カフェ4分33秒【毎週ショートショートnote】
穴場っぽいカフェを見つけた。レトロ調だけど綺麗で、落ち着いた雰囲気だ。
「ようこそ、カフェ4分33秒へ」
渋い髭のマスターらしき人が声をかけてきた。ずいぶん変わった店名だな。ジョン・ケージのあの曲との関係は――
「当店は、訪れるお客様自身が心地よい空間を生み出す、そんなカフェを目指しています。ゆったりとくつろいだり、お喋りを楽しんだり……その行為自体が、素晴らしい音楽となるような」
なるほど、元ネタにも繋がる、素敵なコンセプトだ。
「具体的には、4分33秒ごとに、場所代500円が加算されます」
えっ?
時間が経つごとに出費がかさむんじゃ、全然くつろげないじゃないか。
「お客様が滞在すればするほど、甘美な音が鳴り響くのです。チャリーン、チャリーンと、お金の貯まる音が」
いや、経営側にとっては『客が心地よい音を生み出す』形なんだろうけど!
「帰ります」
チャリーン。
「500円になります」
やられた。
説明の所要時間が、4分33秒なのかよ!