永い青春
エレキギターに恋をして、
ゴミ捨て場の青いフェルナンデスを拾ってきて
誰もが通るFコードに苦戦して
アコースティックやクラシックの専門家の父に
初めての反逆行為として
ロックミュージックを聴いた。
南京錠をぶらさげて
ヴィヴィアンウエストウッドを身につけて
JKのくせにブドワールを漂わせてた
10代のわたしは今、
DiorのJOYをつけて出勤する。
オフィスタワーで8時間、
顧客の対応をし、
帰りの地下鉄の中で歌詞を書く。
家に帰って猫の世話をしたら
顔パックやマッサージをして
明日のお弁当を詰めて
動画配信サービスでドラマや映画を見ながら
占いの仕事をする。
もう、
制服で22時過ぎに補導されないように
お台場から走って帰ったり
チャイム後ダッシュで新横浜から
地方に何百キロと移動することもなくなった。
17歳の夏にね、
文化祭のBGMに
Ivory and Ivonyという曲の
アウトロを使いたいって
言った友達がいたんだよ。
18歳の夏は、
24歳にして赤坂のステージに立つ人を見て
自分もただただ4年を無駄にしてしまわずに
24歳までに何か成し遂げたいっておもって
大学を変えたんだ。
19歳の夏、最後にその曲を聴いて以来の
27歳の春の昨日だったよ。
あの時の自分への約束どおり
結局、作詞家の道を選んで
24歳で自分が作詞提供したCDが出せたよ。
ライブレポートも音楽レビューも
過去歴が辿れないくらいたくさん書いたよ。
そして就職しながらまだわたしは
夢を見ているよ。
新しい夢がどんどん出るよ。
あの時着信音を同じ曲にしてた友達も
今着々とステージに向かって歩いているよ。
10年、
永い青春だった。
あの夏に幼いわたしを閉じ込めて
わたしはまた新しい音を探しに行くよ。
言葉をのせて口ずさんでもらえるような、
美しいものを探す旅に行くよ。
うまくいかない日もあるけど
唯一無二のギターヒーロー、
その人にできるなら
わたしもやろうって
できなかったとしても
やるだけやろうって
今日も何を作ろうって
窓を開ける。
見るだけじゃなくて
見せたいから、
眩しい次の景色を、