見出し画像

KANI ND2-400 Valiable+CPL 詳細レビュー


要旨

 このnoteは、可変NDフィルター(以下VND)の購入を考えている方々向けに、レビューの少ないKANI ND2-400 Valiable+CPL(Φ82 mm)を紹介する。カラーシフトが少ないことを説明した後、フィルターの厚みが10 mmならケラレが17 mmから、CPLを外した状態(厚さ5 mm)なら14 mmでもケラレないこと、そしてこの焦点距離でムラが出るのはND4程度からであることを明らかにした。加えて、焦点距離が110 mm~ならこのVNDを活用できることを明らかにした。なお、本レビューでは解像度の低下に関することは一切述べていない。



背景

なぜこのフィルターを買ったのか

 私の卒業論文発表が終わった反動で、前々から欲しいと思っていたVNDを衝動買いした(Amazonで14,520 円)。色々考慮した結果、このフィルターに決めた理由を以下に箇条書きで示す。

  • 減光効果の範囲(ND値の範囲)が広い

  • CPLがついているのに安い

  • どこまで暗くしたかがわかる目安が示されている

  • フィルターの回転が途中で止まる

  • 先行レビュー[1]でカラーシフトが少ないと評価されていた。

[1]

 1つ目は使用用途によって評価が異なる部分であり、可変範囲の狭い方が操作ミスなどを引き起こしにくいX状のムラが出にくい(要検証)などの理由から、より狭い範囲のVNDを購入したいと考える方々もいる。実際この商品には2-400以外にND2-32ND2-64ND2-128など、様々なものが用意されているため、動画撮影などに使用したいと考えている方々はそちらの購入も検討してみると良いかもしれない。

 2つ目の理由は、CPLフィルターを普通に買おうとすると割といい値段(安くて数千円~)するためである。CPL有り無しで値段がほとんど変わらない(~1100円程度)ため、CPL付きのものを購入した。
 補足だが、普通のNDフィルターも割といい値段するので(安くて5000円~)、複数枚のNDフィルターとCPLフィルターを買おうとすると、このフィルターの値段を優に超えることが予想される。

 3つ目の理由は説明するまでもないが、色が変わりずらい方が写真編集が楽になるためである。


なぜこのレビューを書こうと思ったのか

 これら3つの理由から、このVNDを購入しようと思い立った。しかし、正規代理店のサイト[2]に『~可変NDフィルターとしての性質上、超広角〜広角レンズとの組み合わせでは調整位置により画面中にX状のムラや青みが発生する場合があること、また枠の構造上の厚みがあるため、主に標準〜望遠レンズでの使用を前提に効果を体験してみたいというビギナーの方や動画撮影での使用を対象としております。』と書いてあり[2]、標準、望遠レンズの他に、どうせなら14-30 mmのレンズにも使用したいと考えていた私は、以下のことを懸念した。

  • 焦点距離30 mm(望遠端)でケラレたらたまったもんじゃない!

  • どの焦点距離でどのようなムラが出るの?

  • CPL部分は外れるの?

である。しかし、インターネット上には、このVNDのケラレやムラに関する詳しいレビューは存在していない。よって、本レビューでは、KANI ND2-400 Valiable+CPLがどの焦点距離でケラレ、ムラが出るかを明らかにすることを目的とする。

[2]



条件

 撮影環境と条件を以下に示す。

  カメラ:nikon Z 6II
  レンズ:NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
  
  画質モード:無編集jpg
  絞り値  :f/8
  露出補正 :+1.0段
  ISO感度     :800

ホワイトバランスは固定であり、フィルターを装着する前の状態で取得した値を用いている。シャッタースピードは写真の明るさが同じになるように調整した。



結果及び考察

形状

フィルターの厚み

 フィルターの厚みはケラレやすさに直結する。枠の構造上の厚みがあると書かれていたが、どの程度なのだろうか。計ってみたところ、約10 mmであることが分かった。しかし、厚みがわかったところであまり意味はない。重要なことは、何 mmからけられるのか、ということだ。

 また、CPL機構(フィルター全体を回すためのリング)部分は外すことができる。これを外すと、厚みは約5.5 mmまで薄くなる。



カラーシフト

 初めに、フィルターの有無による色の変化を観察するために、ND2の状態で撮影した2枚の写真を図1と2に示す。

図1 VND装着前(ND2 30 mm 0.4 s


図2 VND装着後(ND2 30 mm 1.3 s

写真を見ると、像全体で暖色側にシフトしていることがわかる。図2のホワイトバランスを補正した後の写真を図3に示す。

図3 VND装着後の写真をA0モード(白色優先モード)で補正した写真

図3を見てみると、補正後の写真は装着前の写真と比べてマゼンタにすこし寄っている。これは、補正する際にWBの色温度が2500Kになってしまい、もっと下げたくても下げられなかったためであると考えられ、撮影環境がより適切(太陽光や白色蛍光灯の下)であれば、十分補正可能であると考えられる。



焦点距離とケラレ

CPL有

 次に、CPLを付けたND2の状態で、広角端(14 mm)、ケラレが無くなった焦点距離(約17 mm)、望遠端(30 mm)で撮影した写真を図4~6に示す。


図4 ND2 14 mm 1.3 s
図5 ND2 17 mm 1.3 s
図6 ND2 30 mm 1.3 s

図4と5を見ると、14 mmにははっきりと映っていた四隅のケラレが、17mmではほとんどなくなっていることがわかる。よって私の環境なら、CPL有かつND2の時、17 mm~から使用可能であるということがわかる。めっちゃ広角までつかえるやんけ。なお、これらの写真のシャッタースピードは1.3秒である。

 レンズによる差を考慮しても、恐らく焦点距離20 mm程度なら使えると推察される。また、NDフィルターの厚みが7 mm以下なら、より広角のレンズ(~16mm)にも使用できると考えられる。

CPL無

 次に、CPL無しのND2の状態で、14 mm、17 mm、30 mmで撮影した写真を図7~9に示す。


図7 CPL無 ND2 14 mm 1.3 s
図8 CPL無 ND2 17 mm 1.3 s
図9 CPL無 ND2 14 mm 1.3 s

図7、14 mmを見てみると、CPL有の時にあったケラレが消えていることがわかり、CPL機構がなければ14 mmからも使用可能であることが分かった。言い換えれば、フィルターの厚みが少なくとも5.5 mm以下ならば、14 mmの超広角レンズにも使用可能である、と言える。凄い!



ムラ

最高濃度時(ND400)におけるムラ

 図10~12に、最高濃度(ND400)における14、17、30 mmの写真を示す。


図10 ND400 14 mm 45 s
図11 ND400 17 mm 45 s
図12 ND400 30 mm 45 s

使い物にならないことがわかる(知ってた)。200 mm~とかの望遠レンズなら可能かもしれないが、フィルタースレッドが82mmの望遠レンズを生憎持ち合わせていないため、ND400が使用できる最小の焦点距離はわからない。これについては計算によって求めたものを後述する。あと、シャッタースピードは45秒である。

蛇足:ここで気付いた問題点

 ここでふと違和感を持った。ND400の割にはシャッタースピードが早すぎる。例えばND2で1秒の場合、ND4で2 秒、ND8で4秒、ND16で8秒…となって、ND64の時に32秒、ND128で64秒、ND512では256秒となるはずである。ND2で1.3秒のシャッタースピードなのだから、逆算すると最高濃度はND64程度であり、公称値であるND400と大幅にずれているとわかる。おい!!!!!

 試しに、ND400であると仮定した場合のシャッタースピードで撮影した写真を500px四方に切り取ったものと明るさの分布を図α1、α2に示す。加えて同じ焦点距離でND2で撮影した写真である図β1、明るさの分布をβ2に示す。

図α1 ND400?で撮影した写真の中心部 ss=260 s
図α2 図α1の写真における明るさの分布図


図β1 ND2で撮影した写真の中心部 ss=1.3 s
図β2 図β1の写真における明るさの分布図

なお、写真の中心を切り取ったのは、そもそもこのVNDが中望遠~レンズ用に作られており、広角レンズで使用した場合は望遠レンズで写る写真中心部のみで評価するのが妥当であるからである。写真の明るさとその分布図を見る限り、ND400で撮影した写真の方が暗いことから、ND400の値に問題はない。また望遠レンズで使用すれば、全く問題なく使用できると考えられる。

 また1つ分かったこととして、公称値は写真中心部の値を示しており、その周辺は周辺減光のようにより暗くなるだけではなく、より明るくなる可能性もある、ということである。

なんか間違ってたらマジですみません。

まぁいい、とりあえず進めるぞ。


ND400でムラが出ないと考えられる最小の焦点距離

 CPLの効果を最大にした時に使用できる最小の焦点距離、言い換えれば最も厳しい条件を適応しても使用できる焦点距離を求める。方法は、CPlの効果を最大にした状態で焦点距離30 mmで写真を撮影し、その後ムラがない水平画角が焦点距離何mm相当かを計算する。

水平方向1753 pxの4x3に切り取った写真を図13に示す。

図13 水平方向1753 pxに切り取った写真。ND400 260 s

この画角(約19 °)の写真は、フルサイズセンサーで約110 mmの焦点距離を持つレンズで撮影した場合に撮れるものであり、メーカーがいうように中望遠域からOKということがわかる。また完全に均質な写真を得たいのであれば、恐らく200 mm~なら全く問題なく使えるだろう。


ムラが出ない濃度における様子

 最後に、どの濃度ならばムラが出ないのかについて調査した結果を、図14~16に示す。また、図12(@17 mm)を撮った際のフィルターの回転量を図17に示す。


図14 14 mm 2 s
図15 17 mm 3 s
図16 30 mm 6 s
図17 図15を撮影した際に設定したフィルター

図11~13を見ると、図4~6(ND2)の時と遜色ないことがわかる。また、ND値に換算するならば、17mmの時でND4相当、30mmでND8相当まで使用できることがわかる。

 この結果が、例えば範囲が狭いVND(ex.KANI ND2-64 Valiable + CPL)のようなものなら、広角レンズに装着した際に使える濃度の範囲が広がるのか気になった。だれか比較して調べてください。

補足:先行レビューとの主観的定性比較

先行レビュー[1]で、可変範囲がND2-64のモデルを焦点距離20 mmのレンズで用いた場合、ND64でもそこまでのムラは見られなかった。ND2-400のモデルで約ND64にした時、どの程度ムラが確認できるのかを確かめてみる。図γ1に、焦点距離20 mmでND64にした際の写真(16:9)を、先行レビューで撮影された同条件の動画の様子を図γ2に示す。


図γ1 ND2-400@ND64 20 mm 43 s (16:9)
図γ2[1] ND2-64@ND64 20 mm (16:9)

動画に比べると、ND2-400の方が恐らく少しだけ暗いかもしれない。とはいえ、どちらも実用に耐えうるものではないことは明らかである。但し、カメラもレンズも何もかも違うために、この比較は何となく「へぇそうなんだ」程度に思っておいてほしい。



結論

  • カラーシフトはマジで少ない

  • 厚み7 mmのフィルターでケラレないのは17mm~

  • CPL機構は外せて、CPL無(厚さ5.5 mm)なら14 mmでも使用可能

  • 17mmならND4相当を、30mmならND8相当を使用できる

  • 約110 mm~で全濃度域をある程度、200 mm~で完全に使用可能である

  • 広角に耐えうるのは可変範囲が狭いND2-64かもしれない

また、本レビューでは解像度の低下に関することは一切述べていないので、そこの部分はだれか調b(ry。



最後にー残る疑問点ー

 先ほども述べたが、例えばND2-64のモデルであれば、広角レンズにおける使用可能濃度域は広がるのだろうか。めっちゃ気になる……返品交換??どうしよう、だれk(ry。


いいなと思ったら応援しよう!