パフェフンフン33秒【毎週ショートショートnote】
「どうぞ、当カフェ特製、スペシャル盛り盛り増し増し映え映えパフェです」
向かいに座る彼女の顔が隠れるほど巨大なパフェが運ばれてきた。
「4分33秒以内に食べきれば無料です」
二人でも無理そうな量だが、挑む本人は静かに目を閉じている。精神を統一しているのか。
「では、スタート!」
合図と同時に瞳をかっと見開き、凄まじい勢いで甘い山に挑みかかる彼女。頂のチェリーも、白い城壁のような生クリームも、メロンやら何やらのフルーツも、瞬く間に崩していく。フンフンと鼻息荒く、飢えた獣のように喰らい貪る姿は、普段とはまるで別人だ。
「か、完食! 33秒で!?」
ふう、と息を吐く彼女。
「どう、満足できた?」
(はい、ありがとうございます……)
黒い影がスッと抜け、消えていく。
彼女は霊媒師。スイーツに未練のある霊を憑依させ、成仏に導いたのだ。
「でも、憑依は30秒が限界だったはずじゃ――」
すると彼女はにこりと笑う。
「甘いものは、別祓(べつばら)です」