりバカンス」と言い切ると不謹慎な気がするけれど、「バカンスも仕事のひとつ」って言えば大手を振って休めるんです。魔法の言葉ですねー。

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下川太郎 | あまね設計
noteを始めてから、考えていることをどう書いたら伝わるだろうかと試行錯誤することが楽しくなりました。 まだまだ学ぶこと多く、他の人の文章を読んでは刺激を受けています。 僕の文章でお金が頂けるのであればそのお金は、他のクリエイターさんの有料記事購入に使わせていただきます。

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